新型コロナ「5類」移行から1年 医療現場で変わったこと
2023年5月8日に新型コロナが「5類感染症」に移行してから、1年が経ちました。この間、医療現場ではどのように新型コロナと向き合ってきたか、また現在新型コロナはどういう位置づけになっているのか、医師からの目線を解説したいと思います。
「5類」移行後の流行の推移
まず、新型コロナが「5類感染症」に移行してからの流行の推移をおさらいしておきましょう。波の数はもう数えられていませんが、移行後も流行していたことが分かります(図)。
定点医療機関あたりの感染者数、すなわち代表的な医療機関における1週間の陽性者数を数値化したものがグラフの縦軸になっており、インフルエンザの場合1人以上を流行期と定義していますが、新型コロナもインフルエンザもざっくりと10人以上だと医療従事者にとっては「多いな」と体感できる水準だと思ってください。
ですから、「5類」移行後は、夏に新型コロナ、秋にインフルエンザ、冬に両方同時流行があって、現在ほぼ両方とも落ち着きを取り戻しつつある状況と言えます。
新型コロナはインフルエンザとは違って、夏にも流行するという特徴があり、直近の推移をみると夏頃にまた流行するのではないかと予想されます。
パンデミック初期の頃とは違って、ウイルス性肺炎を起こす頻度はかなり減りましたが、インフルエンザよりは合併率が多いなという印象です。
若年層にとって病毒性は「風邪<インフルエンザ=新型コロナ」という理解でよいですが、基礎疾患がある人や高齢者においては「風邪<インフルエンザ<新型コロナ」というのはまだ変わりません。
医療現場では誰に検査している?
コロナ禍前までは、インフルエンザ流行期入りが報道されたあたりから、発熱者に対してインフルエンザの抗原検査を積極的におこなっていました。
しかし、コロナ禍以降は、発熱者ほぼ全員に対してインフルエンザと新型コロナの抗原検査を同時におこなっています。
インフルエンザが流行期から脱しようとしているため、新型コロナの抗原検査だけに間引くことは可能かもしれませんが、どの医療機関も同時検査のフローを確立していることから、しばらくは同時検査を継続する施設が多いと予想します。
ただ、遺伝子検査の設備が整った医療機関では、そのほかの呼吸器感染症のPCR検査も同時におこなっている場合があります。
院内での対応
コロナ禍前においても、病棟内でインフルエンザが発生した場合、他の患者さんへ感染させないようできるだけ隔離されていました。新型コロナも現在それを踏襲する形となっています。
インフルエンザとまったく同じ対応でよいとする根拠はなく、インフルエンザよりもやや警戒度を高めた対応をしている医療機関が多いと思います。基本的には病棟の個室に一定期間隔離することになります。
新型コロナの感染者数のピーク時は、感染性も高く、肺炎合併率も高く、入院患者さんに感染が広がると院内クラスターで亡くなられる人もいることから、入院時にスクリーニング検査をおこなっている医療機関がほとんどでした。
新型コロナが弱毒化し、またコスト面でも全例検査は現実的ではないことから、無症状の人に対するスクリーニング検査は現在ほぼおこなわれていません。
面会制限は緩和されつつある
コロナ禍前まで、医療機関では面会制限はほとんどありませんでした。お見舞い者の記名や面会札着用をお願いするところが多かったと思いますが、コロナ禍以降は面会そのものがかなり制限されました。
「5類」移行後、面会が緩和された医療機関も多いのですが、ホームページなどを見ても「15分まで」「2名まで」のような条件が付されている医療機関のほうが多数派のようです。
また、現在もマスク着用をお願いしている医療機関がほとんどで、「5類」移行後から1年が経過したとはいえ、まだまだ完全にコロナ禍前に戻ったとは言い難いでしょう。
(参考資料)
(1) 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況)2024年(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00461.html)
(2) インフルエンザに関する報道発表資料 2023/2024シーズン (URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00014.html)