探査機が太陽に突入!現地で見た「大爆発現象」の実写動画が公開される
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「太陽の大爆発現象に突入した史上初の実写映像」というテーマで動画をお送りしていきます。
技術の進歩により、人類は探査機を太陽の間近まで送り、その過酷な環境下で直接探査ができるようになりました。
NASAの「パーカー・ソーラー・プローブ」は現在、史上初めて太陽大気に突入するほど太陽に接近し、未知の環境で探査を行っています。
そしてパーカーは太陽の大爆発であるコロナ質量放出(Coronal Mass Ejection、CME)を史上初めて通過し、その大迫力の実写動画まで残してくれました。
今回はパーカーの実績と、最新のCME通過実写動画をまとめて解説していきます。
●パーカー・ソーラー・プローブの実績
2018年8月12日、NASAは太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ(以下パーカー)」を打ち上げました。
パーカーの宇宙旅行は7年間の予定で、近日点において26回にわたり、太陽に接近する予定です。
2021年4月、パーカーは人類史上初めて太陽コロナに到達しました。
これは8回目の近日点到達時のことです。
このとき、太陽磁場の変動を観測したり粒子の採取をしたり、探査活動を行っています。
パーカーは合計26回にも及ぶ近日点通過の中で、金星のスイングバイを利用しながら太陽との距離を縮めていき、太陽から太陽半径約9個分(約600万km)という超至近距離まで接近する予定です。
最接近時では、太陽に最も近い惑星、水星の軌道よりも遥かに内側を通ります。
この灼熱地獄に耐えられるよう、パーカーは約1400度に耐えられる耐熱シールドによって正面が保護されています。
また、太陽からの距離によって光の強さも大きく変動するため、太陽電池アレイの工夫も施されています。
太陽最接近時においては、地球周回時の約475倍強い太陽からのエネルギーに耐える必要があります。
太陽には、はっきりとした表面は存在しません。
太陽は周囲を超高温の大気によって覆われており、強大な重力と磁場によって大気を太陽表面に引きつけています。
しかし、太陽からある程度離れた位置になると、太陽の重力や磁力の影響が弱まり、太陽大気が太陽風として宇宙空間へと飛び出すようになるのです。
太陽大気と太陽風の境目を、アルヴェン境界面と言います。
これまで、アルヴェン境界面の位置はコロナを観測した画像によって推測されていました。
その推測によれば、境界面は太陽表面から10~20太陽半径の位置にあるとされています。
しかし、正確な位置については分かっていませんでした。
そんな中、太陽探査機パーカーは2021年4月28日、8回目の近日点に到達した際に、太陽表面から18.8太陽半径の位置において、磁気と粒子が特定の条件を満たしている様子を検出しました。
これは、パーカーがアルヴェン境界面を通過したことを示していると言います。
パーカーは人類史上初めて太陽大気を通過することに成功しました。
またパーカーはコロナを通過する際、搭載されたカメラで宇宙空間を撮影することに成功しています。
今再生されているのは、パーカーが撮影した実写画像を組み合わせて作成された、太陽コロナ内の実写動画です。
左から右に流れている線は、コロナ内に存在する「流線(ストリーマー)」と呼ばれる構造です。
正真正銘、人類が初めて太陽大気内から直接撮影した史上初の実写動画です。
●CME通過時の実写映像が公開
2022年9月、太陽表面からわずか約920万km地点を航行していたパーカーは、太陽表面の大爆発現象であるCMEをすぐそばで検出し、その後なんとCMEに突入して、最終的に反対側から脱出しました。
この映像はCME発生から通過までの一部始終を捉えた実写動画で、磁場のデータが音声に変換されています。
恒星という存在のとてつもないエネルギーが伺えます。
コロナ質量放出(Coronal mass ejection、CME)は、太陽の大気にあたるコロナを構成する、高温のため電気を帯びたプラズマガスが短時間で大量に宇宙へと放出される現象です。
これは太陽表面で溜まった磁気のエネルギーが、熱や運動エネルギーに変換されたものと解釈されます。
数十億トンものプラズマが最大で秒速3000kmという速度で放出されることもある、非常に高エネルギーな現象です。
太陽表面において、磁気のエネルギーが高い場所は、「黒点」として現れます。
この黒点がたくさん現れる時期では、太陽フレアやCMEのリスクが高く、要警戒です。
プラズマの粒子が地球の磁気圏に沿って地球の極域に流入し、地球の大気を構成する物質と衝突すると、光を放ちます。
これがオーロラの正体です。
これだけならただ綺麗なだけですが、磁気圏が乱れると地表の送電線に大量の電流が流れ、発電機構が破壊され、大規模な停電が起きる原因にもなります。
CMEは電気に頼った現代の私たちには大打撃は免れない、危険な現象です。
太陽表面からわずか約920万km地点を航行していたパーカーは、そんな危険な大爆発現象であるCMEをすぐそばで検出し、その後CMEに突入して、最終的に反対側から脱出しました。
パーカーはCMEの粒子が秒速1350kmにまで加速する瞬間を目撃していましたが、仮にこれが地球に到達すれば観測史上最強クラスになっていたほど、非常に強烈なCMEがパーカーを襲っていたことになります。
しかしパーカーは全くの無傷のまま、約2日間CMEの調査を続け、これまでに類を見ない詳細なデータを私たちに提供してくれました。
パーカーは元々、CMEを通過する前提で、そのエネルギーに耐えられるほど頑丈に作られていました。
今回強烈なCMEに襲われたことで、パーカーのとてつもない耐久力が示されたことになります。
今回紹介したパーカーは、今後さらに太陽に接近していき、新たな発見がもたらされることが期待されています。
私たちを生かしてくれている太陽が本当はどんな天体なのか、解明されるのが楽しみです。