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次々に、中国系犯罪組織に狙われる日本!そして、今のロマンス投資詐欺には、国内犯の幇助の影あり

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

昨年は、謎の種が勝手に送り付けられて、その気味の悪さから話題になりました。さらに大手家電メーカーなどを装った偽通販サイトに誘導されて、クレジットカード情報を盗まれる被害も多発。また多くの人のスマホや携帯電話に、中国語の自動音声電話がかかってきて、多額のお金を取られる人も出ました。すべて中国系の犯罪組織からのアプローチとみられています。

そして今、SNSやマッチングアプリで出会った外国人の異性からロマンスの感情を抱かせられたところで、嘘の投資話を持ち掛けられ、偽の投資サイトに送金させられるケースが続出しています。これもまた被害者の証言から、中国系の犯罪組織であることがわかってきています。

まさに今、日本に住む人たちが狙われています。

詐欺犯と話をした女性たちの証言から見えてくることとは?

なぜ、この”ロマンス投資詐欺”が、中国系の犯罪組織と思われるのか?といえば、多くの被害者は「ご飯、何食べた?」という挨拶をされて後に、料理の写真が送られてきているからです。実はこの挨拶の仕方は中国の方にみられるものです。

私たち日本人であれば「今日は暑いですね」などと天気の話から入りますし、アフリカ系犯罪組織が行う国際ロマンス詐欺では「あなたを愛している」という強烈なラブコールから始まります。民族の違いで挨拶の仕方は違ってきており、そのメッセージの内容から詐欺組織の実態が垣間見えてきます。

被害に遭うのは、ほとんどが日本人の男女です。時に相手の人物(詐欺犯)と電話をしたという方もいますが、相手が中国語で話してくるため、言葉を理解できずに終わっています。しかし被害報告が多く寄せられるなかで、同じ中国人の方も被害に遭っていることがわかってきました。

今年4月、40代女性はWeibo(ウェイボー)で出会った中国人男性から、投資アプリを紹介されます。それをインストールして、入金するために日本国内の銀行に3回送金して、約170万円の被害に遭いました。彼女は現在、日本国籍ですが、20歳まで中国に住んでいました。

まず中国の方の挨拶の仕方について尋ねました。

「やはり『ご飯食べたか?』という挨拶をするものでしょうか?」

「そうですね。今の若い人はあまり言いませんが、確かに『ご飯を食べましたか?』という、3食をきちんと食べて健康でいるのかを気にかけた挨拶はしますね」

この女性は詐欺と気づくまでに、詐欺犯である中国人男性と2回ほど、メッセージ電話で話しています。もちろん、中国語です。その会話から「本人も四川省の出身と言っていましたが、訛りからして、確かに南の人という感じでした」と話します。

「本当かどうかはわかりませんが、今は、広東省の深圳に住んでいると言っていました」

WeChatを使っていないという違和感

また日本に住んで20年近くになる30代の中国人女性にも話を聞きました。

5月初めに彼女は、SNSで大阪に住んでいるというシンガポール人の男性と友達になりました。そして、中国語でメッセージのやりとりを始めます。

「彼は現在、大阪に住んでいる中華系のシンガポール人で、母親が中国語の講師。仕事は日本の服を中国に輸出している会社経営者で、来日する前には、中国の広州で10年間友達と共同で会社経営をしていたと言っていました。」

しかし彼女は1週間ほどのメッセージのやり取りで「詐欺ではないか?」と疑います。

それは、男が「あなたとLINEで、メッセージのやり取りしたい」と言ってきた時、彼女が「WeChat(ウィーチャット)を使っていますか?」と尋ねたことがきっかけでした。

男は「使っていない」と言ってきます。

「普通、中国で生活していたのであれば、誰もがWeChatに登録しているはずです。しかも、銀行口座と連結しWeChat Payの決済もできて、普段の生活にも欠かせないものだからです」

