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ゴールデングローブ賞でさらに注目 代替肉使用のヴィーガン・ダイエット

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
壇上でイランとの問題に言及した、受賞者のパトリシア・アークエットさん(右)。(写真:ロイター/アフロ)

第77回「ゴールデングローブ賞」が1月5日に開催され『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が最多3冠に、『1917 命をかけた伝令』が2部門を獲得するなどした。

また今年は(写真上のような)胸元が大胆すぎるほどに開いた女性のドレスにも、例年以上に注目が集まった。記事

第77回 ゴールデングローブ賞(2020年) 受賞作品

今年のゴールデングローブ賞のもう1つの話題は、祝賀ディナーの内容だ。

ゴールデングローブ賞の史上初の試みとして導入されたのは、100%植物由来の食事、つまり肉や魚、卵、乳製品などを一切使っていないヴィーガン・ダイエット(ヴィーガン食)だった。

メニューの内容は、前菜がゴールデンビートの冷製スープ、メインが野生キングオイスターキノコで代用した「ホタテ貝柱」、デザートは卵やバターなど不使用のスイーツだった。また飲料水も「持続可能」を意識した天然のもので、個々のペットボトルの配布は一切なしという徹底ぶりだった。

メニューの一部

主催社のハリウッド外国人映画記者協会は、ヴィーガン食にこだわった理由として、「環境問題」を取り上げた。「環境問題への意識が賞を観た人々の中で高まり、気候変動など大きな問題の小さな1歩になれば」とコメント

FOXビジネスに出演したコメンテーターからは「プライベートジェットに乗っているセレブが、環境に配慮した100%植物由来の食事とは」と失笑を誘う場面もあったが、「これにより地球や環境が救われるとは思わないが、考えるきっかけとしてはよいのでは」というのが総評のようだ。

ニューヨークでも増える次世代フード

食肉の畜産が大量の温室効果ガスを排出しているのは、昨今知られるところ。昨年9月、小泉進次郎環境大臣がニューヨークでの国連気候行動サミット期間中、ステーキを食べて話題になったが、あのようなニュースを通して問題意識が芽生えることも多いだろうから、今回のようなディナーでの話題作りの意義は否定できない。

実際のところ、ニューヨークに住む筆者の周りを見渡すと、ヴィーガン食やベジタリアン食は、健康志向や環境問題への意識が高いミレニアル世代〜40代ぐらいの人々を中心に支持されている印象だ。決して「一般的」とはまだ言えないながら、「ビヨンド・ミート」「インポッシブル・フーズ」など代替肉を開発するスタートアップの成長と共に、少しずつ一般の生活にも波及していると感じる。

その証拠に、筆者はヴィーガンやベジタリアンではないが、たまたま入った店がヴィーガンレストランだった、というようなことが何度かある。

代替肉を使ったハンバーガー

パテに植物由来のフェイクミート(代替肉)を使ったハンバーガー。(c) Kasumi Abe
パテに植物由来のフェイクミート(代替肉)を使ったハンバーガー。(c) Kasumi Abe

筆者の近所に2019年オープンしたフェイクミート(代替肉)のハンバーガー店。いつも近所の若者で賑わっている。

代替肉を使ったタコス

フェイクミート(代替肉)を使ったタコス。通常のミンチと味も食感もそれほど変わらない。(c) Kasumi Abe
フェイクミート(代替肉)を使ったタコス。通常のミンチと味も食感もそれほど変わらない。(c) Kasumi Abe

たまたま入ったメキシコ料理店が、ヴィーガン専門店だったこともある(どうりでおしゃれな若者で混んでいたわけだ)。このように、フェイクミートの素材を使ったミールはある意味「身近」な存在となりつつある。

ちなみにフェイクミートの素材は、大豆や豆腐などを使ったプロテインベースだ。今の所食べたお店では、どこの味付けも噛みごたえも、フェイクミートとは思えない仕上がりでおいしかった。

参考記事:

NHK「世界に広がる代替肉」

アメリカは場所によって食のトレンドも異なるが、大都市はどこもフェイクミートばやりだ。「未来の食事」としても期待されているフェイクミート市場。今後世界中でさらに成長していくことが予想されている。そういうわけで私は、こちらを訪れる人に「ニューヨークではやりの食べ物は?」と聞かれるたびに、昨年あたりからフェイクミートの店を勧めている。

(Text and photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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