天の川銀河とアンドロメダ銀河は衝突しない!?最新分析で判明した事実とは
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「アンドロメダ銀河との衝突に関する新事実」というテーマで解説します。
フィンランドのヘルシンキ大学などの研究チームは、天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突に関する、様々な最新の推定値を反映した最も正確なシミュレーションを行い、その成果を2024年7月末に公表しました。
これまで数十億年以内に起こることが確実視されていたアンドロメダ銀河との衝突ですが、最新のシミュレーションではかなりの確率で衝突が起こらないことが判明しました。
●アンドロメダ銀河との衝突
100年以上前から、アンドロメダ銀河の光の青方偏移より、この銀河が天の川銀河に対し、100km/s以上の視線速度で接近してきていることがわかっていました。
その後1990年代にハッブル宇宙望遠鏡が登場したことで、アンドロメダ銀河の接線速度が視線速度に対して小さいことが判明しました。
このことからアンドロメダ銀河はほとんど直線的に天の川銀河に接近し、将来的には衝突するという、現在も教科書に載っているような一般的な認識に至りました。
これまでに行われてきたいくつかの分析では、いずれも天の川銀河とアンドロメダ銀河の数十億年以内の衝突を確実視するような結果が得られています。
○具体的に起こる事
まず天の川銀河もアンドロメダ銀河も高密度に恒星が集まった円盤構造を持つ銀河ですが、約50億年以内にこれらの円盤同士が衝突を開始します。
恒星が比較的高密度で分布しているとはいっても実際は非常に低密度であり、銀河衝突が起こってもほとんどの恒星は何の影響もうけません。
しかし銀河全体の構造は大きく変化し、最終的には「ミルコメダ銀河」という一つの巨大銀河を形成します。
ミルコメダ銀河は楕円銀河という分類の銀河に進化すると予想されています。
また天の川銀河もアンドロメダ銀河も銀河中心部に巨大なブラックホールが存在していますが、現在はそれらのブラックホールはあまり物質を飲み込んでいない、大人しい状態にあります。
しかし銀河衝突が起こると、銀河中心のブラックホールに大量のガスが流れ込み、強烈なエネルギーを放つ巨大な降着円盤などの構造を形成します。
このように銀河中心部のブラックホールが活発化し、強烈なエネルギーを放つ銀河の中心部を「活動銀河核」と呼びます。
銀河衝突後に形成されるミルコメダ銀河は活動銀河核に分類されるかもしれません。
○従来の予測の不確実性
しかしこのような衝突が起こるという結論を導いた従来の予測には、いくつかの不確実性が存在しています。
まず当初の予測では、アンドロメダ銀河の接線速度が視線速度よりも小さいか、無視できる程度しかないことがわかっていましたが、具体的な数値は不明でした。
また大抵の銀河の質量の大部分を観測困難なダークマターが占めているため、正確な質量の推定値を得るのは難しい背景がありました。
さらに天の川銀河とアンドロメダ銀河の今後の軌道は、ローカルグループ内のこれら以外の銀河の重力的な影響を大きく受けることがわかっています。
しかし天の川銀河とアンドロメダ銀河が将来的に衝突すると結論付けた当初の論文では、これら2つ以外の天体の影響は考慮されていません。
またその後ローカルグループで3番目に大きい「さんかく座銀河」、天の川銀河の衛星銀河でありローカルグループで4番目に大きい「大マゼラン雲」の影響を考慮した三体シミュレーションは行われましたが、これら4天体を同時に考慮したシミュレーションはこれまで実現していませんでした。
●衝突に関する最新の分析
そんな中、フィンランドのヘルシンキ大学などの研究チームは、天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突に関する、様々な最新の推定値を反映した最も正確なシミュレーションを行いました。
なお、この4つのグラフの横軸は時間、縦軸は天の川銀河とアンドロメダ銀河間の距離を示し、0となると衝突したことを表しています。
まず、天の川銀河とアンドロメダ銀河だけを含むシミュレーションを行ったところ、合体する確率は44%しかありませんでした。
またさんかく座銀河の影響を含めると、合体確率は63%に上昇しました。
そしてさんかく座銀河に加え、大マゼラン雲を含めると、その確率は54%に減少しました。
従来の予想に反し、数十億年以内にアンドロメダ銀河との衝突が起こらない確率が50パーセント程度もあったのです。
そして、もし銀河同士の衝突が起こったとしても、それは約80億年後のことであり、従来の推定よりもさらに遠い未来の出来事となる可能性が示されました。
もちろん、今回得られた分析結果が最終的な結論ではありません。
ローカルグループ内の銀河に対する観測データがこれまで以上に集まることで、より詳細な分析が行えるようになります。
●ローカルグループの未来
ローカルグループには100個程度の銀河が発見されており、観測が難しい未発見の銀河も多数眠っていると考えられていますが、これらの銀河は重力的に拘束し合っています。
よって天の川銀河とアンドロメダ銀河が仮に今回の接近時における衝突を免れたとしても、数百億年後の未来にはこれらの銀河を含む、ローカルグループ内全ての銀河が合体し、一つのミルコメダ銀河を形成します。
一方、現在の宇宙の加速度的な膨張が今後も続けば、ローカルグループより外にある銀河は全て、私たちが地球から観測可能な宇宙の外へと追いやられてしまいます。
そうなった未来の宇宙では、ローカルグループ内からはミルコメダ銀河しか存在しないように映るでしょう。
非常に遠方の宇宙にある無数の美しい銀河の姿を楽しめるのは、今この瞬間だけなのです。