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完敗のウエスタン開幕戦・前編 最終回に陽川が今季チーム1号!《3/15 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
9回裏にホームランを放った陽川選手を笑顔で出迎える掛布監督(中央)。

きのう15日、1軍より10日早く阪神タイガースのファームが2016年の公式戦に突入しました。本拠地である鳴尾浜での開幕は5年ぶり。でも、そのせいではなく掛布雅之監督が背番号入りのユニホームを着て迎えた開幕戦ということで、朝早くから鳴尾浜は大賑わいです。11時43分に入場制限が始まり、門の外にズラッとお客様が並ばれました。それ自体はよくあることだけど、考えたら平日なんですよね。

なかなか入れなかった方もあったでしょう。お疲れ様でした。きのうは特にテレビ中継用のテーブルが普段の中継より広くスタンドを占拠していたり、スチールカメラマンの方や記者が座っているカメラ席もテレビカメラ専用となるなど異例の事態。マスコミ陣も通常の3倍、いや4倍くらい詰めかけていたような気がします。おまけに『円陣、声出し』についての取材で中継車が来ていたり…。

そんな中で行われたウエスタン・リーグの阪神-中日1回戦。2回に柴田選手のタイムリー二塁打で先制するも、3回に島本投手がホームラン連発を含む6連打で4失点と逆転されました。4回までで中日は先発全員の10安打。6回には伊藤和投手も3点を追加されています。最後に陽川選手がチーム1号となるソロホームランでスタンドを沸かせてくれた、という内容。ホームランが見られてよかった、ですよね。

というわけで、きょうは試合の結果と経過、そして掛布監督、陽川選手、江越選手のコメントをご紹介します。先制タイムリーの柴田選手や島本投手、開幕戦で投げた青柳投手、2回無失点のトラヴィス投手、そして試合後に初めてフリー打撃に登板した望月投手の話は、こちらの<後編>でご覧ください。

<開幕戦・後編 反省と後悔の島本に、掛布監督は…>

そうそう、陽川選手はきょう16日もホームランを打っていますよ!来ましたねえ~春が。

《ウエスタン公式戦》3月15日

阪神-中日 1回戦 (鳴尾浜)

中日 004 203 000 = 9

阪神 010 000 001 = 2 

◆バッテリー

【阪神】●島本(1敗)-青柳-伊藤和-トラヴィス / 清水-原口(7回~)

【中日】伊藤(2回2/3)-○武藤(2回1/3)-小川(1回)-岸本(1回)-三ツ間(1回)-金子(1回) / 松井雅

◆本塁打 ナニータ1号3ラン、福田1号ソロ(島本)、陽川1号ソロ(金子)

◆二塁打 柴田、松井佑、堂上、江越

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策) 打率

1]中:江越   (5-2-0 / 1-0 / 1 / 0) .400

2]遊二:森越  (5-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .200

3]一:荒木   (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .000

〃一:西田   (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .000

4]三:陽川   (5-1-1 / 1-0 / 0 / 0) .200

5]指:ペレス  (4-1-0 / 1-1 / 0 / 0) .250

6]左:柴田   (2-2-1 / 0-0 / 0 / 0)1.000

〃打左:一二三 (2-0-0 / 1-1 / 0 / 0) .000

7]二:坂    (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .000

〃打遊:植田  (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .000

8]捕:清水   (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .000

〃打捕:原口  (1-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .000

9]右:中谷   (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .250

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

島本  4回 83球(10-5-1/ 6-5 /11.25) 140

青柳  1回 20球 (0-1-1 / 0-0 / 0.00) 141

伊藤和 2回 40球 (3-1-2 / 3-3 /13.50) 143

トラ  2回 39球 (1-3-2 / 0-0 / 0.00) 139

試合経過

先発の島本投手。思うところはあったのだろうと推測できます。悔しいでしょう。
先発の島本投手。思うところはあったのだろうと推測できます。悔しいでしょう。
2人目はルーキー・青柳投手。1四球はあったものの3人で終わらせました。
2人目はルーキー・青柳投手。1四球はあったものの3人で終わらせました。
6回からは伊藤和投手が登板。3点失ったあと、7回は三者凡退です。
6回からは伊藤和投手が登板。3点失ったあと、7回は三者凡退です。
最後はトラヴィス投手が2イニングを無失点。角度のある球が見られました。
最後はトラヴィス投手が2イニングを無失点。角度のある球が見られました。

まず打線は2回、1死からペレスが右前打を放ち、続く柴田の右翼線二塁打で生還!柴田は三塁でタッチアウトとなりますが、タイムリー二塁打で1点を先制しました。しかし1回、2回と1安打ずつ許しながら抑えていた先発の島本が、その直後の3回に打ち込まれます。1死から堂上に中前打、松井佑の右翼線二塁打で一、三塁として、1打席目はフォークで空振り三振を奪った4番・ナニータに真っすぐを打たれ、センターバックスクリーンへの逆転3ラン。

