田中将大は161億円に見合った働きができたのか?
田中将大の8年ぶりとなる日本球界復帰が発表された。
メジャーで7年プレーして、78勝45敗、防御率3.74という成績を残した田中は、7年総額1億5500万ドル(約161億円)の契約に見合った働きができたのだろうか?
メジャー投手大型契約トップ10
1.ゲリット・コール(ヤンキース)9年3億2400万ドル(2020-28)
2.スティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)7年2億4500万ドル(2020-26)
3.デビッド・プライス(レッドソックス)7年2億1700万ドル(2016-22)
4.クレイトン・カーショウ(ドジャース)7年2億1500万ドル(2014-20)
5.マックス・シャーザー(ナショナルズ)7年2億1000万ドル(2015-21)
6.ザック・グレインキー(ダイヤモンドバックス)6年2億0650万ドル(2016-21)
7.ジャスティン・バーランダー(タイガース)7年1億8000万ドル(2013-19)
8.フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)7年1億7500万ドル(2013-19)
9.CC・サバシア(ヤンキース)7年1億6100万ドル(2009-15)
10.田中将大(ヤンキース)7年1億5500万ドル(2014-20)
10.ジョン・レスター(カブス)6年1億5500万ドル(2015-20)
*カッコ内のチーム名は、契約を結んだときの球団
田中の契約は現在でも先発投手のトップ10に入る超大型契約で、当たり前だが田中以上の契約を手にした投手は全員がリーグを代表する投手ばかり。
MLBの収入増で(コロナの影響が出た今オフを除く)近年は選手の年俸も右肩上がりだが、田中が契約を結んだ2014年開幕前の時点だと、田中の契約は投手として歴代5位に入るものだった。
ヤンキースは譲渡金(ポスティング・フィー)として楽天に2000万ドルを払っているので、田中への合計投資額は1億7500万ドルになる。
投資額が大きかっただけに、田中に対する期待度は非常に高く、その分だけハードルは高かった。
2014-20 勝利数トップ10
1.ザック・グレインキー 102勝44敗
1.マックス・シャーザー 102勝48敗
3.クレイトン・カーショウ 98勝30敗
4.ジョン・レスター 93勝55敗
5.ゲリット・コール 91勝48敗
6.ジャスティン・バーランダー 89勝52敗
6.リック・ポセーロ 89勝75敗
8.ジェイク・アリエタ 86勝52敗
9.コーリー・クルーバー 85勝48敗
10.スティーブン・ストラスバーグ 83勝40敗
10.JA・ハップ 83勝50敗
14.田中将大 78勝46敗
田中が7年間で挙げた勝利数は78勝で、これは同期間ではメジャー14位の成績。1位タイのグレインキーとシャーザーとは24もの差がある。
メジャー14位の勝ち星はそれだけをみれば立派だが、年俸を考えると「物足りなさ」を感じてしまう。
メジャー7年間での最高が2016年の14勝で、15勝の壁を超えられずに、爆発的な活躍をみせたシーズンはなかった。その一方で、短縮シーズンだった2020年を除く、メジャーでの6年間全てで二桁勝利を記録した安定感は非常に高く評価できる。この6年間全てで二桁勝利を記録した投手はグレインキー、シャーザー、レスター、ストラスバーグ、ハップ、そして田中の6投手しかいない。
2014-20 投球回数トップ10
1.マックス・シャーザー 1338.1イニング
2.ザック・グレインキー 1269.1イニング
3.リック・ポセーロ 1227.2イニング
4.ジョン・レスター 1222.1イニング
5.ジャスティン・バーランダー 1216.0イニング
6.フリオ・テヘラン 1179.2イニング
7.ジェイコブ・デグロム 1169.2イニング
8.ホセ・キンタナ 1158.2イニング
9.トレバー・バウアー 1156.2イニング
10.クレイトン・カーショウ 1153.0イニング
26.田中将大 1054.1イニング
メジャー移籍後は大きなケガもなかった田中だが、規定投球回数に達したのは3度だけと半分にも満ちていない。移籍した最初の2年間は右肘の痛みに悩まされて、1年目の2014年が20先発で136.1イニング、15年は24先発で154.0イニングとフル回転できなかった。
それでも、トミー・ジョン手術を避け、PRP療法を選択したのは大正解だった。15年オフに右肘の骨片を取り除く「軽い」手術を受けたが、それ以降は4年間で3度規定投球回数に達する働きを見せた。
2014-20 投手WARトップ10
1.マックス・シャーザー 40.0
2.クレイトン・カーショウ 35.4
3.ジェイコブ・デグロム 34.2
4.クリス・セール 33.4
5.コーリー・クルーバー 30.9
6.ジャスティン・バーランダー 28.7
7.ゲリット・コール 27.8
8.ザック・グレインキー 27.4
9.スティーブン・ストラスバーグ 26.0
10.カルロス・カラスコ 23.4
19.田中将大 19.0
選手の貢献度を表す指標であるWAR(ファングラフ版)を見ると、過去7年間で田中は投手として19番目、19.0を記録した。トップのシャーザーの半分以下であり、ここでも「物足りなさ」を感じさせてしまう。
田中の適正価格は1億5080万ドル
メジャー屈指の契約をもらいながらも、メジャー全体でトップ10に入るような活躍はできなかった田中だが、それだけで「期待外れ」の烙印を押すことはできない。
データ専門サイトの「ファングラフ」では、WARに基づいた選手の適正価格を算出しているが、それによると田中のメジャー7年間の適正価格は1億5080万ドルとなり、ヤンキースが投資しか1億5500万ドルとの差は420万ドル、年間にすれば60万ドルでしかない。田中は年俸に見合っただけの働きをしたことをデータは示している。
あのヤンキースで7年間で4度も開幕投手に選ばれ、チームを5度もプレイオフに導いた。
ポストシーズンでは5勝4敗、防御率3.33だったが、大不調だった2020年を除けばポストシーズンの防御率は1.76と大舞台での勝負強さを発揮した。しかし、球団、ファン、本人の誰もが望んだワールドシリーズの舞台に足を踏み入れることはできなかったことが一番の心残りだろう。
入団当初の期待度が高かっただけに、田中が期待に応えた活躍ができたとは言い難いが、161億円の高額契約に見合った働きはしたようだ。