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【WBC】韓国が日本優勝を異例の「ストレート大絶賛」 ダル大谷に「高橋宏斗までもスゴイ」

(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

日本国内の3月第4週を席巻した感のあるWBC。侍ジャパン優勝の報は、韓国でも大きな話題になっている。

決勝が行われた22日、韓国最大のポータルサイトNAVERのスポーツコーナーでは「日本優勝」が圧倒的な話題に。アクセス数上位4つはすべてこの話題だった(一般ニュース枠では上位には入らずだったが……)。

いずれも驚き、といっていいほどの「ストレート絶賛」となっている。

1位:「大谷が締めた! 日本、アメリカを下し14年ぶりのWBC優勝…全勝優勝の偉業<WBC リビュー>」

「OSEN」アクセス数38万468

2位:「パワーで(年俸総計)2760億ウォン※のアメリカを凌駕した日本…韓国は世代交代に失敗、野球は国内向けコンテンツに」

「ファイナンシャルニュース」 アクセス数20万8123 ※約269億円

3位:「決勝戦でも投打でポンポンと活躍…MVP大谷が見せた 本当の『マンガ野球』」

「ニュース1」 アクセス数20万2193

「マンガ」というのは「まるでマンガのような話」というニュアンスだ。

サッカーだと、2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会後に1年半ほど代表監督を務めたチョ・グァンレのサッカーが「マンガサッカー」と呼ばれた。ホワイトボード上に誇らしげに「パスをこうやってつないでいく」という図を示した様子がこう言われた。当時は「本当に出来たら大したもの」というニュアンスもあったものだが……今回の大谷の投打での活躍は「マンガがリアルになった」という意味で評されている。

4位:「トラウトを三振に仕留めた21歳、サヨナラ弾を打った23歳…日本の優勝がすごい理由<WBCリポート>」

「スポーツ朝鮮」 アクセス数 18万5071

同紙は日本の優勝がすごい理由として「世代交代に完璧に成功した点」を挙げた。主軸の大部分が20代だったことに注目したのだ。大谷翔平、吉田正尚、岡本和真など主軸がすべて20代。負傷で本大会に参加できなかった鈴木誠也も決勝で先発した今永昇太も同様。

のみならず決勝戦で中継ぎ登板し、トラウトから三振を奪った高橋宏斗を「肝が肝わっている」と評価。準決勝で劇的なサヨナラ安打を放った村上宗隆に関しては「年齢に関係なく、国際大会でも活躍」と絶賛した。

日本ラウンドでの登板時の高橋宏斗
日本ラウンドでの登板時の高橋宏斗写真:CTK Photo/アフロ

韓国大御所記者「日本がいい野球をしているから」

この現象、いったい何なのか。

「不振の韓国代表に対する当てつけ」「ぼやき」にも見える。

20年以上も前の話だが、サッカーのワールドユース(現U―20W杯)ナイジェリア大会で日本が準優勝し、韓国がグループリーグ敗退という結果に終わったことがあった。筆者自身、大会直後に韓国で取材中、タクシー車内で日本の躍進の話題になった。すると韓国人運転手のおじさんが「日本ばんざーい」と両手を離して運転をおっぱじめた。あきらかに「やけくそ」だった。

今回の「ストレート大絶賛」の現象について、ソウル大卒にして、韓国のスポーツ紙で長年同国の野球界を取材してきた業界の大御所、現在は韓国野球学会理事のチェ・ミンギュ氏はこう言う。

「今大会の韓国代表チームの大会成績だけでなく、ここ10年来、KBOリーグ(韓国プロ野球リーグ)では数多くの良くない出来事があり、韓国の野球ファンの全般的な失望が大きい状況にあります」

確かに「当てつけ」「やけくそ」という面もある。

「今回のWBC日本戦では、大手サイト中継でのリアルタイムアンケートで『(韓国ではなく)日本を応援する』とした人が40%を超えました。 この時点で韓国が3―0でリードしていたにもかかわらずです。韓国代表チームを嫌って日本を応援したと見ることもできます」

今回のWBC1次ラウンド日韓戦の様子
今回のWBC1次ラウンド日韓戦の様子写真:CTK Photo/アフロ

ただ、それだけではない面もあるという。

「アメリカとの決勝戦でも『日本を応援する』という声は大きかったです。この試合は韓国が絡むものではないので、よりコアな“野球好き”が試合を見ていた比率が高かった。この層にとって明らかな点があります。『日本はいい野球をやっている』ということです。一回からバントをやるかつての典型的な日本野球像ではなく、メジャーリーガーが多いアメリカを相手に、力を合わせて勝利した姿が印象的でした。そうやって『日本の野球が変化している』と聞いてきた韓国のコアな野球ファンは多いなかで。今回は中継を通じてそれを改めて目にする機会でもあったのです」

いい野球をやっているなら、たとえそれが“憎き”日本であっても認める。これは去年のサッカーW杯カタール大会でも似た現象が見られた。大会初戦のドイツ戦に勝利した試合を現地のスポーツカフェで見ていたが、そこで現地ファンの多くが試合直後に口にした言葉が「テバク(すげぇの来た)」だった。

その流れに決定的な役割を果たしているのが……やっぱり「あの人」だ。チェ氏が続ける。

「そして大谷の存在も大きい。彼は韓国でも全く悪評のないスターなのです。実力のみならず、まっすぐに成長した若者としても知られています。まあこの点は韓国スポーツ界が、子どもたちに勉強を教えずに幼い頃から運動ばかりさせて、落ちこぼれを社会不適応者にしてきた現実とは対照的な存在として見ている、という面もあるでしょう」

(了)

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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