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【10月1日から】ヒルドイドなど医薬品の負担増・何が対象?いくら上がる?なぜ?#専門家のまとめ

市川衛医療の「翻訳家」
厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」より

10月1日(火)から、約1100品目の医薬品で患者負担が増額になります。後発医薬品(ジェネリック医薬品)への切り替えの促進が目的で、いま「子ども医療費無料化」などの対象になっている場合でも、この負担増部分は支払いを求められます。主に対象となる医薬品はどんなものか、いくらくらい負担増となるのか、制度移行期の懸念点などをまとめました。

ココがポイント

「後発医薬品」いわゆる「ジェネリック医薬品」を選ばず「先発医薬品」を希望した場合、自己負担額が引き上げられます。
出典:BSN新潟放送 2024/9/19(木)

増える負担額(選定療養費)は、先発薬と後発薬の差額の4分の1相当(図は厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」より)
増える負担額(選定療養費)は、先発薬と後発薬の差額の4分の1相当(図は厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」より)

(医療用塗り薬ヒルドイドの場合)クリームタイプ100gのものが3割負担で現在555円から10月以降は813円になる
出典:日テレNEWS NNN 2024/4/22(月)

患者さんが長期収載品の継続を希望した場合、平均で一人当たり年間608円の負担増となる可能性があります
出典:日本システム技術「2024年10月施行 先発医薬品(長期収載品)の選定療養化に関する事前影響調査」

10月より始まる長期収載品の選定療養、医師の8割以上が「説明できない」
出典:日経メディカル 2024/9/24(火)

エキスパートの補足・見解

10月1日(火)からの変更のポイントを以下にまとめました。

・負担増になるのは、後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるのに先発薬(特許の切れたオリジナル医薬品)を使うケース

・増える負担(選定療養費)の金額は、先発薬と後発薬の差額の4分の1

医師が「治療上必要」と判断した場合はかからない。ただし「単なる希望」「使いごごち」ではNG

1人あたりの負担増額は平均で年間600円程度(日本システム技術試算)

今回の対象となる医薬品のうち、シェアの2割程度を医療用塗り薬「ヒルドイド」が占めると試算されています(※)。同薬は美容目的での利用や転売が指摘されており、制度変更の影響が注目されます。


なお後発薬に関しては近年、メーカーの規則違反などにより供給が滞る事態が頻発しています。背景として薬価の引き下げすぎ(メーカーが、原料高騰や人件費などのコストを転嫁し切れていない)が指摘されており、国には後発品への切り替えの促進と同時に、供給の安定化への取り組みが求められます。

また医療現場では、制度変更について「患者に説明しきれない」という声が多く出ており、変更後すぐは混乱もあるかもしれません。いま定期的に医療機関を受診されている方などは、次回の受診前に、今回ご紹介した情報などを参考にしてみてください。

※…選定療養費の合計金額のシェア率

医療の「翻訳家」

(いちかわ・まもる)医療の「翻訳家」/READYFOR(株)基金開発・公共政策責任者/(社)メディカルジャーナリズム勉強会代表/広島大学医学部客員准教授。00年東京大学医学部卒業後、NHK入局。医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。19年Yahoo!ニュース個人オーサーアワード特別賞。21年よりREADYFOR(株)で新型コロナ対策・社会貢献活動の支援などに関わる。主な作品としてNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」「医療ビッグデータ」(テレビ番組)、「教養としての健康情報」(書籍)など。

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