ウクライナに派兵された北朝鮮の「暴風軍団」の実体!
北朝鮮の対露派兵を巡っては様々な情報が飛び交っている。
すでに北朝鮮から少なくとも3千人がロシア極東に到着して、「軍事基地で適応訓練を受けている」というのが韓国及び米国の情報だが、数日前(24日)のウクライナの国防省情報総局はウクライナが占領したロシア西部クルスク州で「北朝鮮兵士の存在が確認された」と発表している。その一方で、ゼレンスキー大統領は25日の通信アプリ「テレグラム」でロシアに派遣された北朝鮮兵が27日から28日の間に「ウクライナとの戦闘地域に投入されることが予想される」と投稿していた。
また、派兵された人数についても韓国の情報機関「国家情報院」(国情院)は「12月には1万2千人に達する」と予測しているが、ウクライナ側はすでに「約1万2千人の北朝鮮兵がロシアに派遣されている」と主張している。
しかし、派兵された部隊については「暴風軍団」と呼ばれる特殊作戦部隊であるという点ではウクライナ情報当局も韓国情報当局も見解が一致している。しかし、どうやって確認したのか、その根拠については示されていない。
韓国の金龍顕(キム・リョンヒョン)国防長官は野党から情報の出所について聞かれると「明らかにすることはできない」と述べていたが、24日の国会国防委員会の国政監査ではロシアに派遣された北朝鮮兵について「10代から20代と若いことからどうやら派兵ではなく傭兵であるかもしれない」と述べていた。それも「ロシア軍の統制下で何の作戦権限もなく言われるまま動いているだけで弾除けの雇い兵」との認識を示していた。
派兵された兵士が新平、一兵卒ならばウクライナにとってはそれほどの脅威とはならない。身の安全と衣食住を保証すれば、ウクライナ軍の投降呼び掛けに応じる兵士もぞろぞろ出て来るかもしれない。
しかし、特殊作戦軍の核である正真正銘の「暴風軍団」の先鋭部隊ならば、話は別だ。国家への忠誠心は高く、精神的に武装され、かつ肉体的に強靭で、狙撃からテコンドーまで武術にも長けており、食糧の配給を含め特別待遇を受けているからである。「最高司令官の命令があれば、爆弾を抱えて敵地に飛び込んでいくことも辞さない」と、精神武装されている彼らにとって「投降」は即、死を意味する。
特殊作戦軍は朴正煕政権時代の1968年に朴大統領の官邸「青瓦台」の襲撃を企てた124部隊が母体となっている。フィクションではあるが韓国映画「シュリ」や「シルミド」を見れば、北朝鮮の戦闘員の精神力が桁外れであることがわかる。
古くは米軍がベトナム戦争で北朝鮮の北ベトナムへの派兵で、同じくイスラエルが第4次中東戦争で北朝鮮のエジプトへの派兵で苦戦したようにウクライナ軍は苦戦を強いられ、相当の犠牲者を出すことになるかもしれない。「暴風軍団」の戦闘員がクルスク前線に投入されるようなことになれば、最悪の場合、ウクライナ軍は占拠地からの撤退を余儀なくされるかもしれない。
現実の世界では北朝鮮の特殊部隊の存在が広く知れ渡ったのは全斗煥(チョン・ドファン)大統領を狙った1983年の「ラングーン暗殺未遂事件」だが、2016年11月には金総書記の立ち会いの下で韓国大統領府(青瓦台)への奇襲攻撃訓練が行われていた。北朝鮮は訓練模様を映像で3分間流していたが、映像には朴槿恵(パク・クネ)大統領の似顔絵を標的にした射撃場面が映し出されていた。
また、2017年8月に金総書記は特殊作戦部隊の対象物打撃競技を参観していたことがあるが、この訓練は黄海(西海)海上の境界線(北方限界線)上にある韓国が実効支配する延坪島などに仮想した島を占領する訓練であった。特殊作戦部隊は飛行隊と砲兵隊と連携し、水上、水中、空中から侵入し、島にある敵の目標物を襲撃、破壊し、島を占領していた。
直近では9月11日と10月2日に特殊作戦部隊の訓練基地で様々な特殊作戦旅団戦闘員らが金総書記の前で訓練を披露していたが、朝鮮中央通信によると「戦闘員らは金総書記が望む国権守護、国益死守の先兵との自覚を持っていかなる戦闘任務が与えられても徹底的に完璧に成し遂げる猛将として準備していく」ことを誓っていた。
共同通信によると、朝鮮人民軍総参謀部の金ヨンボク副総参謀長が北朝鮮軍部隊の統括役としてロシアに入国したとのことだが、金副総参謀長は2017年8月の特殊作戦部隊の対象物打撃競技で「特殊作戦軍」の前身である第11軍団団長としてこの競技を指揮していた。
金副総参謀長は今年3月に行われた西部地区主要作戦訓練基地での実動訓練から頭角を現し、先月は民軍特殊作戦武力訓練(11日)と新型戦術弾道ミサイルの試射、そして今月も西部地区特殊作戦部隊訓練(2日)と呉振宇砲兵総合軍官学校卒業生の砲実弾射撃訓練(6日)に立ち会っていた。
北朝鮮軍の参戦はウクライナ戦の様相を一変させるかもしれない。