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妙技で危機救う堀江翔太、「走り続けると、結構、しんどい」と代表活動へは慎重。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真中央の堀江の視線に注目。圧力を受けても、グラウンドを幅広く俯瞰(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 ドレッドヘアの34歳が存在感を示した。

 

 2月2日、東京・町田GIONスタジアム。国内最高峰ラグビートップリーグのパナソニックは、キヤノンとの第4節の前半3分にフッカーの坂手淳史主将をレッドカードで欠く。

 坂手が突進した際の肘が相手の首より上の箇所に当たったことで、故意であるかないかに関わらず厳しく判定された。パナソニックは、残りの時間を相手より1名少ない状態で戦うこととなる。

 しかし、続く16分。フランカーのベン・ガンターに代わって入ったフッカーの堀江翔太は、「僕たちの仕事をやることは変わらないという話をしました」。各選手に声をかけ、通常運転を意識させる。

「14人になって焦って、自分たちのやらなければならないこと以外のことをするともっとチームが崩れるので、そこは注意して話すことはして、何とか結果が出てよかったと思います」

 前半35分には、敵陣10メートル線付近右でボールをもらうと相手タックラーをはじきながら左斜め前方にできた小道を持ち前のフットワークですいすいと前進。深い位置からサポートについたスタンドオフの松田力也にパスし、ビッグゲインを促した。

 以後もボールが繋がり、最後はスクラムハーフの内田啓介がフィニッシュして15-10と勝ち越し。堀江はこう振り返った。

「ボールが来て、(攻撃側の)枚数も足りないし、とりあえずポイントを作りに行ったという感じ。で、ガーンと(相手を)弾いたんで、そのまま走っていったらスペースがいっぱいあった。力也もそれに反応してくれて、そこ(松田の位置)にスペースがあるのがわかった。瞬時、瞬時の判断に、周りが反応してくれた感じのプレーでした」

 ワールドカップ日本大会に出た日本代表選手が計6名、出場する一戦が約1万人収容のグラウンドでおこなわれたとあり、公式入場者数は9120名を記録。日本協会の無料招待券は試合前の段階で無効とされていた。

 パナソニック、キヤノンは昨季のトップリーグでそれぞれ6位、12位。同リーグでの優勝回数はそれぞれ4、0回。さらに今季のパナソニックは、開幕前のキャンプで主力同士の連携を深めていたとあり開幕3連勝中だった。この日も南アフリカ代表インサイドセンターのダミアン・ディアリエンディらの活躍もあり51―17で快勝した。

 身長180センチ、体重104キロの堀江は、2009年に初の日本代表入りを果たし、3大会連続でラグビーワールドカップに出場。特に2015年のイングランド大会では南アフリカ代表などから歴史的3勝を挙げ、2019年の日本大会では初の8強入りを果たした。

 国際リーグのスーパーラグビーへも、日本のサンウルブズができる前の2013年から挑んでいる(オーストラリアのレベルズの一員として)。

 縁の下の力持ちが務めるフッカーに入りながら、ラン、パス、キック、タックルと各種プレーで質の高さを示す。プレーに参加する前の位置取りも絶妙だ。

 千両役者の堀江は、ロビー・ディーンズ監督と公式会見に出席。今後の代表活動への思いなども語った。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――試合直後にグラウンドで受けたインタビューでは「14人になった瞬間は、チームが焦っているようだった」という旨で話していますが。

「焦ってましたね。チームの状況は焦っていて。僕自身はグラウンド上で、それをどう抑えようかと話していた。『敵陣でやって、エキストラで動かなあかん奴は動かなだめやで』と。そしてハーフタイム、スタッフからのコールでどうアタック、ディフェンスを変えるかの話し合いができた。後半の方が落ち着いてシンプルにできたと思います」

――久しぶりに長時間、プレーした。

「しんどかったです。でもまぁ、自分のなかでは結構動けたという感覚はあるんですけど、それを決めるのは外側の人。外側の人が動けたら動けたと思うし、とろいな言われたらもっと頑張らなあかんなと思っています」

――パフォーマンスはよいように映った。コンディションの維持ができているのか。

「佐藤(義人)トレーナーのトレーニングをやり続けているので、コンディショニングはいいです。僕自身、主将を外れて(前回のワールドカップ終了後はパナソニックの主将だった)、メンタル的にも2016年の時みたいに『次の6月にジャパンがある…(という考え)』とかがない分、パナソニックに絞れているので。ガッキー(稲垣啓太)、(松田)力也という若い選手は『次(今年6月以降)にジャパンの大きな試合が控えている』というのは凄いと思います。僕自身、34歳で選ばれるかどうかわかりませんし、行くかどうかもわからない年なので。メンタル的に、いい状況なのかなと思います」

 質疑に応じるなか、現状での日本代表への捉え方について語った格好だ。

 日本代表は今年6月からウェールズ代表、イングランド代表と対戦。2023年のワールドカップフランス大会に向け、リスタートを切る。

――いまのお話を伺う限りでは、6月以降の代表ツアーへは…。

「いや、わかんないですし、おじさんですからね。ちょっと、(首脳陣も)それは若い選手を起用するだろうし、自分自身、そこに行って戦えるかどうかというのは、自分のなかで疑問なところなので、相手のためにどうのこうのと考えても…。トンプソン ルーク式が一番いいのかなと思っています」

――「自分自身、そこ(代表)に行って戦えるか」が「疑問」。なぜそう感じるのですか。

「そこらへんの、パッションだったりという部分があるかどうかが、微妙っすよね。2011年からトップに向けてずっと走り続けてきて、色んなラグビーチームを渡り歩いて自分を高めてきたんですけど、まぁ、そこまで走り続けると、結構、しんどいので、『日本代表のためにどうできるか』というのが情熱的にあるかどうかは、いまのところ微妙ですよね。いま、全くそういうことを考えてないんで。ということは、そういう情熱がないのかなと思いますね」

――お話を伺う限りでは、今年の春までに代表活動への「情熱」が沸き上がるかはわからない、と。

「いまのところ、パナソニックのことしか考えてないので。いつもならジャパンのことを考えながら…だったんですけど、いまは全然、考えてないので。いまのところは」

 今季限りの現役引退を表明したトンプソンは、2015年のワールドカップイングランド大会を最後に代表から退くと表明。しかし2017年6月のツアーで期間限定復帰を果たし、同日本大会開催年の2019年に正式にカムバックを果たしていた。

 堀江はワールドカップイングランド大会後の2016、17年には勤続疲労を覗かせていた。今回は自らの心身の状態を客観視し、国内リーグへの専念がベストと捉えているようだ。

 2月15日、埼玉・熊谷ラグビー場での東芝戦に先発出場する。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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