私たちはなぜ忙しいのか:心が亡びないための正月休みの過ごし方の心理学
忙しさは労働時間では決まらない。私たちの心が忙しさを作り出す。
■私たちは忙しい:労働時間は減ったのに
毎日、忙しい日々をお過ごしでしょうか。調査によれば、最も忙しい月は何月かというと断トツに忙しいのは12月でした。みなさん、無事に12月を乗り越えたでしょうか。ちなみに最も忙しいと感じる曜日は月曜日でした。
ところで、労働時間は減っています。大昔は「日曜日」もなく、盆と正月以外は働いていました。そして日曜日が休みになり、土曜日も休みになりました。「働き方改革」ということで、この3年を見ただけでも、サラリーマン全体の平均年間労働時間は、2008時間から1998時間に減っています。
でも、忙しさは変わっていませんよね。「仕事を家に持ち帰っているぞ!」という方もいらっしゃるでしょうが、実は忙しさは労働時間だけの問題ではないのです。
私たちは、なぜ忙しいと感じるのでしょうか。そして「忙しい」と言いたのでしょうか。
■忙しいと感じる時
1日に荷物を10こ運ぶよりも、20こ運ぶ方が忙しいでしょう。でも、労働時間や仕事量が変わらなくても、忙しいと感じる時と感じない時があります。物理的な仕事量だけでなく、忙しいと感じるかどうかです。
忙しいと感じると、パフォーマンスが下がるという研究があります。忙しと感じると、心身の負担が大きくなります。忙しいという漢字は、心を表すりっしんべに、滅亡の亡ですが、忙しくて心が亡び(滅び)ては困ります。
忙しいというは、仕事に追われている感覚です。一つの仕事をしながら、次の仕事、別の仕事が気になって仕方がない状況です。いくら仕事をしても、いつまでたってもするべき仕事が終わらない感覚です。余裕のなさが、忙しさです。
真面目すぎて忙しさを感じている人もいます。どんなに良い仕事をしても、子供のために頑張っても、まだまだ不十分と感じて、満足感が得られず、常に切迫感に責められます。
■「忙しい」と言いたい時
奴隷が働きながら、「忙しい、忙しい」と言っているというのは、イメージしにくいですね。奴隷は、「忙しい」と口に出しても何も良いことはないからです。
私たちは、「忙しい」と言いたい時があります。一つは、自分の大変さを周囲にわかってもらいたい時。誰かに手伝ってもらいたい、労(ねぎら)ってもらいたい時です。
心が追い詰められて深刻な状態になってしまうと、「忙しい」というSOSすら出せなくなる時もあるでしょう。
あるいは、自分の有能さを示す時にも使います。自分は有能で頼られて、仕事の依頼がたくさん来ているのだというアピールです。
また、幸せアピールの「忙しい」もあります。確かに忙しいのですが、その忙しさを楽しんでいる時もあります。
同じ「忙しい」にも、辛い忙しさと楽しい忙しさがありますね。
■忙しさを乗り越えるために
楽しい忙しさなら良いのですが、辛い忙しさはいやでね。働き方改革も大切ですが、心を整えることも大切です。
まず、家庭のことも職場のことも含めて、仕事に優先順位をつけることでしょう。そして、集中とリラックスの両方が必要です。一つの仕事をいている時は、その仕事に集中します。
雑念を取り払って集中することで、仕事のパフォーマンスが高まり、達成感も高まります。一つの仕事が終わったら、次の仕事です。集中する時は集中し、そして休む時は休みます。
仕事が大変だと忙しく、心が滅びるわけではありません。大きな目標(たとえばミシュランの三つ星をとる)、純粋な動機(お客様のことを一番に)、良い仲間がいて、仕事が大好きなら、多忙感で心が潰されることはありません(『グランメゾン東京』から学ぶ幸せになる努力とグリットの心理学)。
多忙を極める人たちも、上手に生きている人は、時間とお金の使い方が上手です。どんなに忙しくても、私たちは奴隷ではありませんから、自分の裁量で時間とお金の使い所をある程度は決めることができるはずです。
1日の中で、リラックスできる時間。1年の中でリラックスできる時。それが、心をリフレッシュさせます。
私たちの疲れは、多くの場合、体の疲れよりも心の疲れです。フルマラソンを走り終わった人も、意外と元気で、翌日は普通に仕事に行きます。過労死や過労自殺の問題も、体の疲れプラス心の問題です。
あなたは、いつも頑張っています。この1週間、この忙しかった12月。そして、この1年。よく頑張りました。たまには、自分をほめてあげましょう。自分の仕事に誇りを持ちましょう。そして、ゆっくりリラックスした年末年始を過ごしましょう。