アトレティコはCLで勝ち上がれるか?フェリックスとカラスコの退団…シメオネの哲学に準じて。
スペイン勢が、欧州最高峰の舞台に挑んでいる。
2023−24シーズン、チャンピオンズリーグにスペインの5チームが参戦している。レアル・マドリー、バルセロナ、セビージャ、レアル・ソシエダ、そしてアトレティコ・マドリーだ。
■2強時代の刺客
スペイン国内の文脈で言えば、アトレティコは「2強時代」に風穴を開けられた唯一のチームだ。
過去10年で、2013−14シーズン、2019―20シーズンのアトレティコの優勝を除けば、ほかは全てマドリーとバルサがリーガのタイトルを分かち合っている。
そのアトレティコは今夏、セサル・アスピリクエタ(前所属チェルシー/フリートランスファー)、カグラル・ソユンチュク(レスター・シティ/フリー)、ハビ・ガラン(セルタ/移籍金400万ユーロ)を獲得。守備陣を重点的に補強して戦力を整えた。
ディエゴ・シメオネ監督が求めるのは「アクションサッカー」でも「リアクションサッカー」でもない。その両方を採り入れたスタイルだ。
アトレティコは昨季後半戦、怒涛の勢いで勝ち点を積み上げた。とりわけ、カタール・ワールドカップ終了後、リーガの24試合で16勝5分け3敗と圧倒的な成績を残している。
「今シーズン、プレシーズンの段階から、我々は方向性を模索してきた。昨シーズンの終盤の戦い方から遠く離れず、日々、それをピッチ上で体現して確かなものにしてきた。大事なのは、言葉ではなく、プレーであり、パフォーマンスだ」とはシメオネ監督の弁だ。
「名を馳せたポゼッション、現在の我々は、それと非常に紐づけられている。そこに関しては、求められてきたものでもある。もちろん、我々はシメオネ・アトレティコだ。なので、明瞭には分からないかも知れない。しかし、我々は間違いなく良いフットボールを見せている」
■アンカーの重要性
指揮官が手応えを感じているように、アトレティコは質の高いフットボールを披露している。大きかったのは、コケの本格的なコンバートだ。
【5−3−2】のシステムで、シメオネ監督はコケをアンカーで起用するようになった。コケがアンカーでプレーしている時、チームにダイナミズムがもたらされる。
またコケは頭が良い選手であるので、戦術に綻びが生じた際、ピッチ内で修正する能力を備えている。ただ、コケは31歳を迎えている。ゆえにクラブはこの夏のマーケットで彼の代役を探していた。
ピエール・ホイビュルク(トッテナム)、マルコ・ヴェッラッティ(アル・アラビ)を狙っていたが、獲得には至らなかった。シメオネ監督はカンテラーノのパブロ・バリオスの成長に期待を懸けている。
■選手の放出
一方で、アトレティコはこの夏にジョアン・フェリックスやヤニック・カラスコを放出している。
フェリックスに関しては、シメオネ監督と反りが合っていないのは明らかだった。
昨冬の移籍市場でチェルシーにレンタル移籍したが、その間、逆にシメオネ監督はフェリックス抜きで勝てるチームを作り上げ、自身の正当性を証明してみせた。今夏、バルセロナにレンタル移籍したフェリックスだが、すでにクラブ側には準備があったと言えるだろう。
他方、痛手となったのはカラスコの退団だ。欧州のマーケットが閉まった直後、サウジアラビアのアル・シャバブに移籍した。
フェリックスのポジションについては、アントワーヌ・グリーズマン、アンヘル・コレア、マルコス・ジョレンテといった選手で埋められる。しかしながらカラスコの代えは利かない。サムエル・リーノ、ロドリゴ・リケルメ、ガランがいるが、カラスコの「突破力」がないのは非常に痛い。
チャンピオンズリーグのような舞台では、一瞬で、勝負が決まってしまう。グループステージ初戦のラツィオ戦では、アディショナルタイムにCKから相手の守護神イバン・プロべデルにゴールを決められ、ドローを演じた。
「すべての大会で、タイトルが懸かっている。僕たちはこのユニフォームで勝利するというモチベーションに駆られている」
「僕はアトレティコのユニフォームを着て死ぬ気でタイトルを勝ち取りたいと思っている。大会に応じて、どのように望むべきかは理解している。その責任があるし、僕たちには素晴らしいチームがある。そのグループを非常に信頼している」
これはアルバロ・モラタの言葉である。
パルティード・ア・パルティード。試合から試合へーー。それがシメオネ監督の信念で、哲学だ。
そのフィロソフィーをもとに、シメオネ・アトレティコが悲願のビッグイヤー獲得を目指す。