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この症状は新型コロナですか?インフルエンザですか? 違いは

倉原優呼吸器内科医
photoACより使用

インフルエンザが全国的に流行期入りしています。発熱外来には多くの患者さんが来院されますが、「新型コロナ陽性、新型コロナ陽性、インフル陽性、新型コロナ陽性・・・」といった感じでチラホラとインフルエンザ陽性例が増えてきました。症状によって、新型コロナかインフルエンザか当たりがつくのかどうか、書きたいと思います。

症状に違いはあるのか?

コロナ禍初期は、咳や息切れがしんどかったり、味覚障害・嗅覚障害などの特徴的な症状があったりした場合、「新型コロナかな?」と当たりをつけることが可能でした。とはいえ、コロナ禍初期はインフルエンザ自体が流行していなかったので、そもそも両者を区別する必要がなかったのも事実です。

さて、症状によって新型コロナとインフルエンザの当たりがつくのかと問われると、オミクロン株以降は正直区別が厳しいです()。

表. 新型コロナ(オミクロン株)・インフルエンザ・かぜの症状(参考資料1, 2などをもとに筆者作成)
表. 新型コロナ(オミクロン株)・インフルエンザ・かぜの症状(参考資料1, 2などをもとに筆者作成)

最近、とてものどが痛いという発熱患者さんが受診し、「新型コロナかな?」と思っていたら、インフルエンザが陽性になったことがありました。こりゃあ症状だけでは区別できないな、と痛感しました。

あくまで私見ですが、発熱や筋肉痛が急速にやってくる「典型的なインフルエンザ」っぽいときは、やはりインフルエンザのことが多いという印象はあります。新型コロナでも、急速に多彩な症状が出現することがありますが、ワクチンの効果もあって、ゆっくり症状が出現したり普通のかぜのような症状になったりすることも多いです。

また、潜伏期間が新型コロナより短めなので、「あの人からうつったのかな」というのが明確に分かりやすいのがインフルエンザでもあります。とはいえ、オミクロン株以降、新型コロナの潜伏期間もどんどん短くなっているため、この差もいずれなくなるかもしれません。

同時流行下では同時検査すべき

新型コロナとインフルエンザが同時流行している現在、同居家族がすでにどちらか陽性と分かっているような場合を除き、基本的に同時検査するほうが望ましいと考えます。

現時点では、発熱者のほとんどが新型コロナですが、今後インフルエンザの割合が増えて逆転する時期が来るかもしれません。そうなると、「まず新型コロナの検査をしましょう」という現在の推奨は体をなさない可能性があり、やはり同時検査キットの使用が望ましいと個人的に考えます()。

図.  同時検査キットを用いたフロー(筆者作成)
図. 同時検査キットを用いたフロー(筆者作成)

同時検査キットは、すでにドラッグストアやオンラインで市販が開始されています。第1類医薬品に該当するため、本来であれば薬剤師からの口頭説明が必要なのですが、事態が事態ですから、オンラインで問診に回答し、薬剤師からのメールを確認した後でも購入が可能となっています。

症状が出て間もない場合、インフルエンザ陽性がまだ検出できないことがあり、早すぎる検査は推奨されません。こういった塩梅が分からないから、とりあえず医療機関を受診しようという人が増えると、やはり医療は逼迫してしまいます。

年末年始の帰省後から発熱した人ですでに発熱外来は混雑していますので、自己検査の啓発がもう少しうまくいけば・・・と願っています。

ウイルスごとの動線分離は厳しい

現在の発熱外来は、新型コロナかインフルエンザか分からないものの、熱がある重症化リスクが高い人が受診する仕組みになっています。

大きな医療機関の発熱外来であればしっかりとスペースが確保されていますが、小さな発熱外来では、左隣の新型コロナの患者さんと、右隣のインフルエンザの患者さんに挟まれて座る、なんて事態も起こりかねません。

そのため、広いスペースが確保できないクリニックなどでは、ウイルスごとの動線分離は厳しい状況になりつつあります。

新型コロナとインフルエンザに同時感染する患者さんはまれですが、もし同時感染すると死亡リスクが大きく上がることが示されています(3)。可能なら動線分離したいところですが、上述したように、検査結果が判明するまでは新型コロナかインフルエンザか予測することが難しい実状があります。

微熱があるということで発熱外来を受診する軽症の患者さんは多いですが、新型コロナとインフルエンザの患者さんがごったがえしている発熱外来で、無用な感染症をもらってくるリスクがあるため、注意が必要です。

まとめ

症状のみで新型コロナとインフルエンザの当たりをつけるのは至難の業なので、現状検査に頼らざるをえません。

重症化リスクが高くない人は、うまく自己検査を活用することが望まれます。現在、年末年始で発熱された多くの方が医療機関を受診しているため、節度ある受診を心がけてくださいますようお願いします。

(参考)

(1) Similarities and Differences between Flu and COVID-19(URL:https://www.cdc.gov/flu/symptoms/flu-vs-covid19.htm

(2) Pata D, et al. Mediterr J Hematol Infect Dis. 2022; 14(1): e2022065.

(3) Dao TL, et al. J Clin Virol Plus. 2021; 1: 100036.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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