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避難生活で心配「エコノミークラス症候群」予防のポイントと対策は

市川衛医療の「翻訳家」
イメージ(写真:アフロ)

台風19号により、東北や関東甲信越などで幅広く被害が報告されています。

とつぜんの災害で、避難生活を余儀なくされている方が多くいらっしゃることに心が痛みます。急に環境が変わることで、体調を崩しやすくもなります。

厚労省による、避難所生活での健康管理に関するガイドライン(※)では、避難生活で気を付けたい健康リスクとして「感染症の流行」「粉じんの吸引」「エコノミークラス症候群」「低体温症」などが挙げられています。

ここでは、ガイドラインで触れられている健康リスクのひとつ「エコノミークラス症候群」について予防のポイントと対策をまとめました。

(ガイドラインへのリンクはこちら

エコノミークラス症候群とは

長い時間、同じ姿勢で座ったりすると血行が悪くなり、血液が固まって「血栓」ができやすくなります。もし、何かの拍子に血栓が剥がれると、血管を通って肺に達し、大切な血管をふさいでしまうことがあります。

専門的には「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」と呼ばれますが、飛行機のエコノミークラスで長く同じ姿勢で座った人がなるケースがあるので「エコノミークラス症候群」として有名になりました。

避難所や車中の生活では、どうしても同じ姿勢を長い時間とらざるをえない状況が増えます。そのため、大きな災害の際にはこの病気を発症するリスクが高まります。

平成16年の新潟県中越地震では、少なくとも 11 名が発症し、うち 6名が亡くなったとされています。また東日本大震災の直後から1か月程度の間に行われた調査では、避難した方の6.3~15.5%に血栓ができていることが判明しました。

特に「車中泊をしている」「足にケガ」「活発に動けない」などの特徴がある方では、13.4~42.1% に血栓が見つかっています。

血栓ができてしまってからも、お薬の内服などによってはがれる前に治療すれば大事になるのを防げるのですが、被災直後は十分な医療が受けられないケースも多いかもしれません。まずは血栓を「予防」することが大切です。

エコノミークラス症候群 予防のポイントは

・定期的に体を動かす

・こまめに水分をとる

・トイレをがまんしない

・ゆったりとした服を着る

・胸の痛みや、片側の足の痛み・赤くなる・むくみがある場合は早めに救護所や医療機関へ相談する

(出典:厚労省ガイドラインなど)

ただ「体を動かすことが大事」といわれても、夜間や雨天の際などは、体を動かすことが難しいケースもあります。

またペットなどの事情で、やむを得ず車内での生活を余儀なくされるかたもいらっしゃるかもしれません。

下記のサイトでは、椅子に座ったままでできる体操が動画で紹介されています。体を動かして血行を高めることは、エコノミークラス症候群の予防にとどまらず健康全般に良い影響がありますので、可能な方はためしてみてください。

JAL インフライト体操

もちろん被災直後の混乱した時期で、お一人お一人がおかれた状況によって出来ること・出来ないことがあると思います。また、お疲れのところご無理はなさらないようお願いいたします。できる範囲で対策をとっていただければ幸いです。

(参考資料)

避難所生活を過ごされる方々の健康管理に関するガイドライン(厚生労働省 平成23年6月3日)

医療の「翻訳家」

(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。

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