「メイウェザーみたい」井上尚弥が見せたスタイルの変化とは
元世界バンタム級4団体統一王者の井上尚弥(30=大橋)が25日、東京・有明アリーナで行われたWBC、WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチで、王者のスティーブン・フルトン(29=アメリカ)と対戦した。
試合の展開
試合が始まると井上は左手をダラリと下げて向かっていく。対するフルトンもガードを下げ、互いに見合いながらジャブを打ち合っていた。
序盤から、井上は速いジャブでペースを掴み、さらにコンビネーションを繰り出しながらフルトンを牽制する。
フルトンも井上との距離を感じたのか、ジャブを前に突き出しながら前進するが、詰めきれない。
中盤になるとフルトンも、ときおりパンチを当ててくる。しかし、井上のステップが早く決定打が決まらない。
そして、8ラウンド目。井上はジャブからの右ストレートを打ち込み、フルトンを追い込んだ。
そこに追撃の左フックを炸裂させ、フルトンから最初のダウンを奪う。
なんとか立ち上がったフルトンだったが、井上は追い討ちをかけるようにロープに詰め、ラッシュを浴びせる。
フルトンは防戦一方となり、膝が落ちたところでレフリーが試合をストップ。
8回1分14秒で井上が勝利を収めた。
メイウェザースタイルで戦う
今回井上は、フロイド・メイウェザー(元世界5階級制覇王者)などが使うデトロイトスタイルで戦っていた。
このスタイルは、左手のガードをダラリと下げて構えるのが特徴だ。
左手の位置を下げることで、パンチの軌道を悟らせず、ジャブを効果的に使える。また、肩に力が入らずリラックスしてパンチを打てるためスピードが増す。
反面、ガードを下げて戦うため右のパンチをもらうリスクが高い。
よほど目と反射の良い選手でないと危険なスタイルだ。
過去、試合途中に流れを変えるため、デトロイトスタイルで戦うシーンもあったが、最初からこのスタイルで戦うのは初めてだ。
フルトンも想定していた井上のスタイルと違い困惑しただろう。立ち上がりから、攻勢に出るまでに時間がかかっていた。
デトロイトスタイルで着実にポイントを取り、フルトンを焦らせ、前に誘い込む作戦だったようだ。
今後の展望
井上は試合直後のインタビューで「自分が思うスーパーバンタム級最強のフルトンを8ラウンドで倒すことができたので、このスーパーバンタム級、最強と言えるのではないかと思います。
ただ、今僕が持っているベルトは2本です。今日この会場にタパレスが観にきているということで、次戦スーパーバンタム級で4団体統一をしたいと思います」と展望を語った。
すると、現WBAスーパー・IBF世界同級統一王者マーロン・タパレス(31=フィリピン)がリングに上がり、「自分自身がチャンピオンであることを証明したいので、井上尚弥選手とぜひ試合をしたいです」と返答。
すると井上は「今年中にこの2つのベルトをかけて戦いましょう」と宣言した。
今後の交渉次第だろうが、年内にも4団体統一戦への道が開けそうだ。
もし統一を果たせば、更に上の階級、フェザー級での4団体統一の可能性も高まる。
同日、セミファイナルで防衛に成功した、現WBO世界フェザー級王者のロベイシ・ラミレス(29=キューバ)も、井上との対戦に興味を示していた。
近いうちに対戦が実現するかもしれない。
井上の4階級制覇は、海外メディアでも大きく報じられ、世界に轟く勝利となった。
ボクシング界の誰もが到達できなかった伝説を残してほしい。