「QRコード」付きバレンタインチョコ出現か
正方形にドットが描かれた「QRコード」は、日本発のマトリックス型二次元コードだ。筆者も以前は名刺にQRコードを印刷していたが、名刺リーダーアプリが進化してきたので今では使っていない。だが、商品情報やPR、航空券など、我々の日常生活のあらゆる場面で使われ、すでにQRコードなしでは不便な状態になっている。
曲面にも使えるQRコード
QRは「Quick Response」の意味で、検出パターンの自由度が高い、つまり読み取りが多少ブレたりピントが甘くても情報を取得することが可能だ。また、QRコードは簡単に印字でき、QRコードが作成できるWindowsソフトを使えば、家庭のプリンターでも印刷できる。日本発の技術だが次第に中国やシンガポール、EU諸国など世界中で使われ始め、1994年に開発したデンソーウェーブ(旧デンソー)は20年かけて世界標準に近い汎用コードに育ててきたといえる。
そんなQRコードだが、これまでは平面や円筒状の曲面といった、極端に凹凸のない限られた場所にしか貼ることができなかった。また、口に入れたりする食品や薬品にも使えず、使用場所が限られ、せっかくの技術が広がらない理由の一つにもなっている。これまでにはキュービック型の直方体QRコードなどが遊びで作られることがあったが、あくまでギミック的なもので実用性を求めたものではなかった。
横浜国立大学の工学研究科の前川卓教授らは、今回、3Dプリンターで作った試作品などにQRコードを埋め込み、自由曲面に読み込める状態で表示することのできる方法を考え出した。横浜国立大学のリリース(PDF)によると、平面でないものにも埋め込め、溝を掘ってQRコードを検出するため、背景色は淡い色であれば大丈夫だという。
今回の技術は、QRコードを読み込むデバイスが認識できるように、光を放射状に発して遮られない深さの溝が立体的に掘られることが必要だが、剥がれ落ちる心配もなく、その上から塗料などを塗ることも可能だ。リリースでは今回の3DのQRコードを凸型にした鋳型にチョコレートを流し込んだ「QRチョコ」の写真も掲載されている。3DプリンターでQRコードを埋め込むことで、薬にも処方箋などの情報を加えることが可能だという。
だが、リリースによると「ロバスト性」(頑強性、堅牢性)を高める必要性について述べられている。読み取り側で使える高い検出能力を持つソフトの開発が必要かもしれない。
いずれにせよ、QRコードはライセンスフリーなので使用が無料というのも魅力だ。画像や音声もバイナリデータとして格納可能(最大で3KB)で、中国語や韓国語にも対応している。音声メッセージ付きの手作りチョコを、バレンタインデーにプレゼントすることができるようになるかもしれない。
3DプリンターでQRコードをプリントした鋳型にチョコレートを流し込んだQRコード付きチョコ(右)。スマホなどで情報を読み取ることが可能だ。Via:横浜国立大学のリリースより