それだけではありません。5番・福田には118キロのスラーブを左中間へ…。これはもう打った瞬間に、外野をはじめグラウンドの選手は微動だにせず(唯一、審判が動いていただけ)という連続ホームラン。完ぺきな当たりでレフトの防球ネットに刺さりました。古本と三ツ俣にも連打されますが、ここは自身が牽制しての狭殺などで切り抜けた島本。それでも2者連発を含む6連打で4失点です。

さらに4回、先頭の9番・友永に中前打。これで早くも中日は先発全員安打となっています。次の溝脇のバントした打球を島本が一塁へ悪送球。走者がそれぞれ進んで無死二、三塁となり、堂上からは真っすぐで見逃し三振を奪ったのですが、松井佑に外の変化球をライトに運ばれて2点タイムリー。先ほどホームランのナニータは抑えたものの2点を追加されて4回10安打6失点(自責5)で交代しました。

ついで青柳が登板して、まず6番の古本を投ゴロに打ち取り、一塁送球も無難に。三ツ俣には四球を与えますが、松井雅は空振り三振、ここで清水が三ツ俣の盗塁を阻止!ルーキーの、右へ左へと大きく逸れる投球をしっかり捕り、しかも3人で片づけた清水の仕事ぶりも光ります。

3人目は伊藤和。6回1死から溝脇に右前打され、暴投で二塁へ進めて堂上に左翼線タイムリー二塁打。松井佑にはストレートの四球を与え、1死一、二塁でナニータが右越えタイムリー。なおも1死一、三塁で福田に中犠飛を許しました。ペレスも二塁へ行き古本の四球で一、二塁としながら何とか3点で踏ん張って、7回は三者凡退だった伊藤和。

続いてトラヴィスが、8回は2死からナニータに四球、福田は真っすぐで空振り三振!9回も先頭・古本に四球を与えましたが三ツ俣を二ゴロ併殺打。2死後に松井雅の右前打があったものの最後は友永を真っすぐで見逃し三振!2イニングを0点に抑え、ベンチやスタンドからの拍手で迎えられました。

新しいユニホームのお披露目も兼ねて、6回の代打陣を。1死から一二三選手が四球。
新しいユニホームのお披露目も兼ねて、6回の代打陣を。1死から一二三選手が四球。
続く代打・植田選手は右打席。このあと四球を選びます。
続く代打・植田選手は右打席。このあと四球を選びます。
同じくしんユニホームの原口選手も代打で、残念ながら二飛で2死一、二塁。
同じくしんユニホームの原口選手も代打で、残念ながら二飛で2死一、二塁。
代打でも新ユニホームでもないんですけど、中谷選手は三ゴロで得点はならず。
代打でも新ユニホームでもないんですけど、中谷選手は三ゴロで得点はならず。

一方、2回に先制した打線はというと…3回に清水の四球と森越のピッチャー強襲内野安打で2死一、三塁としますが得点なし。なおこの時、左すねの下に打球を受けた伊藤。素早くバックアップに走るなどしていたけれど、やはりベンチに下がりました。(試合後、2本の松葉杖を操って歩きながらも「大丈夫です!」と笑顔の伊藤投手。打撲で済んで本当によかったですね)

4回はペレスの四球と柴田の右前打で1死一、二塁としただけ。5回は先頭の中谷がいい角度の打球を放ったけど、届かずに中飛。次の江越がショート内野安打で出て2死後に盗塁も決め、荒木の死球で一、二塁とするもそこまで。なお、いったん守備についた荒木ですが、6回途中で西田と交代しています。当たったのは左すね付近で、試合後は普通に歩き「大丈夫です」と言っていました。こちらもホッ。

6回は1死から代打攻勢で、一二三と植田が連続で四球を選びましたが、原口は二飛、中谷は三ゴロ。7回は先頭・江越の左翼線二塁打と2死後に陽川がショートの捕球エラーで2死一、三塁。しかしペレスは三振。8回は2死から原口が死球(ドスンと音がして左太もも?本人は意に介さず)、中谷は左前打、江越はショートの捕球エラーで満塁として森越は二飛。といった具合に、毎回続いたチャンスを生かせません。

そして迎えた9回、1死から陽川が金子の初球(135キロ)をレフトへ!これも外野手がほとんど動かない、完璧なホームンです。あとは続かなかったものの、何とか1点を返して試合終了。開幕戦から、3時間18分という結構長い試合となりました。

掛布監督、手応えを感じた開幕

試合開始に先立ちメンバー表の交換をする掛布監督(左)と中日の小笠原監督(右)。
試合開始に先立ちメンバー表の交換をする掛布監督(左)と中日の小笠原監督(右)。

掛布監督は試合後も、各テレビ局のインタビューなど超多忙。もう何度目かの質問だったと思いますが、自身の“初陣”となった開幕戦を振り返って「これだけファンの方やマスコミが来てくれ、鳴尾浜にない雰囲気でやれて選手もプラスになったでしょう。負けたのは悔しい。悔しいんだけど、気持ち的には非常にスッキリしていますね。みんな前を見て野球をやってくれたので、僕自身はいい手応えを感じました」と笑顔です。その理由は…

