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【アルバルク東京/ライアン・ロシター】心身両面でタフな本来の姿が戻っていることを認識できた琉球戦

青木崇Basketball Writer
東京が3度目のB1制覇を成し遂げるうえでのカギを握っているロシター(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 アルバルク東京へ移籍してからの2シーズン、ライアン・ロシターは不運な故障に見舞われるなど、自身が望むような結果をチームにもたらすことができなかった。2021-22シーズンは15試合欠場、昨季はレギュラーシーズンに55試合出場したものの、島根スサノオマジックとのクォーターファイナル第1戦で故障。第2戦以降は欠場を強いられ、チームがセミファイナルで千葉ジェッツに敗れるのをベンチから見届けてのシーズン終了となった。

「過去のことはまったく気にしていない。自分自身をどうケアするか、どうトレーニングするか、どんな食事をするか、どう回復させるかはわかっている。故障は不運なことだし、より重要なのはそのタイミングが悪かったことだ。最低な気分になったけど、そんなことを考えても仕方ない。プレーするだけだ。何が起ころうとも、起こるものは起こるものなんだ」

 こう語るロシターは今季、37試合欠場することなくスターターで出場しており、27分12秒の平均出場時間で9.9点、9.5リバウンド、4.2アシストを記録。2013年に来日してからすでに11年、34歳となったベテランは、31勝7敗で東地区1位を堅持する東京において個人スタッツの数字以上に大きく貢献している。

 先週末の琉球ゴールデンキングス戦を取材して感じたのは、ロシターは良好なコンディションでプレーしていることだ。センターのアルトゥラス・グダイティスが欠場した影響もあるとはいえ、延長で決着がついた2月3日の1戦目の出場時間は39分12秒。2戦目は31分19秒まで減ったものの、出場時間の大半がフィジカルの強さがB1屈指のアレン・ダーラムとのマッチアップだった。

 ダーラムは身長198cmで、図体の大きい男を意味する“ハルク(HULK)”というニックネームがあるほどの強靭さがある。たとえマッチアップする相手の身長が210cmでも、パワープレーからペイント内で得点できる術を持つ。また、ボールハンドリングもうまく、ドライブで得点機会をクリエイトできるということでも、対戦相手からすれば非常に厄介な外国籍選手だ。

 ロシターはそんなダーラムに対してフィジカルで互角に渡り合い、ゴール下まで攻め込まれたとしても、腕をしっかり伸ばして簡単なショットを打たせないディフェンスを見せていた。ダーラムの力強いドライブに十分対応できていたのは、第1戦のフィールドゴールが13本中4本成功、トータル12点に限定させたことでも明らかだ。

 ダーラムは第2戦で21点を記録したものの、4Qは7本中1本のフィールドゴール成功による2点のみ。東京はゾーンディフェンスで対応する時間が多かったにしても、残り1分37秒からの局面でロシターは、ダーラムの身体を使ったバックダウンでのアタックをしっかり止めていた。

 ダーラムの得点は、岸本隆一の3Pショットがミスになったタイミングでリバウンド争いで内側のポジションに入って決めた1分18秒のティップイン。26点差を逆転することに成功していた東京にとって、同点に追いつかれる痛恨の失点だったのは間違いない。

 残り8.4秒にヴィック・ローが入れた2本のフリースローが決勝点となり、東京は74対76で琉球に敗戦。ロシターは14点、9リバウンド、3アシストと奮闘したものの、負けるべくして負けた試合だったと感じている。

「プレーオフなら3日連続で試合をすることになる。疲労を言い訳にはできない。準備万端で試合をスタートしなきゃならない。自分のコンディションはいいと思っている。試合の入りでメンタル面が悪かった」

 B1最高成績の三遠ネオフェニックスとの差は2ゲームになったが、セミファイナルまでホームゲームを開催できる順位を維持している東京。攻防両面でオールラウンドな能力を発揮できている今季について、ロシターはこう語っている。

「アグレッシブにやり続けることとチームにとってベストなプレーを作ることだ。我々には得点できる選手たちがたくさんいる。セバ(スチャン・サイズ)、(安藤)周人だけでなく、ショットを決められる選手がいる。アドバンテージを作り出し、正しいプレーをすることを心がけている」

 今季の東京が強い理由の一つは、平均で2桁得点を記録している選手が3人ながらも、7点以上が6人、11分以上プレーしている選手が10人という選手層の厚さだ。宇都宮ブレックスで過ごした20代の頃と違い、今のロシターは毎試合得点源としてチームを牽引する必要がない。上記のコメントを象徴するようなデータがある。ロシターが5アシスト以上を記録した場合、今季の東京は11戦全勝なのだ。

 レギュラーシーズンは23試合残っており、B1を制覇するにはチャンピオンシップで6勝しなければならないなど、シーズンはまだまだ中盤。ロシターの5アシスト以上を記録した試合の不敗神話は、今季中に途切れるかもしれない。

 しかし、ロシターの存在が東京にとって大きな意味を持っていることは、アルバルカーズの人たちもBリーグファンの多くが認識しているはず。東京が3度目となるB1制覇を成し遂げるためには、ハードワークと賢いプレーでチームを牽引できるロシターが、ケガなくチャンピオンシップに臨めるかがカギになるだろう。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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