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立秋通過 東北北部は10年に1回は梅雨明けを特定しない

饒村曜気象予報士
立秋 涼風至(すずかぜいたる)(提供:アフロ)

梅雨明け

 令和2年(2020年)の梅雨明けは、沖縄地方では6月12日と、平年より11日も早い梅雨明けでした。

 当初は、各地で平年より早い梅雨明けとみられていました。

 しかし、梅雨前線の活動が活発で、「令和2年7月豪雨(7月3日~31日)」が発生し、各地の梅雨明けが遅れていました。

 それも、記録的に遅れていました(表1)。

表1 各地の梅雨入りと梅雨明け(令和2年(2020年))
表1 各地の梅雨入りと梅雨明け(令和2年(2020年))

 鹿児島県奄美地方が梅雨明けしたのは、平年より21日も遅い7月20日でした。

 その後、7月28日に九州南部が梅雨明けしたのに続いて、8月2日に北陸と東北南部が梅雨明けするまで、続々と梅雨明けとなっていますが、いずれも平年より大幅に遅い梅雨明けでした。

 そして、立秋の8月7日、仙台管区気象台は、東北北部について、速報としては梅雨明けを発表しないと発表しました。

令和2年8月7日 仙台管区気象台

梅雨の時期に関するお知らせ

東北北部は、6月14日ごろに梅雨入りして以降、梅雨前線や低気圧の影響で曇りや雨の日が続き、8月上旬も気圧の谷の影響で曇りや雨の日が多く、これまでのところ、明確に梅雨明けと判断できる時期はありませんでした。梅雨明けの発表は、夏の期間である「立秋」までを目安としており、東北北部については、今年の梅雨明けの速報的な発表を行わないこととしました。梅雨の時期については、後日、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討を行い、9月はじめに、確定値を公表する予定です。

 東北北部の10日間天気予報をみると、傘マーク(雨)や、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日が続き、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)やお日さまマーク(晴れ)の日はほとんどないからです(図1)。

図1 ウェザーマップが発表した東北北部等の10日間天気予報(数値は最高気温)
図1 ウェザーマップが発表した東北北部等の10日間天気予報(数値は最高気温)

 週末に雨が降っても、来週になると、白雲マークやお日さまマークの日が続く、梅雨明けした東北南部とは大違いです。

 なお、令和2年(2020年)の東北北部のように、梅雨明けを特定しない年であっても、どこかで梅雨が明け、翌年には再び初夏に梅雨入りがあります。

東北北部の梅雨明けの記録

 梅雨は季節現象であり、梅雨の入り明けは5日程度の「移り変わりの期間」があることなどから、立秋を過ぎても梅雨明けを発表することが稀にあります。

 東北北部の梅雨明けの平年値は7月28日で、最も早い梅雨明けは、統計を取りはじめた昭和26年(1951年)以降では、平成23年(2011年)と昭和30年(1955年)の7月9日です(図2)。

図2 東北北部の梅雨明け
図2 東北北部の梅雨明け

 逆に、最も遅い梅雨明けは平成3年(1991年)の8月14日、次いで、平成19年(2007年)の8月11日です(表2)。

表2 東北北部の立秋以後の梅雨明け
表2 東北北部の立秋以後の梅雨明け

 立秋以後に梅雨明けしたのは、過去に6回ありますが、ほとんどは立秋直後です。

 ただ、平成3年(1991年)は、立秋の6日後です。

 この年は、8月に入ってからオホーツク海高気圧が日本の北に張り出し、気温が全国的に平年を下回っています。

 このため、8月に入ってから梅雨のような天気となり、その後、夏らしい天気となったことから、立秋後ですが、8月14日に北陸地方と東北北部の梅雨明けとしたのです(東北南部は7月27日)。

 ただ、これは、後日発表された確定値の話です。

 速報で発表された梅雨明けは、東北南部が7月31日、東北北部8月2日、北陸地方が8月9日です。

 それだけ季節の進み方が異常で、予報官泣かせの年でした。

北陸地方 梅雨明け 去年より20日遅い

大幅に遅れていた北陸地方の梅雨明けがきょう発表されましたが、これは平年に比べて18日、また去年より20日も遅く、観測史上最も遅い記録になりました。

これで梅雨のない北海道を除いてすべての地方の梅雨が明けたことになります。…

ことしは沖縄地方が平年より3日早く5月8日に梅雨入りしたのをはじめ、全国的に早めに梅雨に入りましたが、梅雨明けの方は各地とも遅れ気味でした。特に北陸と東北地方の梅雨がなかなか明けず、東北南部の梅雨明けは平年より11日遅い先月31日、また東北北部も今月2日になってようやく梅雨が明けましたが、北陸地方はさらに遅れていました…。

出典:NHKニュース(平成3年(1991年)8月9日)

 また、梅雨明けを特定しなかった年は、令和2年(2020年)も含めて7回(約10年に1回)と、他の地方に比べてかなり多くなっています(表3)。

表3 各地の梅雨明けが特定しなかった年
表3 各地の梅雨明けが特定しなかった年

 東北北部では、近年、梅雨明けが遅い年や、梅雨明けを特定しなかった年が増えています

  

タイトル画像の出典:アフロ。

図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2、表2、表3の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

表1の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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