ロシア軍の巨大な3トン爆弾に装着したUMPK滑空誘導キット大型版が初公開
7月14日、ロシア国防省はRuTube(YouTubeを真似したロシアの動画サイト)でFAB-3000航空爆弾にUMPK滑空誘導キットを装着したものによる実戦映像を初公開しました。3トンもの超大型航空爆弾を滑空誘導爆弾化したものは世界で初めての装備となります。(※通常サイズの航空爆弾は250~500kg級が一般的で、大きくても1トン程度まで)
FAB-3000+UMPK-3000滑空誘導爆弾
「汎用滑空修正モジュール」の頭文字4つでУМПК(UMPK)という略称になります。3トン爆弾用UMPK(UMPK-3000と仮称)は、既に残骸が回収済みの1.5トン爆弾用UMPK(UMPK-1500と仮称)と基本構造が同じです(ただし大きさは異なっているので1500と3000で共用はできないと見られる)。なお通常サイズ爆弾用UMPK通常型とUMPK-1500/3000は基本構造が異なっています。
関連:ロシア軍の滑空誘導爆弾キットUMPK-1500(1.5トン爆弾用)の不発弾から構造を推定(2024年3月16日)
各国の滑空誘導爆弾の動翼
- (露)UMPK通常型:水平尾翼(全遊動式)、動翼2枚
- (露)UMPK-1500:主翼(エルロン)+V字尾翼(全遊動式)、動翼4枚
- (露)UMPK-3000:主翼(エルロン)+V字尾翼(全遊動式)、動翼4枚
- (米)JDAM-ER:X字尾翼(全遊動式)、動翼4枚
- (韓)KGGB:主翼(※フラッペロン)、動翼2枚
※KGGBの動翼は国防科学研究所(大韓民国)の説明図ではフラッペロンと書かれている。
なお今回のロシア国防省公式動画の冒頭のサムネイル画像はUMPK滑空誘導キットが装着されていない3トン爆弾「FAB-3000 M54(ФАБ-3000 М54)」の素の状態です。
UMPK滑空誘導キットを未装着のFAB-3000航空爆弾(後部)
空気抵抗低減用の風帽を先端に装着したFAB-3000航空爆弾
UMPK-3000滑空誘導キットの主翼のエルロン
Su-34戦闘爆撃機の機体中央に懸吊したFAB-3000+UMPK-3000
Su-34戦闘爆撃機からFAB-3000+UMPK-3000の投下
※投下後に主翼を展開しロールして上下を反転して滑空飛行姿勢に入るUMPK-3000。通常サイズのUMPKでは後部の水平尾翼(全遊動式)だけでロールしてから主翼を展開するが、装着する爆弾が非常に大きく重いUMPK-1500/3000は主翼にエルロンが付いており、これを用いてロールする為に主翼展開が先になる。FAB-1500/3000爆弾はあまりに重過ぎるので、モーメントの大きい主翼先端付近のエルロンで空力操縦しないと素早いロールに必要な応答量が足りないため。
UMPK-3000の主翼展開状態
滑空飛行中のFAB-3000+UMPK-3000滑空誘導爆弾
- 3トン爆弾「FAB-3000 M54」
- UMPK-3000滑空誘導キット
- 風帽を爆弾の先端に装着
別のロシア国防省動画よりUMPK-3000(出典:Военный Осведомитель)
戦闘機に爆弾を装着→UMPKを装着→風帽を装着の順番
ロシア軍の巨大な3トン爆弾とUMPK滑空誘導キットの組み合わせは大変な脅威となります。威力が桁違いに大きく、それでいてミサイルよりもコストが安く、数十km程度の射程を持っているので限定的ですがスタンドオフ兵器として使用が可能です。
ウクライナ軍がこれに対抗するためには、パトリオット防空システムの長射程のPAC-2迎撃ミサイルやF-16戦闘機などで発射母機の敵戦闘爆撃機を追い払う必要があります。パトリオット防空システムが良い位置に就いていれば滑空誘導爆弾そのものをPAC-3迎撃ミサイルで撃墜することも可能ですが、最前線付近に布陣する必要があり今度はパトリオットが敵の攻撃に晒されてしまうジレンマが生じます。