国際司法裁判所がダメならば、国連拷問防止委員会に付託せよ! 元慰安婦が文大統領を突き上げる!
元慰安婦・元徴用工問題を巡る日韓の溝は深まったままで、解決の兆しが見えない。こうした膠着した状況に苛立ったのか、慰安婦被害者のシンボル的存在である李容洙(イ・ヨンス)さんが10月26日、オンラインによる記者会見を開き、慰安婦問題が進展しない現状を憂い、文在寅大統領に対して解決を急ぐよう促していた。
数少ない生存者でもある元慰安婦の李さんは御年93歳。会見冒頭で「今年だけで(仲間が)3人も亡くなってしまった。私は今年2月に記者会見を開き、慰安婦問題の解決と日本の歴史歪曲を糾すため国際司法裁判所(ICJ)に慰安婦問題を回付してもらいたいと文在寅大統領に要請したが、もう11月になるのに今もって大統領からも、外交部からも、女性家族部からも、また人権委員会や国会等からも何の連絡もない」と、韓国政府の冷たい対応に不満を表していた。
李さんは3月2日に女性家族部の鄭英愛(チョン・ヨンエ)長官と、3日には外交部を訪れ、鄭義溶(チョン・ウィヨン)長官(外相)と面談し、慰安婦問題をICJに付託するよう申し入れていた。鄭外相に対してはICJ付託を受け入れるよう政府が菅義偉首相(当時)を説得して欲しいと要請もしていた。
(参考資料:韓国国内で台頭する元慰安婦・元徴用工問題の「国際司法裁判所提訴」への動き)
李さんの陳情に鄭外相は「おばあさんらの思いがしっかり伝わるよう積極的な役割を果たすのが我々の仕事である」と前向きな発言をしたもののICJ付託については言質を与えていなかった。
鄭長官との面談後、李さんは「大統領にも要望を伝えたい」と文大統領との面会を懇願したが、大統領府(青瓦台)は取り合わなかった。面談に応じれば、被害者中心の解決を言っている手前、李さんのICJ付託要望を聞き入れなければならないからだ。
ICJの付託については与党「共に民主党」にも、また野党「国民の力」にも日本が対話に応じない状況下にあってはICJ付託も選択肢として検討すべきと支持する声があるが、韓国政府はこれまでICJ提訴には一貫して消極的である。
(参考資料:元慰安婦の「ICJ提訴」爆弾発言で吹っ飛んだ文在寅政権の「解決策」
韓国政府が乗り気でないのは何よりも勝算がないと判断していること、日本が韓国の提訴を逆手にとって竹島問題をICJに付託し、領土紛争化を起こす危惧があること、それと国連人権委員会や米議会で慰安婦が「性奴隷」であることが認定させているのにICJが証拠不十分で「性奴隷でない」との裁定を下す恐れがあることなどが理由として挙げられている。
記者会見で李さんは返す刀で日本に対しても「文大統領は就任早々から被害者中心の解決を強調していたのに今年初めに日本との関係改善のため2015年の拙速合意(「日韓慰安婦合意」)を国家間の合意として認めてしまった。それにもかかわらず日本はかえって韓国が解決策を持って来いと大声を上げている。1993年に発表された河野談話も無視し、海外ではハーバード大の学者(ジョン・マーク・ラムザイヤー教授)らを動員し、厳たる歴史を歪曲し、我々の名誉を棄損している」と批判の矛先を向けていた。
そのうえで李さんは「これ以上、待てない。ICJへの提訴が無理ならば、韓国政府が単独でもできる国連拷問防止委員会(CAT)に慰安婦問題を回付してもらいたい」と提案していた。日本政府の同意を必要とするICJとは異なり、CATは韓国単独の付託が可能である。
CATに付託する理由について李さんは「日本は国際社会に暴言を吐き、私らの名誉と歴史的真実を棄損している。盗人猛猛しく、本末転倒も甚だしい。拷問防止協約に反している。韓国の被害者だけでなく、全世界の被害者のため韓国政府がCATに慰安婦問題を持っていき、日本が慰安所を設置し、運営したのは戦争犯罪で、反人倫犯罪であったとの判断を勝ち取ってもらいたい」と韓国政府を突き上げていた。
李さんは最後に文大統領に対しても「過去4年間、コロナなどの対応については多くのことをやったとは思うが、慰安婦問題だけは何の進展もなかった。むしろ大きく後退してしまった。被害者が生きている間に何としてでも解決してもらいたい。先頭に立ってやってもらいたい」と訴えていた。
記者会見の場では文大統領に送る書簡の内容も公開されていたが、書簡には「お金で全ては解決できません。我々の名誉回復が優先されるべきです。(日本は)『金で解決済だ』と言っていますが、罪を認めないまま払う欺瞞的な金は私らには劇薬です。そんな金でもって韓国で歴史観をつくって何の意味があるんですか?国際社会で明白な立場が示されてこそ、日本の教育も変わり、後世にも正確な歴史を教えることができます。大統領、アジア全体の被害者のため英断を下すよう求めます。今からでも遅くありません。私の願いを叶えてください」と書かれてあった。