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松島幸太朗、日本代表へは欧州で合流見通し「厳しい戦いになる」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦ではウイングでプレー(写真:REX/アフロ)

 ラグビー日本代表でフランス・トップ14のクレルモンに所属する松島幸太朗が9月19日、オンラインで会見。2季目となるフランスでの過ごし方や今秋の代表活動への思いについて語った。

 松島は身長178センチ、体重88キロの28歳。ワールドカップには2大会連続出場中で、2019年の日本大会では計5トライを挙げ8強入りを果たした。グラウンド最後尾のフルバックを主戦場とし、軽快なフットワークとばねを活かしたプレーが光る。

 18日にはトップ14の第3節、ラロシェル戦で今季初先発。23―22で勝った。9月下旬から合宿を始める日本代表には、10月下旬以降の欧州遠征時から合流しそうだ。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

―—まずはフランスでのプレーについて伺います。復帰戦の感触は。

「怪我(※1)をした箇所が万全ではない不安もありましたがチームが2連敗中だったこともあり早めに出た。ホームで勝てて凄く安心しています。(怪我の箇所は)ちょっと痛みはあるので、気を付けながら。1年間通してやった経験があって、ちょっと余裕を持ってできている感じです。

久しぶりに声が通らない、ファンが多く入るなかで試合をした。(観客が)いるのといないのと全然違う印象がありました。きつい時にそういう声援があると、凄く後押しになります。

監督も代わって、ボールをもっと動かそう、スマートにやろうという感じになった。(自身は)パススキルとかを、もっと磨いていきたいと思っています。(目標は)チームとしては優勝。個人としては、もっと去年よりラインブレイクの数を増やしていきたいと思います」

※1 7月までの代表活動中に故障

——前述の怪我を受け、日本でのオフはどんな日々を過ごしてきたか。

「日本に帰ってから、ラグビーは一切やらなくて。トレーナーを呼んで足のリハビリ、弱っている部分の強化をして。あとはウェイトトレーニングを比較的やっていた方かなと思います。今年はあまり体重を上げずに軽めで行って、(シーズンを通して)ウェイトトレーニングはしていきたいっていう感じでやってきた。ワンシーズンを通してやった経験で、ちょっと(代表戦の時などよりも)落としたくらいがいいのかなという感覚だったので」

——フランスの生活については。

「レストランなどの施設に入る時はマスクしますけど、いまは大分、普通の日常を過ごせています」

——日本から持ってきたものはありますか。

「ダイソー(100円ショップ)の簡単調理器具みたいな。電子レンジでパッと卵とか、パスタとかがすぐできるやつを買いました。フライパンとかを洗うのがめんどくさいので、もっと簡単なやつにしようかなと」

——ちなみに日本では、2022年1月からジャパンラグビーリーグワン(※2)が発足します。

「何が変わったのかとかが、いまいち、わかりづらかったです。結局プロ化にもならずという感じで。試合数は変わっているんですが、あまり、わかんないですね。どういうコンセプトでやるのかは」

※2 各クラブの収益性や地域性を求める。

 松島が海外でキャリアを積み上げるのとほぼ同時並行で、日本代表も新たなチャレンジを見据えている。今春、約1年8か月ぶりに活動を再開させ、欧州で4年に1度編成されるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ、アイルランド代表と対戦。2連敗を喫したが、長らく国際舞台から遠ざかっていたのを鑑みれば収穫もあったと陣営は捉える。

 今秋もツアーを控える。21日に代表候補が発表され、29日には予定より約1か月遅れでの国内合宿が始まり、10月23日にはオーストラリア代表と大分で、続く11月6日にはアイルランド代表とダブリンで、13日にはポルトガル代表とリスボンで、20日にはスコットランド代表とエディンバラでぶつかる。

 現在、日本大会を制した南アフリカ代表に2連勝中のオーストラリア代表とのゲームは、日本代表にとっては日本大会以来の国内での代表戦。アイルランド代表戦、スコットランド代表戦では、日本大会での対戦時以来となるベストメンバー同士でのマッチアップが期待され、ポルトガル代表戦では若手の起用も望まれる。

 フランスに滞在中の松島が今度の活動へ加わるとしたら、チームの欧州入り後となりそうだ。思いは。

——代表活動へは。

「まずはこっちでいいプレーをするというのが(大事)。自分の感覚を戻すところから。あまり(代表のことを)考えずに。いいプレーをすれば代表にも繋がると思うので、まずは自分のコンディションを上げることからやっていきたいです。僕が(代表に)合流するのであれば(日本へ戻った場合に)隔離とかもあるので、ヨーロッパでっていう感じだと思います。春と同じような感じで合流すると思います。

今度のスコットランド代表、アイルランド代表には、今年6月にブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ(英国やアイルランドの連合軍)に選ばれて(自国代表の)スコッドに入っていなかった選手が入ると思う。試合の厳しさが格段とアップする。(日本代表は)しっかりと準備しないといい結果にならない。もうすでに合宿期間が短くなっていると思うので、選手たちはいまから自分のクラブチームでやるべきことをやっておかないと、厳しい戦いになるかなと思います」

——春のツアーを受けて思うことは。

「僕が入ってきた初日の時点で、皆、疲れているなって感じはあった。違う国に行ってからのコンディションの作り方(は再考してもいい)。追い込む日は追い込む、軽めにやる日は軽めにやるというのを入れていけば、選手もモチベーションが上がってやりやすいかなと思います。

若い選手、新しく入ってきた選手がいる。そうした選手には、テストマッチを経験している人がその経験を伝えていって(いくべき)。強豪とやる時には何が必要かをはじめから言っておけば、心の準備ができ、何をすべきかがわかってくる。しっかりコミュニケーションを取っていく…ってところですかね」

——その時代表デビューを果たした齋藤直人選手について。

「フォワードを動かせる。試合に出続ければ凄い選手になるんじゃないかと思います」

——ワールドカップイヤー以外の代表活動。海外でプレーする選手や主力組には、招集を辞退する例もあります。松島さんがずっと参加し続ける思いを聞かせていただけますか。

「参加できる条件が整っていたら行きたいと思っていて。試合に出られれば、自分の成長になるので。休みのコントロールはフランスでできると思う。チームの監督が(選手の福利厚生への感度が高い)ニュージーランドの人になったので、そこらへんのコミュニケーションはしやすくなりました」

 日本代表の強化環境は、日本大会以前と以後で異なる。

 2019年まではスーパ―ラグビーの日本チーム、サンウルブズがあり、代表候補選手が多くの国際経験を積めた。ところがそのサンウルブズは2020年限りでの撤退を余儀なくされており、いまはテストマッチ以外での国際経験か各自で積まねばならない。

 希少な「海外組」の松島は何を思うか。

「強い国(の選手との試合)とやっておけば、慣れというのも出てくると思う。こういう選手にはこういう特徴があるなというのもわかってくる。そういう経験というのは、チームに絶対に必要だと思っています。いまも海外でやりたい選手はいると思いますが、タイミング、コロナでなかなかうまくいかなかったり…ということがある。海外でやることが全てではないですが、経験としてやっておく分にはチームにプラスになる。それができないのであればもっとテストマッチを増やせていけたらいいんじゃないかと思います」

 現実を正確に見定める。国内屈指のランナーは聡明さでも鳴らす。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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