「面倒くさがりや」の人を動かす究極の方法
動かない人に明確な理由はない
リーダーが部下指導する際、一番困るのは、部下が期待した通りに動かないことです。「忙しくてやっていられません」「そもそも私がやらなくてはならないことですか」などと言い、最初から動かない人がいます。行動する前から意思表明をする部下ならともかく、「やります」と言っておきながら、結局のところやり切っていなかったり、「ちょっとバタバタしていたので」などと言い、着手さえしてしない部下もいます。
こういった動かない部下を目の当たりにして嫌気がさすリーダーは多いことでしょう。しかし、だからといって「なぜやらないのか?」と理由を尋ねたり、「どうすればやるようになるのか?」とアイデアを聞くのはやめましょう。
なぜなら、動かない相手の中に明確な「理由」も「アイデア」もないからです。もしも動かない明らかな理由があるのなら、こちらが尋ねなくても本人が意思表示してくれます。改善するためのアイデアがあるなら、自ら提案してくるでしょう。したがってリーダーが尋ねない限り口を開かない人には質問しないほうが得策です。その人の中に「答え」がないからです。後付けの理由(後知恵)で自己正当化することになり、いつまでも改善されません。
それではなぜ、人は動かないのでしょうか。
ほとんどの人が持っている「動かない理由」
現場に入って行動改革を促がし、組織の目標を達成させてきたコンサルティング経験からわかることがあります。動かない理由は、ほとんどの場合「面倒くさい」からです。面倒だからスタートできないし、続けられないし、やり切れないのです。リーダーはその「真実」を把握しておく必要があります。そうしないと、
「モチベーションをアップさせるための内的動機付けがないからだろうか」
「モノが豊かになった現代、自己実現の欲求を満たすような何かを見つけられないからだろうか」
「当社の人事制度に問題があるからだろうか」
などと、難しく考え込んでしまいます。単純に「面倒」だからやらないのですから、このように複雑で込み入った理屈を持ち出しても問題は解決しません。「内的動機付け」も「自己実現の欲求」も「人事制度」も関係がないからです。
もう一度書きます。動かないのは「面倒くさい」からです。面倒だから人は動かないのです。
乱暴な人の動かし方
前述したとおり、「面倒くさがりや」の人はなかなか動きません。なぜか? 「やると面倒」だからです。行動原理が「面倒」であるわけですから、別の「面倒」なファクターが加われば、面倒くさがりやの人の行動は変わってきます。つまり「やらないと面倒」なことになると思わせればよい、ということです。
やると面倒 < やらないと面倒
という公式を相手の頭にイメージできるようにします。
動くのが面倒だと思っている人は、評価や待遇といったものでは行動を変えられません。自分が動いていないからです。つまり、こちらの要望どおりに動かないと、別の動きをしてもらうと伝えると効き目があります。
「研修を受けた後の報告書を金曜日までに出してください。最近、提出期限を守らない人がいて、社長がかなり怒っています。ですから今回、もし提出期限を過ぎるようなことがあったら、報告書を自分で印刷して社長室へじきじきに持っていってください。これは社長からの指示です」
このように伝えておけば、
研修報告書を作る面倒くささ < 社長室へ報告書を持っていく面倒くささ
となり、やらないと面倒だな、しょうがないからやるか、ということになります。そして動き出せば自分自身で理解するのです。「やっぱり動かないよりは動いたほうがいい」と。
コミュニケーションの内容や姿勢では、なかなか行動を変えてもらえません。叱責や恫喝も、効き目があるのは最初だけです。行動しなかったときの懲罰を「より面倒な行動」にしておきましょう。面倒くさいからこそ、やる、ということになるからです。