“それを使っていないとは、おかしい”と、彼女は怪しみます。

もしこの先「お金の話が出たら、詐欺の可能性あり」と思っていると、やはり、しばらくして投資話が出てきて疑念は深まります。

ことあるごとに男は投資話を持ち出しますが、彼女は「興味がないし、考えられない」と答えて、お金につながる話はブロックしていました。それにより、金銭的被害には遭いませんでした。

やりとりするなかで、男は儲けているという投資サイトの画面を送ってきています。見せて頂くと、やはり他の偽の投資サイトで使われていたものと似ています。

「第一言語は共通語です」という、謎の日本語が送られてくる

組織で詐欺をする場合、何かしらのミスをするものです。その辺りを彼女に聞いてみました。

「ありました。普段は中国語でメッセージのやりとりをしているのに、いきなり、『第一言語は共通語です』と翻訳ソフトを使ったような日本語が送られてきたんです。たぶん、他の日本人女性ともやりとりをしていて、こちらに間違って送ってきたのでしょうね」

彼女も日本語で返事をすると、慌てたように中国語の会話に戻したそうです。

彼女もメッセージアプリの電話でこの男と話しています。

その時の内容から「彼は広東省に住んだことがあると言ってましたが、それは間違いないように思います。言葉のニュアンスからは南の人のように感じます」

「中国の南の方の人」この辺りは先に聞いた女性の証言と一致しています。

シンガポール人を名乗るケースが多いことからも、詐欺の拠点は中国の南から東南アジアにかけての可能性が考えられます。

おかしい点は他にもあると話します。

「彼は日本に住んで2年ほどですが、普通、日本に2年も住んでいれば、日本語はある程度話せるようなるはずです。しかし、彼はほとんど話せないと言っていました。これは変ですね」

日本語を話さなくても良い環境にあるということでしょう。

また男は「今年いっぱいで、経済的自由を実現する」という抱負を語ってきました。

これまた、おかしな話です。彼は貿易会社を経営していると言っているのですから、これが本当であれば、お金は自由に使えて、経済的に自由のはずです。つまり、これは男が詐欺組織のなかにいて「メッセージのやりとりをするような下っ端の人間は、お金を自由にできない」という本音が出た言葉とみてよいでしょう。

国内犯の幇助があるから被害は甚大に!?

では、犯人は国外にいる中国人ゆえに追及は難しい。私はそうではないと考えています。国内犯の幇助があるからこそ、この種の偽の投資話による詐欺が増えていると考えています。

仮想通貨での送金のケースも多くありますが、最初の彼女のように、国内の銀行に送金しての被害も目立ちます。

彼女が被害の悔しさから、裏関係の人たちに口座の売り買いがどうなっているかを尋ねたところ、ベトナム人名義の口座は1万円、中国人2万円、日本人3万円以上で取引されているということを話してくれたと言います。これは組織によって違うかと思いますが、以前に裏バイトで口座の買い取りをしている人物の調査をしたことがあり、その時に聞いた金額とほぼ違いはありません。

実はこうした口座の買い取りなどには、振り込め詐欺でも暗躍する「道具屋」の存在が、今回の”ロマンス投資詐欺”にも相当、関わっていると睨んでいます。

一見すると、中国系犯罪組織による手口です。しかし、国内で幇助する犯罪組織がなければ、「暗号資産(仮想通貨)に関するトラブルにご注意ください!」と、消費者庁、金融庁、警察庁が合同で注意喚起するほどのトラブル増加になるはずはないと考えています。

しだいに大きくなる被害金額にかなりの危機感

昨年の”謎の種送り付け”では、私たちへの直接的な被害はほとんどありませんでした。しかし同じ頃に起きた、大手家電メーカーなどを装った”偽通販サイト詐欺”や”中国語自動音声電話”では、次第に被害金額は大きくなっていきます。

そして、”ロマンス投資詐欺”に至っては、数百万から数千万円、さらには億の被害も出ており、その数も水面下で相当数に上っているとみられています。

このまま口座や携帯電話などを調達する「道具屋」が絡んだような形で、国際的な詐欺グループの横行を許せば、不正口座を使った国内の特殊詐欺の蔓延にもつながっていくのではないかと、相当な危機感を抱いています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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