北海道地震から一週間、ラーメン店は今。
道内全域が「ブラックアウト」した北海道地震
最大震度7を記録した「北海道胆振東部地震」が発生してから13日で一週間が経った。死者は厚真町など5市町で計41人となり、避難者は8市町の1,592人となっている。大規模な土砂崩れが起きた厚真町などでは停電や断水が続いているほか、安平町、むかわ町、日高町の3町では12日午後8時現在も避難指示が出ているという(参考記事:読売新聞 2018年9月12日)。
地震直後、道内のほぼ全域が停電する「ブラックアウト」に陥った北海道だが、戸数ベースでは99%以上で解消と大半の地域で電力供給は復旧している。停電などの影響で稼働を停止していた企業の生産活動も再開し始めたが、ガソリン不足による流通の停滞などの影響で飲食店の営業は不安定なところも少なくない。現在、札幌市内などのラーメン店はどのような状態なのかを聞いた。
地域によって異なる被害状況
札幌市内で『麺処まるは BEYOND』『麺処まるは RISE』などを経営する長谷川凌真さんは、店舗によって被害状況が異なると語る。「南区にある『RISE』は無事でしたが、豊平区にある『BEYOND』は丼などが落ちて散乱していました。北海道は停電に対しての免疫がないので、地震直後の市内の道路状況は悲惨でした」
地震直後にガソリン不足で物流が停滞したことにより食材が不足したのは飲食店だけではない。「地震の次の日は残っていた食材で営業が出来たのですが、町には食材が不足していたこともあり多くのお客様が来て下さり、とても喜んで頂けました。その次の日には食材がなくなってしまったので営業が出来ませんでした。結果として2日間営業を休みましたが、現在は取り敢えず営業が出来ています」(麺処まるは 長谷川さん)
富良野市と千歳市、中国上海に合計6店舗展開する『富良野とみ川』の富川哲人さんも、富良野と千歳の違いを語る。「富良野は震度4の横揺れだったため被害はほとんどありませんでしたが、震度6の縦揺れだった千歳市にある新千歳空港店では、丼の破損や寸胴をかけていたローレンジの足が折れたり、落下によるビールサーバーの破損などがありました。被害はそれほどではありませんが、施設のセキュリティの関係で営業再開が遅れたことが痛いです」
富良野市内の店では電気は8日の夜まで供給されなかったため、その間大型冷凍庫などは発電機を使い稼働させていたという。「地元の野菜をはじめ食材は問題なく入荷出来ているのですが、富良野への観光客が激減しており売上げは例年の半分ほどです。北海道はまだまだ繁忙期なのですが、観光客など北海道に人が戻ってくるのかが心配です」(富良野とみ川 富川さん)
「物流が麻痺して食材届かず」ススキノには多くの人が
札幌の中心地、ススキノで『らーめん札幌 直伝屋』を経営する大石敬さんも物流の遅れが営業に響いたと指摘する。「インフラではガスや水道が大丈夫だったのが救いになってます。また電気も土日あたりから復旧したところが多く、覚悟していた一週間までかからなかったのは助かりましたが、ガソリンスタンドの行列が一番最後まで響いたかもしれません。輸送トラックなどがガソリンを入れられなかったのが物流の遅れにつながったと思います。当店ではある食材を使って土曜日から営業を再開しました。土曜日の時点では物流が麻痺しており必要な食材が届きませんでしたが、現在はほぼ平常通りに入荷しています」
震災2日後の土曜、ススキノには人も出ており大石さんの店にも多くの客がやって来たという。「土曜日は夕方4時までの営業を予定していましたが、食材切れで昼の2時位で終了しました。Twitterで営業時間を告知したこともあり客足は悪くはなかったです。夜の営業は本当は出来ないところでしたが、何とか追加で食材を調達出来たので、急遽8時半から午前2時まで営業しました。土曜日の夜にススキノに結構人が出ていたのにはちょっとびっくりしました」(らーめん札幌 直伝屋 大石さん)
節電による時短営業、外国人観光客の激減
JR札幌駅前の商業施設『ESTA』内にあるラーメン施設『札幌ら〜めん共和国』は、国内はもとより海外からも観光客が押し寄せる人気のスポット。道内の人気ラーメン店を中心に8店舗が営業しているが、一部食材などの入荷量が少ないものの営業そのものには支障がないという。しかしながら節電のために営業時間の短縮を余儀なくされている。
「9日の日曜日より時間を短縮して営業をしています。13日までは20時閉店ですが、14日からは22時までと通常営業を再開する予定です。現在は節電20%を目標に、入口の行灯などの消灯と通路のスポットライトの間引きをして営業しています。来週には水力発電所が一ヶ所稼働して節電も緩和される予定です」(札幌ら〜めん共和国 館長 沼田初さん)
沼田さんは外国人観光客などの激減を危惧している。「海外からのお客様は情報が早く敏感に反応しますので、前年と較べると40%ほどと集客にかなり影響が出ています。それでもまだ他の地域に較べると札幌は被害が少ない方なので、自分達でコツコツと頑張るしかないと、出店されているオーナーの皆さんと話しています」
地震の翌日に500円の「素ラーメン」を提供
札幌や東京、海外などにも店舗を持つ『麺匠 真武咲弥』では、電気がまだ通っていない地震翌日の7日に営業したという。「電気はダメでしたが水道とガスは通っていましたので、明るいうちはラーメンは作ることが出来るぞと、ある食材を使って素ラーメンを500円で提供しました。券売機が使えないこともあってお釣りもないようにワンコインで、食器を洗わずに済むようにイベント用の使い捨ての器を使ってお出ししました。午前11時から午後4時半まで220食を食べて頂けました」(麺匠真武咲弥 代表 奥村宗弘さん)
地震翌日の営業では、店の前には地元の人たちによる長い列が出来た。「札幌店がある西区の琴似はマンションなどが多い地域なのですが、マンションの場合は水道は問題がなくても停電時はマンション内に水が上げられず、結果として水道が出ないんです。水が出ない、温かいものが食べられないということで、地元の多くのお客様に喜んで頂けたのは良かったです」
奥村さんは取引のある製麺所にも感謝しているという。「当店では札幌の小林製麺さんにお世話になっているのですが、いち早く工場も稼働していたので滞りなく麺を納入して下さいました。東京の渋谷店でも使わせて頂いていて、通常は輸送業者が配達するのですが輸送業者が動けないということで、製麺所の方が車を使って直接東京の店まで麺を運んで下さったんです。こちらとしては非常時なのでどこかで麺を手配するからと言ったのですが、ご迷惑はかけられないということで。その想いがとても嬉しかったですね」
今回話を伺えたお店は幸いにも被害が少なく営業が出来ているところが多いが、被害の大きかった地域ではまだ営業が再開出来ていない店も少なくない。一日も早く北海道が元気な姿になることを願ってやまない。
※写真は筆者の撮影によるものです(出典があるものを除く)。