女性なら知っておきたい「骨盤底筋」の鍛え方 産後の尿漏れなどの症状改善に
骨盤底筋って?
骨盤底筋とは、骨盤内の臓器を支えている筋肉群のことです。膀胱や直腸、女性の場合は子宮も骨盤内の臓器なので、これらの臓器と密接に関わっています。特に、膀胱と腸のコントロールに重要な役割を担っています。
他の筋肉と同様に、骨盤底筋も傷ついたり弱まったりすることがあります。主な原因として妊娠、出産、肥満、一部の手術などが挙げられますが、歳を重ねることによっても弱まってしまいます。
骨盤底筋が弱まることによって起こるトラブル
骨盤底筋が傷ついたり弱まったりすると、以下のようなトラブルが生じるリスクが高まります。
(1) 尿失禁(尿漏れ)
尿が漏れたり、膀胱のコントロールができなくなることです。
尿失禁の一種である「ストレス性尿失禁」は、腹部に圧力がかかった(咳やくしゃみ、激しい運動をしたときなど)ときや尿道周囲の筋肉がきちんとコントロールできないときに起こります。ストレス性尿失禁は出産を経験した人に起こりやすいものです。
他に「切迫性尿失禁」と呼ばれるものがあり、これは定期的に突然の尿意を感じてしまうものです。
(2) 便失禁
便が自分の意思とは関係なく出てしまうものです。骨盤底筋の激しいダメージ(経腟分娩など)は、便失禁の原因となることがあります。
(3) 骨盤臓器脱
膀胱、直腸、子宮が骨盤の位置よりも下方に落ちてきて、多くの場合は腟の中に膨らみができてしまいます。骨盤底筋が弱くなり、臓器を支えることができなくなると起こりやすくなります。軽度であれば無症状のこともありますが、排尿トラブルの原因となったり、お風呂やセックスの際に腟の中の膨らみに気付く人もいるでしょう。
これらの症状がある場合、骨盤底筋を強化するトレーニングやエクササイズを行うことで、症状の改善につながることが期待できます。
骨盤底筋トレーニングを始める際の注意点は?
骨盤底筋トレーニングに興味がある場合は、まず医療機関で医師や理学療法士に相談することを検討しましょう。
例えば、出産による骨盤底筋へのダメージが残っている場合には、骨盤底筋トレーニングを開始する前にまず回復を待つ必要があります。
また、筋筋膜性骨盤痛症候群(myofascial pelvic pain syndrome. 骨盤の筋肉や周辺組織の異常により性交痛や排尿トラブルを引き起こすもの)がある場合には、骨盤底筋トレーニングが症状を悪化させる可能性があります。
特に産後間もない方や骨盤の痛みなど症状が強い方は、まず医療機関を受診し、骨盤底筋トレーニングが必要なのか、また実施して問題ないかを確認し、トレーニングの正しいやり方を理学療法士などの専門家から教えてもらうと良いでしょう。
具体的なトレーニング方法は?
個々の状況によって最も適切なトレーニング方法や強度は変わる可能性がありますが、一般的に実施される骨盤底筋トレーニングの方法を紹介します。
(1) 骨盤底筋へ力を入れる感覚を掴む練習
1. 腟の中に指を入れ、腟内が狭まることを確認しながら骨盤の筋肉に力を入れてみましょう。
2. 排尿を止める、またはオナラを我慢するように、腟と肛門に最も近い部分の筋肉を絞るよう締め付けてみましょう。(ただし、トイレで実際に排尿を止めることは尿路感染症のリスクになるのでやめましょう。)
3. 上記の際に、腹筋、臀筋(お尻の筋肉)、大腿筋(太ももの筋肉)をなるべく使わないよう意識しましょう。
上記の練習で骨盤底筋をうまく収縮できるようになったら、以下のようなトレーニングを日常的に実施することが有効です。
(2) 日常的なトレーニング方法(一例)
1. 骨盤底筋を収縮させます。
2. 8〜10秒程度、筋肉を収縮させたままにします。(はじめのうちは3〜4秒くらいしか維持できないかもしれませんが、徐々に持続時間をのばしてみましょう。)
3. 骨盤底筋を完全にリラックスさせます。(筋肉を収縮させるのと同じくらい重要です。)
数週間から数ヶ月かけて、骨盤底筋をより強く・より長い時間収縮させてから、十分にリラックスさせるように心がけてみましょう。
他の運動と同じように、練習すれば徐々に強くなっていきますが、効果を実感するには日常的に長期間継続する必要があります。
近くの医療機関などに骨盤底筋トレーニングに詳しい理学療法士がいれば、効果的な方法を教わることができ、より安全で効率的なトレーニングができるようになるでしょう。
通常は、上記のトレーニング(骨盤底筋を適切に収縮させて、維持し、そしてリラックスさせる)を1セットにつき8~12回、できれば毎日3セット実施します。
トレーニングの効果をしっかり出すためには、少なくとも15〜20週間(4〜5ヶ月程度)は続ける必要があると考えられています。
なお、妊娠中の方では、妊娠初期からきちんと骨盤底筋トレーニングを続けることで、妊娠後期〜産後の尿失禁(尿漏れ)が起こるリスクを減らせることがわかっています。ぜひ、主治医に相談しながら実施してみてください。
骨盤底筋の強化にはどうしても時間がかかります。特に、骨盤底筋が弱っていたりダメージを受けていたりする場合は、無理のないよう注意しながら根気よく続けることが大切です。
参考文献
1. UpToDate. Pelvic floor muscle exercises.