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最新研究でベテルギウスは連星系である可能性が高いと判明!

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「ベテルギウスには伴星が存在するかも!?」というテーマで解説していきます。

国際的な研究チームは2024年8月、オリオン座のα星ベテルギウスの周期的な変光は、未知の伴星によって引き起こされている可能性が高いことを示しました。

●ベテルギウスの変光について

○変光の性質と解釈

ベテルギウスは周期的に変光しており、顕著な変光周期には420日のものと、さらに長い2200日のものがあることが知られています。

一般的に、恒星の本体が膨張と収縮を繰り返す脈動によって生じる変光パターンこそが、その星の特徴を最もよく表す基本的な変光パターンであると言えます。

ベテルギウスの場合、420日周期のものが脈動に起因する基本的な変光パターンであり、2200日周期のものは「長周期二次変動(Long Secondary Period, LSP)」と呼ばれ、副次的(Secondary)なものであると考えられています。

脈動周期が420日であるという一般的な考えの元に計算すると、ベテルギウスの大きさは太陽の約800倍と推定されます。

赤色超巨星としては小柄で、今後も膨張する余地があり、超新星爆発はまだまだ先であると導かれていました。

○LSPの原因

ベテルギウスの2200日周期の変光(LSP)の原因については、現在でも完全には解明されていません。

そんな中、最近のある研究では、実際は2200日の長周期の変光の方が、星全体の膨張と収縮の結果生じる基本的な変光パターンであるとして、ベテルギウスの性質の推定が行われました。

その場合、ベテルギウスの直径は太陽の800倍ほどではなく、太陽の1200倍ほどにもなり、ベテルギウスは既にヘリウムの次の炭素をほぼ燃焼し終えており、数十年以内に爆発する可能性が示されました。

しかし様々な研究により、現在は2200日周期の変光が星全体の脈動によって生じている可能性は極めて低いと考えられています。

この後解説する最新の論文でも、2200日周期の変光はベテルギウスの脈動とは直接関係のない、副次的なもの(LSP)であるとして扱われています。

●ベテルギウスは連星系!?

2024年8月に国際的な研究チームが公表した最新の論文では、ベテルギウスのLSPは、未知の伴星の存在によって生じている可能性が高いことが示されています。

○伴星が存在する根拠

ベテルギウスのLSPが伴星の影響によるものであると考える根拠として、まず光度変化の周期が長期にわたって非常に安定しているという点が挙げられます。

仮にベテルギウス内部の活動が原因であれば、これほどまでに安定した周期的な変化を維持することは困難ですが、LSPと同周期で公転する未知の伴星が存在するなら、安定した変化を自然に説明可能です。

Credit:Goldberg et al. 2024
Credit:Goldberg et al. 2024

また、伴星の存在により、ベテルギウスの光度変化(Light Curve, LC)と視線速度変化(Radial Velocity, RV)、そしてそれらの間にズレが存在する事実についても同時に上手く説明が可能になります。

上図のように、ベテルギウス連星系を私たちが図の左側から観測する状況を考えます。

例えばAの時、伴星はより表面温度が低い主星の背後に隠れます。

この時地球からはLCは最小値を示します。

その後Bでは、ベテルギウス連星系を取り巻く塵の雲(曲線)により伴星の全てが見えるわけではないものの、全体としてAの時よりも高い光度を示します。

また主星が公転により後退するため、RVは最大値を示します。

続いてCについて。

伴星の周囲では塵の雲が薄いため、Cのタイミングで地球からは伴星と主星が最もよく見え、LCが最大値を示します。

最後にDでは、光度はBと同程度ですが、明るい主星が地球に接近するため、RVは最小値を示します。

このように考えると、LCとRVの変化を、そのずれも含めて上手く説明ができるのです。

○伴星の特性

様々な観測データから推定された、伴星(オリオン座α星B)の質量は、太陽質量の「1.17 ± 0.7」倍でした。

伴星の軌道要素としては、当然その公転周期は主星のLSPと同じく、約2200日となります。

また伴星の軌道半径は太陽半径の「1850 ± 70」倍で、ベテルギウスの半径が太陽の764倍とすると、その約2.4倍となります。

ベテルギウス主星の大きさから考えると、かなり近くを公転していると言えそうです。

○観測可能性について

伴星に対し主星が近くにある上に極めて明るく、さらに伴星は塵の雲にも隠れていると考えられるため、直接撮像は困難です。

しかし高分解能かつ、主星の光を抑えた観測で検出の可能性があります。

地球から見たベテルギウスとその伴星の距離間隔が最大となり、伴星の観測に適した直近のタイミングに、2024/12/6、2027/11/26、そして2030/11/15が挙げられています。

○LSP解明の意義

ベテルギウスに限らず、LSPは一般的な巨星でも見られることが知られつつあります。

そんなLSPの性質を理解することで、恒星進化理論や、巨星の内部構造、さらに連星系の形成と進化に関する理解が深まります。

そしてLSPは超新星爆発とも関連している可能性があります。

超新星爆発の時期を正確に予測できる未来を実現するためには、LSPの正確な理解も必要でしょう。

https://arxiv.org/pdf/2408.09089

https://www.universetoday.com/168246/is-betelgeuse-actually-a-binary-star/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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