デジタル化する北欧社会 高齢者はゲームを楽しむ
ノーベル平和賞の授与式も開催される、北欧ノルウェーのオスロ市庁舎の豪華なホールで、いつもとは違う光景が繰り広げられていた。
広間に集まっているのは、おじいちゃんとおばあちゃんばかり。
中央のスクリーンに映し出されているゲーム観戦に夢中になっていた。
9月末、ノルウェーでは初となる「高齢者のためのゲーム大会」が開催されていた。
主催者はオスロ市。つまり開催資金は税金ということだ。
スウェーデンので活躍する高齢者のチーム「シルバー・スナイパー」(Silver Snipers)も応援に駆け付け、自分たちよりも50歳若いノルウェーの若者グループと試合をしていた。
オスロ市のロバート・ステーン保健・ケアサービス局局長(労働党)に開催理由を聞いた。
「高齢の世代にゲームのコミュニティ参加を促したいからです。楽しんだり、誰かと一緒に時間を過ごしたり、友人を作ったり、社交関係を築いてもらうことで、心も身体も健康的になる効果がゲームにはあります」
デジタル社会へと進むノルウェーで、社会の変化の道を高齢者も共に歩んでもらいたいという狙いもあると局長は語る。
「一部の若者がゲームのし過ぎで運動不足になったり、身体を壊すという問題もあります。反対に、ゲームのコミュニティに参加することで、社交活動は活発になる。そのようなポジティブな効果にも注目して加速させたいと思っています」
スウェーデン出身のインゲル・グロッテブラ(70)さんは、ゲームの世界では「TriggerFinger」という名前を持つ。
「とっても楽しかったわ。ゲームは常に考えて、頭を動かし、手足を動かすから、健康にいいですよ」と楽しそうに答えた。
ハリスさん(25)はゲーム実況動画の公開がフルタイムの仕事だ。
「高齢の世代がゲームをすることは知っていましたが、実際にゲームを楽しむ人たちがこんなにいることに驚きました。ゲームは常にだれかと一緒にするものなので、孤独になることもなく、親子関係にも良い影響を与えます。オスロ市がゲーム大会の開催に税金を使うことは、とてもクールですね」
60代の参加者の2人は、普段はゲームを全くしないが、「楽しかった。もしかしたらこれからもゲームをするかもしれない」と話した。
ヨンニーさん(64)「社交的で楽しそうだから参加したかったんだ。今まで出会うことがなかった人と友達になれるし、ゲームは健康的な活動だと感じたね」
エイリックさん(64)「新しいことに挑戦してみたくなったんだ」
オスロ市は今回が初の開催ということもあり、市民が参加しやすいように、敷居をできるだけ低くしようと、大会への参加手続きなどはとらず、自由に現場に来て、無料で参加可能という形をとった。
デジタル化が急速に進む北欧諸国。高齢者が電子化に追いついていけるかという懸念に対して、楽しい解決法をひとつ見つけたようだ。