新型コロナワクチンの職域追加接種(3回目接種)について分かっていること 接種券・使用ワクチンなど
職域接種は2022年(令和4年)3月から開始
2021年12月15日現在、職域で接種された新型コロナワクチンは1,900万回を超えており、2回接種した人は約950万人になります(1)。
1・2回目の職域接種と同様、企業や大学などにおいて、職域単位でのワクチンの追加接種(職域追加接種)が行われます。
追加接種は、2回目接種の完了から原則8か月以上経過した人が対象で、2022年(令和4年)1月から接種計画を各企業が入力し、2月に配分される量が決定します。その後、3月からワクチン接種が開始される予定です。2回接種を終了した日から8か月後の同じ日から追加接種が可能になります(図1)(2)。職域接種では対象者に高齢者などの重症化リスクが高い人が少ないことから、6ヶ月への前倒しはしない方針となっています。
追加接種では原則「接種券」が必要
1・2回目の職域接種では接種券がない人に対しても、「飛び込み接種」が可能でした。接種後、後日接種券を持参してもらうという方法を容認し、政府も日本のワクチン接種率を高めるよう努めていました。
さて、3回目については、各自治体がワクチン接種対象者を抽出し、その前月までに接種券を順次発送する決まりになっています。企業や大学などから過去のワクチン接種情報がすでにワクチン接種記録システム(VRS)というシステムに登録されているため、過去に職域接種を受けた人も、3回目の接種券(接種券一体型予診票)(図2)が手元に郵送されるようになっています(3)。
もし接種券発行の手続きが間に合わない追加接種対象者がいた場合、接種券がなくても接種できる仕組みは残していますが、あくまで例外的運用です(4)。もしそういった人がいても、基本的には市町村への接種券発行申請を促すよう、政府はすすめています。
職域追加接種で使用するワクチンは?
職域接種の初回接種と同様、職域追加接種では武田/モデルナ社製ワクチンが使用されます(12月16日特例承認)。頻度は極めて低いものの若年者に心筋炎の超過発生が確認されていることから、ファイザー社製ワクチンを希望する人がいるかもしれません。しかし、3回目で配分されるワクチンは相対的に武田/モデルナ社製ワクチンのほうが多いことが分かっており、職域接種を見送ってもファイザー社製ワクチンが確実に接種できるかどうか分かりません。
さて、武田/モデルナ社製ワクチンの接種は、1・2回目接種と接種量が異なります。1・2回目の接種ワクチン量は0.5mLでしたが、3回目接種での接種ワクチン量は0.25mLです。ファイザー社製ワクチンの3回目接種は1・2回目と同じ量です。同一ワクチンでさえも接種回数ごとに接種量が異なることから、ワクチンの誤接種が起こらないよう注意が必要です(5)。
交互接種は?
なお、医学的には、1・2回目と異なるワクチンを使った交互接種が可能です。1・2回目でファイザー社製やアストラゼネカ社製のワクチンを接種した人が、新入社員や中途採用などの理由で職域接種する場合、3回目だけ武田/モデルナ社製ワクチン接種を受けることも可能です。
上述したように、ファイザー社製ワクチンよりも武田/モデルナ社製ワクチンの流通が相対的に増えることから、希望通りにいかないケースもあるかもしれません。
前回の職域接種で見えた課題
中小企業の職域接種では、外部の医師に協力してもらい集中して接種したところが多かったと思いますが、日程調整が大変だったり、副反応で社員の多くが休んだり、とそれなりに大変な思いを経験した企業もありました。そのため、職域追加接種に関しては二の足を踏んでいる企業も少なくありません。
また、大学でおこなわれる職域追加接種も、入試、入学式、卒業式など大学の最も忙しい時期と重複してしまいます。それに割ける職員のマンパワーも限られているところもあります。
職場接種に関わる人件費や会場費などは、企業や大学の負担としていましたが、これを国が負担するよう対策がすすめられています。
前回の職域接種ではワクチンの供給がストップする事態となりましたが、2022年3月から始まる職域追加接種では、そういったことがないよう対策がとられています。
3回目接種する・しない?
新型コロナワクチンを3回接種することで、オミクロン変異ウイルスに対しても十分な量の抗体がつくられ、高い感染予防効果が期待できるというデータが出てきました。
直近世界を苦しめてきたデルタ変異ウイルスよりもオミクロン変異ウイルスのほうが弱毒化していたとしても、感染力が強いことから患者数が指数関数的に増える可能性があります。イギリスでは、すでに新規感染者の半数がオミクロン変異ウイルスではないかと考えられており(6)、3回目の接種が強く推奨されています。
「感染者数×重症化率」の積が大きくなって中等症以上の患者数が増えてしまうと、これが医療逼迫につながります。そのため、2回接種した状態でオミクロン変異ウイルスと対峙するよりも、集団的自衛を目指して迅速に3回目接種をすすめることが、現時点で私たちが取るべき最善手と考えます。
(参考)
(1) 職域接種に関するお知らせ(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_shokuiki.html)
(2) 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する職域接種向け手引き(第5.0版)(令和3年12月10日更新版)(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000865505.pdf)
(3) 新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)に係る職域接種の開始について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000858916.pdf)
(4) 例外的な取扱として接種券が届いていない追加接種対象者に対して 新型コロナワクチン追加接種を実施する際の事務運用について(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000789163.pdf)
(5) なぜワクチンの誤接種が起こるのか? 原因と対策は(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20211121-00268846)
(6) Covid: First UK death recorded with Omicron variant.(URL:https://www.bbc.com/news/uk-59639007)