北朝鮮の今年8回目のICBM発射は失敗したのか、成功したのか? 一体何の実験だったのか?
今日(18日)午前10時14分頃に平安市順安から発射された北朝鮮のミサイルについて防衛省は「11時23分頃に北海道渡島大島の西の約200kmの日本海我が国の排他的経済水域内に落下した」と発表していた。事実ならば、ミサイルは約70分近く飛行したことになる。
また、松野官房長官は防衛省の発表に基づき「飛翔距離は約1000km、最高高度は約6000km程度」と推定していたが、韓国の合同参謀本部も「飛行距離は約1000km、高度は約6100km」と日本とほぼ同じ分析をしていた。速度はマッハ22あったようだ。また、ミサイルの種類について日本は「ICBM級弾道ミサイル」と推定していたが、韓国は完全に「ICBMである」と断じていた。
韓国は約2週間前の11月3日に同じ場所から発射されたミサイルもICBM「火星17」とみなしていたが、この時は飛翔距離約760km、最高高度約1920kmにとどまっていた。速度はマッハ15しか出なかったため「途中で失速し、弾頭部が日本海に落下した」と発表していた。従って、韓国では北朝鮮の今日のICBM発射は「前回の失敗を挽回するための再チャレンジ」との見方が広まっている。
失敗したとされる前回のICBMと比較すると、飛距離では240km伸び、高度では4080kmも高く飛んでいる。ロフテッド(高角度)方式で打ち上げられたのは明らかである。
北朝鮮は今年に入ってすでに34回、60数発のミサイルを発射しているが、「火星17」に限っては2月27日、3月5日、3月16日、3月24日、5月4日、5月25日、11月3日、そして11月18日と計8回に上る。過去7回を時系列でみると、以下のとおりである。
▲2月27日の1回目
午前7時51分頃に平壌市順安から日本海に向け発射され、飛行距離は約300km、最高高度は約620kmだった。ロフテッド方式でなく通常の角度(30~45度)で打ち上げられていれば、飛行距離は約2000kmになると推定されていた。この時は日本のEEZ外に落下していた。しかし、北朝鮮はICBMではなく「国家宇宙開発局と国防科学院が偵察衛星開発重要試験を行った」と発表していた。
▲3月5日の2回目
午前8時47分頃に順安から発射され、飛行距離は約270km、最高高度は約560km。北朝鮮はこの時も2月27日の時と同様に「国家宇宙開発局と国防科学院が偵察衛星開発重要試験を行った」と発表していた。
▲3月16日の3回目
午前9時半に順安から発射されたが、高度約20kmの上空で爆破した。韓国合同参謀本部は10時8分に正式に「失敗」と発表していた。
▲3月24日の4回目
午後14時33分頃に順安から発射され、防衛省の発表では飛行時間は約71分、最高高度約6200km、約1100km飛行し、北海道渡島半島の西方沖約150kmのEEZ内の日本海に落下した。北朝鮮はこの時は「4052秒(67分)飛行し、最大高度は6248km、飛行距離は1090km」との飛翔データーを明らかにしたうえで「新型大陸間弾道ミサイ『「火星17』の発射に成功した」と発表していた
▲5月4日の5回目
正午12時頃に順安から発射され、飛行距離は約470km、最高高度約780km。
▲5月25日の6回目
午前6時頃に順安から発射され、飛行距離約360km、最高高度約540km。
▲11月3日の7回目
午前7時40分頃に順安から発射され、飛行距離約760km、最高高度約1920km。1段推進体と2段推進体の切り離しには成功したが、弾頭部が飛行中に推力を失い、落下したとみられていた。この時は8時39分頃に平壌介川から短距離ミサイル2発が発射されていた。
なお、北朝鮮は人民軍総参謀部が7日に談話を発表し、「国防科学院の求めに応じて敵の作戦指揮システムを麻痺させる特殊機能戦闘部の動作信頼性検証のための重要な弾道ミサイル試験発射を行った」としてミサイルの種類については触れず「火星15」に似たミサイルの発射写真を公開していた。
こうしてみると、今回の8回目の発射はデーター的には3月24日の4回目と酷似している。今回、どのような実験を試みたのか定かではないが、こと飛行時間、飛行距離、最高高度では進歩がみられていないことがわかる。
ちなみに北朝鮮が10月4日午前7時23分頃に中国国境に近い慈江道舞坪里付近から発射した中長距離弾道ミサイル「火星12」は飛行距離約4600km、最高高度約1000km、速度はマッハ17で青森県上空を通過した後、7時44分頃に日本の東約3200kmのEEZ外に落下していたが、北朝鮮は「新型地対地中距離弾道ミサイルを、日本列島を横断させ、4500kmの太平洋上に設定された目標水域を打撃する訓練だった」と発表していた。