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新型コロナ第7波までの死亡者数・致死率のまとめ 第8波はやって来るのか

倉原優呼吸器内科医
(提供:イメージマート)

日本における新型コロナは、第4波までは1%を超える致死率でした。ワクチン接種がすすみ、ウイルスの弱毒化がすすんだことで、その後致死率が低下し、さまざまな緩和が進んでいます。今後、第8波はやって来るのでしょうか?もう警戒しなくても大丈夫でしょうか?

第7波までの死亡者数・致死率(図1)

2021年7月のデルタ株による第5波以降、致死率が大きく低下しています。この波は、多くがワクチン接種を完了していたため、被害が小さかったと思われます。救急医療は逼迫しましたが、死亡者数が少なかったのは不幸中の幸いでした。

図1. 新型コロナ各波の死亡者数と致死率(筆者作成)
図1. 新型コロナ各波の死亡者数と致死率(筆者作成)

2021年12月以降、オミクロン株による第6波が始まりました。死亡者数が1万2,000を超えたものの、致死率は0.17%に半減しました。若年層への感染が多かったことに加えて、ウイルス自体が弱毒化していたことと、経口治療薬が使用されることになったことなど、複合的な要因が考えられます。

第7波でも、過去最大規模の約1万2,000人の死亡者数を記録したものの、致死率は0.11%とパンデミック当初の16分の1にまで低下しました。

第7波以降急速にすすむ緩和

第7波以降、適用された新型コロナ対策の緩和は、①療養期間の緩和②全数把握の緩和③水際対策の緩和の3つです(図2)。

有症状陽性者の療養期間は、入院していない場合に限って、7日間に短縮されています。もちろん短くするかわりに、残存する感染リスクをかかえています。

図2. 新型コロナ対策の緩和と継続(筆者作成)
図2. 新型コロナ対策の緩和と継続(筆者作成)

全数把握は、9月26日から全国一律で緩和されます。感染者の総数そのものは把握が継続されますが、発生届は高齢者や重症者など一部の感染者に限定されることになりました。届け出が提出されない軽症者が悪化した場合のセーフティネットとして、「健康フォローアップセンター」が設置されることになります。

日本はこれまでかなり厳しい水際対策をとってきました。新型コロナの検査の陰性証明については、新型コロナワクチンが3回接種されておれば免除となりました。ようやく国際的な水準に緩和された形となります。現時点で日本がもっとも感染者数が多い国ですから、そもそも検査の陰性証明を提示していただく医学的意義は乏しいです。

反面、対策が継続されるものとしては、新型コロナワクチンの接種推奨自己検査の活用、手指衛生やマスク着用などの感染対策の徹底です。特に前者2つは、むしろ対策を強化すべきと考えられます。抗原検査キットはインターネット等での販売が解禁されることになっています。

新型コロナワクチン接種は、重症化を防ぐために重要な武器になりますが、懐疑的に感じている人が少なくないため、政府からしっかりと説明を続けていただく必要があります。

第8波はどうなるか?

第3波と第6波は12月~1月に流行しています(図3)。第8波自体は、これまでと同じく年末年始に到来すると予想されますが、上述したように致死率がかなり低く抑えられている現状、また陽性の診断が以前ほど求められておらず、波自体が小さくなる可能性もあります。

図3. 全国の新型コロナ新規陽性者数(筆者作成)
図3. 全国の新型コロナ新規陽性者数(筆者作成)

日本ではすでに2,000万人以上が感染しています。診断されていない潜在的な感染者も含めると、かなりの国民が十分な抗体を有していてもおかしくありません。

幸いにも第3波と第6波はインフルエンザの同時流行がなかったのですが、オーストラリアではついに今年インフルエンザが流行しました図4)(1)。

図4. オーストラリアにおけるインフルエンザ診断件数(参考資料1より引用)
図4. オーストラリアにおけるインフルエンザ診断件数(参考資料1より引用)

例年より2~3か月流行が早かったため、今年は日本でも例年より早期のインフルエンザの流行があってもおかしくありません。

まとめ

感染者の絶対数が多かったことから、第7波は過去最大級の死亡者数を記録しました。しかし、パンデミック当初と比べて、新型コロナの致死率はかなり低下しました。

ゆえに、現在の新型コロナ対策のうち、以前より緩和されている部分もあります。おそらく年末年始に第8波がやってきますが、推奨される感染対策を継続しつつ、波を乗り越えていきましょう。

(参考)

(1) 第99回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年9月14日)資料3-6-② 前田先生提出資料(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000990103.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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