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2018年NFL開幕! 開幕週は大波乱続き

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
2018年シーズン開幕を迎えたNFL。写真はチャージャース対チーフスの試合

Text&Photos by: KIYOSHI MIO

 アメリカで最も人気があるプロスポーツリーグ、「NFL」。

 2月第1週にチャンピオンを決めるスーパーボウルが行われるが、スーパーボウルが終わるとフットボール・ファンたちは7ヶ月も寂しい思いをして過ごすことになる。

 そんなフットボールから離れた寂しい生活も、9月第1週のNFL開幕とともに終わりを告げ、ここからスーパーボウルまでの5ヶ月間は、毎週末に最高なエキサイティングな試合が待っている。

 2018年シーズンはフィラデルフィア・イーグルスがニューイングランド・ペイトリオッツを破ってスーパーボウル王者に輝いた一方で、クリーブランド・ブラウンズは16戦全敗の不名誉な記録を残した。

 果たして、2018年シーズンはどんなシーズンになるのか?

 開幕週を見ただけで、昨年とは全く異なった、新しい時代の到来を感じさせた。

 全試合に先立って9月6日の木曜日の夜(日本時間7日)に行われたのが、昨年度覇者のイーグルスと一昨年のスーパーボウルで歴史的な逆転負けを喫したアトランタ・ファルコンズの「鷲」対「鷹」の試合。

 試合前にはイーグルスのスーパーボウル優勝を祝うセレモニーも行われ、フィラデルフィア近郊出身で熱心なイーグルス・ファンと知られるロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウト観戦に訪れた。エンゼルスは5日の夜にダラス近郊で試合を行った後、6日は移動日で7日にシカゴで試合を行ったが、トラウトはチームから離脱して、ファルコンズ・ファンのキャム・べドロジアンと一緒にフィラデルフィアまでやって来た。トラウトと仲の良い大谷翔平は残念ながら、NFLの開幕週の興奮を味わうことはできなかった。

 試合は前半は両チームともにオフェンスが噛み合わずに6対3とファルコンズのリードでハーフタイムに突入。

 3Qに入ると、スーパーボウルでもキープレーとして何度もハイライトで流れた「フィリー・スペシャル」2号からイーグルスがタッチダウン(TD)を奪う。この「フィリー・スペシャル」とはQBがハンドオフして渡したボールを、レシーバーとなって捕球するもの。

 スーパーボウルでMVPに選ばれたクオーターバック(QB)のニック・フォールズは、この試合でも的確にボールをキャッチして、イーグルスに勢いを与えた。しかし、本職の投げる方では34回パスを投げて19回成功したが、獲得パスヤードは僅かに117ヤードで、TDはなし。左膝靭帯断裂したエースQBのカーソン・ウェンツは10月に復帰予定だが、フォールズが調子を上げないと良い感じでウェンツに繋げない。

 一方、今シーズンのスーパーボウルが本拠地で開催されるのでファルコンズは最後のプレーまで追い上げを見せたが、開幕で躓き、黒星スタートとなった。

昨年度覇者のイーグルスはファルコンズに辛勝ながら開幕戦で白星を挙げた(三尾圭撮影)
昨年度覇者のイーグルスはファルコンズに辛勝ながら開幕戦で白星を挙げた(三尾圭撮影)

 9日の日曜日(日本時間10日)には13試合が行われたが、昨季は0勝16敗だったクリーブランド・ブラウンズが、強豪のピッツバーグ・スティーラーズ(昨季13勝3敗)とまさかの引き分け。2年ぶりの白星はお預けとなったが、スティーラーズ相手に大健闘を果たした。

 また、エースQBのジェイミス・ウィンストンが出場停止処分で欠場したタンパベイ・バッカニアーズ(昨季5勝11敗)は先発を務めたベテランQBのライアン・フィッツパトリックが417パスヤード、4TDの大活躍で、ニューオリンズ・セインツ(11勝5敗)との点の取り合いを制した。ハーバード大学卒業のフィッツパトリックは、2005年のドラフト7順目指名選手ながら、リーグ14年目間で7チームを渡り歩く老獪なQB。控えQBとして契約しても、先発QBがケガなどで戦列を離れて、いつの間にか先発に収まっている不思議なQBだ。

 そして、10日の月曜日(日本時間11日)にはマンデーナイトフットボールとして2試合が全米中継され、ここでも昨季は5勝11敗だったニューヨーク・ジェッツが、デトロイト・ライオンズ(昨季9勝7敗)を48対17の大差で圧勝。新人QBのサム・ダーノルドは198パスヤード、2TDと上々のNFLデビューを飾った。

 大波乱の開幕週はアップセットが続いただけでなく、悪天候にも見舞われ、マイアミで行われたドルフィンズ対テネシー・タイタンズの試合は試合が2度の途中中断で4時間近く中断して、1970年にNFLとAFLが合併して以降、歴代最長となる7時間8分も要した。

ハーバード大学出身の秀才QB、ライアン・フィッツパトリックは417パスヤード、4TDと大活躍(三尾圭撮影)
ハーバード大学出身の秀才QB、ライアン・フィッツパトリックは417パスヤード、4TDと大活躍(三尾圭撮影)

 この開幕週に私が取材に訪れたのは、注目カードの1つだったロサンゼルス・チャージャーズ(昨季9勝7敗)対カンザスシティ・チーフス(昨季10勝6敗)の同地区対決。

 試合はいきなり、チーフスの「NFL最速選手」、ワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルが91ヤードのパントリターンTDを決める。ヒルはレシーバーとしても169ヤード、2TDを記録して、チーフスを勝利に導いた。

 このヒルだが、学生時代には陸上の短距離選手としても活躍。高校生のときには200メートル走で、アメリカの高校記録に0.01秒迫る20.14を記録。100メートル走の自己ベストは、追い風+5.0メートル/秒の参考記録ながら、日本最速タイムと同じ9.98秒を記録。2012年にはバルセロナで開催された世界ジュニア陸上の代表メンバーにも選ばれ、4x100メートルリレーで金メダル、個人種目の200メートル走では銅メダルを獲得している。

 「人類最速の男」、ウサイン・ボルトがサッカーに挑戦しているが、ヒルは陸上でのキャリアよりもフットボールを選択。身長178センチと小柄な身体ながらも、ワールドクラスのスピードを武器にNFLのフィールドで活躍している。

 チャージャーズはベテランQBのフィリップ・リバースが424ヤード、3TDと奮闘したが、味方レシーバーがワイドオープンなパスを何度か落とすなど仲間に足を引っ張られた。

97ヤードのパントリターンTDを決めた「NFL最速男」のタイリーク・ヒル(三尾圭撮影)
97ヤードのパントリターンTDを決めた「NFL最速男」のタイリーク・ヒル(三尾圭撮影)
スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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