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【半澤凌太】仙台89ersに移籍したことは、飛躍への第一歩を踏み出す絶好のチャンス

青木崇Basketball Writer
仙台で飛躍が期待される半澤 写真提供/青森ワッツ(TOHOKU CUP)

 半澤凌太は福島南高時代から将来を嘱望され、筑波大の1年生だった2018年にU18日本代表に選ばれ、河村勇輝や富永啓生と一緒にアジア選手権で戦った経歴を持つ。京都ハンナリーズを1シーズン在籍で自由契約となった後、プロ4年目は仙台89ersでプレーすることになった。

 昨季は10試合の先発を含む51試合に出場したものの、12分27秒のプレータイムで平均2.7点という数字に終わった。192cm、95kgというフィジカルなプレーに対応できる体格に加え、非凡な運動能力を持つことから、半澤はディフェンスでガードやスモールフォワードの外国籍選手にマッチアップを任せることも可能。しかし、B1で活躍の機会を増やすには、オフェンスでの貢献度を上げることが必要な選手なのだ。

 そんな半澤にとって仙台への移籍は、飛躍への第一歩を踏み出す絶好のチャンスかもしれない。青森で開催された東北カップでは、準決勝の山形ワイヴァンズ戦、決勝の秋田ノーザンハピネッツ戦でいずれも先発。それもスモールフォワードではなく、シューティングガードのポジションで起用されたのである。仙台の落合嘉郎コーチは、半澤を先発で起用している理由をこう説明した。

「彼のディフェンス力はベースにあるもので、僕らが期待していることはオフェンスの状況判断とフィニッシュするところ。正直なことを言えば、やはり点数をとってほしいし、日本人選手の得点力は僕らにとってキーになるところです。彼を2番ポジションで使うことでもっとピック(&ロールのユーザー)をやったり、スクリーンを使うこととか、トランジションの中で彼が点を取りに行くシチュエーションを作ること、ビッグや外国人選手を活かしたりとか、彼が中心になるような組み立てをしたいと思っています」

 東北カップでの半澤は、山形戦が21分9秒で7点、秋田戦が27分26秒で6点、7リバウンドを記録。しかし、数字以上に大きな意味があったのは、2試合とも試合終盤の大事な局面でコートに立っていたことだ。ゲームに出なければ選手は成長しないという考えを持つ落合コーチが、半澤に大きな期待を寄せている証と言えよう。

 もちろん、半澤自身もプロ選手としてキャリアで大きな変化が起きるかもしれないと認識している。山形との準決勝後、自身の現状を次のように語った。

「チームが変わったことですべてが変わり、役割もバスケットの内容もカラーもそうです。チャンスをもらっている中でそれを活かしきれてないという部分が自分の中にあって、プレシーズンが3試合終わって、天皇杯を入れると最大で残り4試合ですけど、やっていかないと問題点は見つからないし、それを練習で直すことができると思うので、もっとアグレッシブにやっていきたいです」

 201cmのヤン・ジェミンが先発のスモールフォワードということもあり、シューティングガードで起用される半澤は、オフェンスへの関わり方を練習とプレシーズンゲームを通じて学び続けている最中。昨季の成功率が25.4%だった3Pショットの精度を上げることなど、新しいポジションに順応していくことは、半澤にとって大きなチャレンジになる。

「ボールを持つ時間や持ち方が変わりました。前は(だれかに)作ってもらってキックアウト(でショットを打つ)という感じだったんですけど、ハンドオフでボールをもらったり、ピックを使ったりと逆の立場になったりしたので、そこをやるにあたって学ばなければならないことがたくさんあります。課題もいっぱいあるので、やりながら消化していくというか、一つ一つクリアしていかなければならないと思っています」

 シーズンの経過とともにBリーグがレベルアップし、B1選手として長いキャリアを築くのはますます難易度が上がっている。シーズンオフになると選手移籍のニュースが数々出る中、京都から仙台に移った半澤にとっては、プロ選手としてターニングポイントのシーズンになりそうだ。

「本当に準備してきたつもりですけども、まだまだ納得いくパフォーマンスとかも一度もできてない。準備しないでできることってほぼないと思うので、もっともっと準備をしっかりしたい」

 よりハングリーになった半澤の活躍は、仙台がチーム史上初となるB1チャンピオンシップ進出を果たすために欠かせない要素の一つと言っていい。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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