江越の最初(1回裏)のショートゴロ。ファーストまでの、あの全力疾走!今やろうとしている野球をしてくれた。悔しい気持ちを持ってファームでやっている、その江越がああいう姿を見せてくれたってのは、きょうの収穫。江越、中谷、清水の走る姿ですよ。1人1人が走るっていう強い意志を持っていた。1年間続けなければならないことですが、この意識を続ければ必ずいい流れが出てくる。打つ、打たないはピッチャーの出来もあるが、走ることは意識すればやれるから」

次に、開幕戦の先発に指名した島本投手について。「島本も、打たれはしたけど本人が納得しているだろう。4回6失点、途中で代えることは簡単だけど、久保コーチとも話して納得するまで投げさせようと。本人もいい経験をしたと思いますよ」。島本投手に“気にするな”という話をしたそうで、これは審判のストライクゾーンと合っていなかったからだとか。なるほど。本人は何も言いませんでしたが、そういうことがあったんですね。

3回には3ラン、ソロの連発で4失点。「空中戦に持っていかれたんで、手の打ちようがなかった。完敗ですよ。でも島本は何かを感じたはず。1軍に上がる時、役に立ちますよ。次の登板が楽しみですね。肩の張りなどのことはあるけど、早い段階で次の登板を見たい。楽しみにしています」。そんなふうに言ってもらって、奮起しない選手はいないでしょう。これが掛布マジックなのかも。

最後に「勝って終われればよかったんですけど、2月のキャンプからやってきたのは“自分の野球に責任を持つこと”と“野球の怖さを知ること”。この1敗は僕も重く受け止めますし、選手も1人1人が自分の野球に対する責任を感じていると思う」と掛布監督。そして「残塁13個ですか?1本出ていれば変わってますね」と言い、9回にホームランを打った陽川選手のことを聞かれ「その前に打て!って~。でもよかったよ」と楽しげに笑いました。

第1号までの打席を悔やむ陽川

ホームランを放った陽川選手。三塁を回ったところで藤本コーチが迎えます。
ホームランを放った陽川選手。三塁を回ったところで藤本コーチが迎えます。

では、その陽川選手のコメント。「打ったのは真っすぐです。うまくさばけたと思います」と言いながらも笑顔はありません。チームが負けたことや、その前の打席が悔やまれるのでしょうか。「それはもちろんそうですね。打ち損じもあったので。最初(2回、先頭で捕邪飛)はボール球に手を出してしまって…。1打席1打席切り替えてやりました」。それで4打席目にホームランですね。

「最後にああいう形で1本出たので、あしたにいい形でつなげられたらと思います」。1軍の開幕まで「どんな形であれチャンスは来ると思うので、しっかり自分の持ち味を出して、結果も出して、呼ばれるように頑張りたい」と陽川選手。ちなみに“チーム1号”は「気にしていません。チームが勝つことが一番なので」とサラリ。でも期待通りの一発でした。ありがとうございます

ベンチでのタッチ。右の方に見える島本投手と清水選手のバッテリーは笑顔があまり…
ベンチでのタッチ。右の方に見える島本投手と清水選手のバッテリーは笑顔があまり…

なお冒頭でも書いたように、きょう16日の中日戦で第2号を打ったそうです!2試合連続とは。これには1軍にいる横田選手も発奮しちゃうだろうなあ。なんせ、きょうのオープン戦(対ロッテ)でも4打数3安打1打点だったみたいなので、あすのヤクルト戦(神宮)あたり放り込むんじゃないですかねえ。ちょっと期待してみましょう。

江越「あしたにつながる」

そして掛布監督が真っ先に名前を挙げた江越選手は、5回に内野安打とチーム1号の盗塁、7回は左翼線二塁打でマルチヒット。「結果が出ないよりはいいですね。またあしたにつながるかなと思います」。監督が1回の全力疾走を評価していたことを聞き「そこは(バッティングの)調子が悪くてもできるところ。1軍でも言われていることなので、たとえ調子の悪い時でも常にやりたい」と話しています。

バッティングに関しては「下半身でタイミング取ることを意識している。試合の中でピッチャーとのタイミングだったり。とらえたと思っても凡打になることが多いので」とのことです。3打席目まで、見逃してストライクになる球もありましたが、二塁打は初球を打ったもの。それは最初から振っていこうとしていたのか?という問いに「そういうわけでもないんですけど、狙い球だったので」と答えた江越選手。

京セラドームで行われる最後のオープン戦に向け、そしていずれは1軍に再合流するため、このウエスタン開幕3連戦が大事なのでは?「そんなに変な意識はないけど、アピールはしないといけない。いい緊張感を持ってやっています」。それが1打席目からの全力疾走となり、そのあとのヒットへつながったんでしょう。1軍はもちろん、鳴尾浜にもライバルはいっぱいいます。そこを制するには、走ること、打つこと、自分に勝つことですね。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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