Yahoo!ニュース

ペットサロンに預けた愛犬が死亡...悲劇を生まないために飼い主ができることは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:PantherMedia/イメージマート)

福岡県北九州市で、飼い主が訓練のためにペットサロンに預けた愛犬のシェパードが死亡したという報道がありました。飼い主は、しつけのために預け賢くなって帰ってくると思っていたら、サロンでなきがらになっていて、なぜこんなことになったのかと悲しい思いで憤っていることでしょう。シェパードのご冥福をお祈り申し上げます。

実際、大型犬のシェパードは、訓練が必要なことが多いです。飼い主が下手に訓練をして、人や犬に危害を及ぼすことがあるとよくないので、子犬の頃から、専門家にしっかりと教育してもらうことが大切です。

亡くなったシェパードの飼い主は、それを知っていたからペットサロンに預けていたのでしょうけど、結果、このような悲劇に遭ったのです。

今後、このようなことが、起こらないように飼い主が注意すべきことを考えていきましょう。

なぜ、ペットサロンに預けたシェパードは亡くなったか?

しつけのために預けた愛犬が、なぜ、このようなことになったのかを見ていきましょう。

写真:アフロ

 その証言によると、飼い犬は、ドッグランで遊んで泥だらけになり、この従業員と生徒2人の計3人でシャンプーを始めた。そこに経営者が来て、「しつけ」だとして、犬の首輪を直接シンクの手すりにつなぐよう指示し、犬が嫌がって首輪を抜くと、押さえ付けて再びつなぎ、頭から水をかけることを繰り返しさせたという。犬は、窒息したように一瞬気を失い、自力で立てなくなった。

(略)

犬の解剖に出して毛を剃ってもらったところ、足の甲や脇に打撲の跡のような青あざができていたともいう。

「過剰なしつけで愛犬が死んだ――飼い主が「虐待」告発 ペットサロン経営者は反論も、自治体・専門団体が調査へ」より

要約すると、シェパードは、ドッグランで遊んで汚れたので、サロンのスタッフがシャンプーしたそうです。そのとき、やってきたオーナーに叩かれたことが原因なのか、その後、動物病院で何かを嘔吐したので、窒息死をした疑いがある、ということです。

そして、犬を解剖して被毛を剃ったら、打撲のような青あざがあったということなのです。蹴ったり、叩いていたりしていた可能性があるようですね。

シェパードをちゃんと「しつけ」ないと人や犬などに危害を加えて、命の危険になることは、理解できます。それでも、暴力を振るうなどのしつけをしていると、犬も凶暴になりますし、暴力だけでしか制することができない犬になる危険性もあります。

犬の行動学という学問があり、それで、犬をどのようにしつけるのがよいかが、研究されています。

もちろん、人のように言葉で全てを理解させることは、難しいですが、アイコンタクト(視線と視線をあわせること)をとりながら、コマンドを言うと犬もわかってくれます。

たとえば、リードをつけて、犬の行きたいところに行こうとしたときに軽くリードを引っ張ると、犬はよくないとわかります。

その反対に、よい行動をしたときに、褒めてご褒美にオヤツなどを与えて、人間社会や犬社会の掟を気長に教えることができるのです。

捜査の協力など、人のために働いてくれている警察犬のシェパードがいます。言うことを聞かないからといっていまの時代は、訓練士は暴力を振るっていないと思います。では、このような悲劇に遭わないために、どうすればいいのか、考えてみましょう。

ペットサロンの選び方

写真:アフロ

ぺットサロンに対しては、このような事故が起きないように、気をつけてもらうことは大前提です。

それでも中には、今回のようなペットサロンがあるのです。ペットをサロンに預けてしまうと、中でどのようなことが行われているか、わからないので、飼い主も信頼できるところなのかを十分に気をつけないといけないですね。

・ペットサロンは、動物取扱業に登録する必要がある

動物の販売、ペット美容(トリミング)、ペットホテル、ペットシッター、老犬老猫ホームなどを営む場合には、「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づき、第一種動物取扱業の登録と動物取扱責任者の設置の義務があります。

届けであるかどうか、よくわからない場合は、サロンに尋ねてみましょう。

・ペットサロンの評判を集める

もちろん、評判が全部、愛犬や愛猫に当てはまるとは限りません。それでも、口コミを知っていて、飼い主がそれから判断するといいですね。

・ペットとの相性はどうか

いくら世間の評判がよくても、自分とのペットとの相性が悪いよくないのです。飼い主は、以下のことをチェックして、考えた方がいいですね。

□ペットサロンのスタッフを見ると、ペットが震える

□ペットサロンから帰ってくると、ペットのウンチが下痢ぎみになる

□ペットサロンから帰ってくると、ペットの食欲がなくなる

□ペットサロンから帰ってくると、ペットの元気がない

□ペットサロンから帰ってくると、なにかペットの調子が悪い

□ペットサロンから帰ってくると、ペットが病気になることが多い

もちろんペットは、言葉を持たないですが、彼らの微妙な行動を読み解いて、ペットサロンを選んでくださいね。

まとめ

写真:アフロ

この記事を読んで、筆者は、高校時代にシェパード(名前はジョン)を実家で飼っていたことを思い出しました。大型犬なので、初めは訓練所に預けました。ジョンの面会に行くと、どこかさみしそうにしていると、両親は感じたらしく、訓練料金は、返却されないことを承知で連れて帰りました。

そして、週に2回ほど通いで訓練士の人に来てもらっていました。家にきてもらうとその様子を安心してみていられるだけでなく、家族も訓練の方法を勉強できるメリットがあります。厳しくしつけられていましたが、その訓練士が来るのをニオイで早くからわかって玄関で尻尾を振っていました。

やはり犬は、このように態度で飼い主に知らせてくれます。ペットサロンの人が言うことだけでなく、ペットの態度からも推測してみるといいですね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

石井万寿美の最近の記事