チャンピオン vs. キング
左膝の負傷により、現地時間の1月27日から5試合を欠場した"KING"レブロン・ジェームズがコートに戻ったのは2月5日(土曜日)。この日のレイカーズは、敵地でニューヨーク・ニックスを122-115で下した。KINGは29得点13リバウンド10アシストと、トリプルWの活躍を見せた。
その3日後の2月8日は、ホームで昨シーズンの覇者、ミルウォーキー・バックスと対峙。強豪相手に闘志をかき立てられたのか、KINGはTipOffのおよそ80分前から黙々とシュート練習を行った。
シュートを外す度に「あ˝ー」と大声を出しては次のプレーに向かう。彼の動きを見る限り、コンディションは良さそうだった。
平日の火曜日ではあったが、ディフェンディング・チャンピオンと一昨年の王者が相見えるとあって、クリプトドットコム・アリーナのチケットは完売。1万8997名の観客で埋まった。
TipOffから4分間は12-12とレイカーズも喰らいついたが、バックスのエース、ヤニス・アデトクンボがリズムよく得点を重ね、5分足らずの間に2桁得点をマーク。1Q終了時には38-24でバックスがリードしていた。
レブロンがファイティングスピリッツを前面に出して、遮二無二戦うのに対し、アデトクンボはどこか余裕を感じさせながら、飄々とプレーする。それもその筈、チームメイトの力量に大きな差があるのだ。
特にポイントガードの働きぶりが、対照的だった。バックスのドリュー・ホリデーは15得点10アシスト7リバウンドで、2試合連続のダブルW。12本のシュートを放ち、7本を成功させた。
レイカーズのラッセル・ウェストブルックも10得点10リバウンドのダブルWを記録したが、シュート成功は11分の3、またアシストは5で相変わらず精彩を欠いたままだ。
切れのいいカットインを見せるものの、如何せんシュートが入らない。味方を生かすプレーの少なさは、アシスト数が物語っている。自分が、自分が、というセルフィッシュなプレーも多い。
ホリデーとウェストブルックは、共にロスアンジェルスで育ち、UCLAで活躍した後にアーリーエントリーでNBA入りしている。UCLAを常勝軍団に導いた名将、故ジョン・ウッデンは、成功の秘訣となる15のパーツを組み合わせたピラミッドを作成し、チームに浸透させた。
ピラミッドの土台となる5つの要素のうち、2つは「忠誠心」と「協力」である。「忠誠心」についてウッデンは、<自分自身、そして形成する集団のひとりひとりから信頼を得るべし。これこそが、チーム作りの出発点である>と説いた。
「協力」に関しては<全ての同僚の声に耳を傾け、独りよがりにならずに最善の策を見出す。他者の利益の為に自分を犠牲にするようなことはするな。粗野な付き合い方よりも紳士的な交流の方が、プラスの人間関係を作るものだ>と語った(※拙著『ほめて伸ばすコーチング』講談社より抜粋)。
彼らがUCLAのユニフォームを纏っていた折にウッデンから直接教えを受けたわけではないが、その哲学を体得してこそ羽ばたけるというのが、同校でバスケットボールに携わる人間の共通認識だ。
今日、ウェストブルックよりも、2歳年下のホリデーの方が、ウッデンのコーチングを、より深く理解しているように映る。
この日、KINGはレイカーズでトップとなる27得点8アシストを見せたが、116-131と惨敗した。
アデトクンボは、44得点8アシスト14リバウンド(レブロンは5リバウンド)と、圧巻のパフォーマンスで自身の成長ぶりをアピール。
レブロンの調子はけっして悪くない。だが、バスケットボールはチームが闘う集団にならなければ結果は出ない。哀しいかな現状では、今季のレイカーズがプレイオフを勝ち上がる可能性は無に等しい。
トレード期限まで48時間を切った。NBAを17度制した名門は、どう再建を図るのか。