グーグル快挙 「OK Google」をルノー・日産・三菱自のクルマに
米グーグルと、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の企業連合は今年9月、次世代車載情報システムの開発や、車両への搭載で提携した。
Android、AIアシスタント、アプリ、サービスを標準装備
これにより、グーグルのOS(基本ソフト)「Android」は、3社連合が今後、開発・販売する自動車に搭載されるようになる。
これに伴い、地図アプリ「Google Maps」によるナビゲーションや、「Google Play」ストアのアプリといった各種サービスも顧客に提供される。
また、AIアシスタントサービス「Google Assistant」を利用し、電話、メール、検索、エンターテインメント・コンテンツの操作、車両機能の管理なども可能になるという。
この提携は、2005年より自動車分野への進出を進めてきたグーグルにとって、快挙だと米メディアは伝えている。
ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社が、2018年1〜6月に販売した乗用車の合計台数は553万8000台で、独フォルクスワーゲンを上回り、上半期として2年連続で首位となった。
3社連合は、2022年の終わりまでに年間1400万台以上の販売を目指している。そして、これらの幅広い自動車に、グーグルのプラットフォームや、アプリ、サービスが導入されるとしている。
グーグルなどは、今回の提携の詳細について明らかにしていない。
だが、3社連合の計画には、新型ゼロ・エミッション電気自動車(EV)や、自動運転技術、クラウドを使った遠隔サービスなども含まれており、これらの分野でグーグルが何らかの形で参加する可能性もありそうだ。
テクノロジー企業との提携に消極的な自動車大手
米ウォールストリート・ジャーナルによると、これまで大手自動車メーカーは、車載情報システムなどの分野で、グーグルやアップルなどの米テクノロジー大手と提携することに消極的だった。
その理由はいくつかあるが、そのうちの1つは次のようなものだという。
スマートフォンなどと同様に、情報システムの提供者は、利用者のデータを集めることが容易になるが、それが将来、ビッグビジネスになる可能性がある。自動車メーカーはこの分野でその主導権を、テクノロジー大手に譲り渡したくないと考えている。
自動車メーカーがテクノロジー大手に救いを求める
一方で、自動車本体の差異化に苦慮しているメーカーは、車載システムの利便性向上に活路を見いだしているという。
ただ、消費者は、使い慣れたスマートフォンのような利用体験を求めている。そうした中、自動車メーカーにとって、スマートフォンOSのような使い勝手の良いものをつくることは至難の業と、ウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
米国で大きな影響力を持つ消費者情報誌コンシューマー・リポートは、同誌の基準に満たない車載エレクトロニクス製品を搭載する自動車を推奨していない。
また同誌は、最近、車載情報システムの評価も行っており、運転の妨げとなる使い勝手の悪いシステムを公表している。
今回、大手3社連合がグーグルと提携した背景には、こうした消費者嗜好の変化、あるいはスマートフォンの普及がここまで進んだ昨今の市場環境があるのかもしれない。
今後、同様のパートナーシップが、別の自動車メーカー、別のテクノロジー大手との間で結ばれても、おかしくない状況になってきた。
- 図1 AIアシスタントサービスの利用実態調査:クルマでの利用が最多(インフォグラフィックス出典:ドイツ・スタティスタ)
- (このコラムは「JBpress」2018年9月20日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)