JR東海から211系を譲受!元西武の在来車両を置き換えか 大変化が予測される三岐鉄道三岐線
先月末、三重県のローカル私鉄「三岐(さんぎ)鉄道」が鉄道ファンの話題をさらった。JR東海から引退した車両「211系」を譲り受けたのである。公式からの発表はないものの、老朽化が進む在来車両を置き換えるために購入したものとみられ、今後の動向が注目されている。
三岐鉄道はJRと同じレール幅の三岐線とレール幅の狭い「ナローゲージ」の北勢線の二つの路線を運行しており、三岐線では西武鉄道の中古車両やセメント輸送のための貨物列車が運転されていることから鉄道ファンからの人気も高い。今回、211系が導入されるのは三岐線で、JRと車両の規格が同じであることから、導入車両としてはうってつけであったのだろう。
211系は国鉄時代末期の昭和60(1985)年に登場したいわゆる「国鉄型車両」だが、今回譲渡された編成はいずれもJR発足後に製造されたもので、車齢は30数年と三岐線の在来車両と比べると新しい。トイレなしの3両編成で、JRでは東海道本線静岡地区や御殿場線(御殿場以南)・身延線(短期間で撤退)で運用されていた。
今回三岐鉄道向けに回送された211系は5編成15両だ。まずSS2編成とSS3編成が自走回送されて3月20日未明に富田駅に到着。このうちSS2編成は三岐鉄道の機関車の牽引より3月22日未明に保々駅に回送された。保々駅は車両基地のある駅で、SS2編成は駅構内の外れに留置されている。
同日にはSS7編成、SS8編成、SS11編成の3編成も自走で富田駅まで回送されてきているが、こちらは記事執筆時点では保々駅には回送されずに富田駅構内に留置されたままだ。富田駅は三岐線とJR関西本線の接続駅で、かつては三岐線の起点だったが、近鉄名古屋線への乗換えの便を図るべく旅客列車は近鉄富田駅の方に乗り入れるようになり、昭和60(1985)年3月14日以降は貨物列車のみが発着している。
では211系による置き換えが予想される在来車両とはどんな車両たちなのか見ていこう。在来車両は2両編成3本と3両編成5本の計21両でいずれも西武鉄道から譲り受けた中古車両だ。
2両編成の101系が一番車齢が高く、昭和39(1964)年から西武411系として製造され、401系への改造を経て平成2(1990)年12月から平成5(1993)年6月にかけて3本6両が入線した。101編成と103編成は今年で製造から60年を迎える。3両編成の211系とは編成量数が合わないものの、運用効率化のために2両編成を置き換えて3両編成に統一といったやり方を取る可能性もあるだろう。
3両編成での最大勢力は3本9両が在籍する801系だ。西武701系を平成元(1989)年11月から平成9(1997)年10月にかけて譲り受けたもので、いずれも昭和41(1966)年・昭和42(1967)年に製造された車両だ。西武時代の4両編成を3両編成に改造するべく先頭車の運転台を中間車に移植する改造工事を西武所沢工場で行っている。801編成は地元高校生がデザインしたラッピング編成として4月2日から運行されており、今後2年間走る予定であることから置き換えられるとしても先のことになりそうだ。803編成は西武時代の赤電塗装、805編成は西武時代のレモンイエロー塗装に復刻されており、鉄道ファンからも人気の編成である。
851系は平成7(1995)年12月入線。種車は801系と同じ昭和42(1967)年製造の西武701系だが、細部の違いから別形式となった。西藤原方の先頭車クハ1851は平成24(2012)年11月8日の三里駅構内脱線事故で廃車となり、代わりに西武鉄道から部品取り用として購入していた新101系クハ1238を改造してクハ1881としたことから、前後で顔が異なる珍車となった。クハ1881は昭和54(1979)年12月製造で、相棒のクモハ851とは製造年が12年も違う年の差編成でもある。
在来車両で最も新しいのが751系で、平成21(2009)年1月に竣工した。昭和54(1979)年製造の西武新101系が種車で、851系のクハ1881とは同型である。入線にあたっては2両編成のクモハと4両編成のモハ+クハを組み合わせる編成組み換えを行っており、片割れの3両は伊豆箱根鉄道1300系2201編成となった。今のところ三岐線の最新車両で、LEDの行先表示など近代的な装備を備えているが、車齢は45年と高く、置き換え対象になっても不思議ではない。
211系の導入に伴い、在来車両の置き換えが予想される三岐鉄道三岐線。今のところどの編成が置き換えられるのか、211系がいつ運行を開始するのかは不明だが、在来車両は今のうちに乗って撮っておいた方がいいのは確かだろう。