楽天モバイル「エリア拡大」で逆につながらなくなる場合も
楽天モバイルにとって最大の課題となっているのが「エリア拡大」です。しかしエリアが広がることで、逆につながらなくなる場合もあるといいます。なぜそんなことが起きるのでしょうか。
楽天モバイルは、大手キャリアの帯域を借りて提供する「MVNO」から、自社で基地局を立ててサービスを提供する「MNO」への移行を進めており、2021年8月には契約数が合計500万回線を超える規模に成長しています。
自社の基地局を日本全国に展開するまでの間、KDDIとローミング(乗り入れ)契約を結んでおり、楽天のスマホは全国でつながるようになっています。しかしKDDIにローミング費用を払っていてはほとんど儲けが出ないとみられ、楽天は早急に自社エリアを広げる必要に迫られています。
楽天モバイルの特徴は携帯インフラにクラウド技術やデータセンターを全面的に活用している点です。基地局展開においてはコスト削減や工期短縮の効果があったとするものの、昨今の半導体不足の影響から、目標とする「人口カバー率96%」の達成は2022年3月予定に遅れる見通しです。
その中で、実際のつながりやすさに大きな影響を与えそうな動きが「ローミング停止」です。楽天エリアの拡大に伴い、すでにローミングが終了していた東京都に加え、10月1日からは39都道府県の一部地域でローミングを順次停止していきます。
注意したいのはKDDIと楽天のエリアは同じではないという点です。要因の1つとして、KDDIは電波が回り込みやすいプラチナバンド帯である800MHzを使っていたのに対し、楽天の周波数は直進性の高い1.7GHz帯という違いがあります。楽天はローミング停止の範囲を決めるために以前よりもコツをつかんできたようですが、それでもある程度問題は出ているようです。
このように楽天のエリア拡大とともにローミングの停止も進むため、逆につながらなくなる場合があるというわけです。影響を受けそうなユーザーには個別に連絡しているほか、問い合わせに対しては調査の上で代替となるスマホを貸し出すなど、4営業日以内に何らかの対応をしていると楽天は説明しています。
店舗内でのアプリ決済にも注意
楽天モバイルの電波が届きにくい場所の1つに、店舗内の奥まった場所があります。そうなると問題になるのがアプリ決済です。店舗のレジ周辺で「楽天モバイルはつながりません」との貼り紙を見かけた人もいるのではないでしょうか。
スマホを利用する支払い手段にもいくつか種類があり、モバイルSuicaのようにデータ通信に関係なく使えるものもあります。しかしPayPayや楽天ペイのようなアプリ決済にはデータ通信が必須であり、電波が届かないところでは支払いができません。
楽天は店舗向けの対策として、小型の基地局「Rakuten Casa」を1日300台のペースで設置しているそうです。この端末に固定のインターネット回線をつなぐと、周囲に楽天モバイルの小さなエリアを作り出せる仕組みです。
楽天モバイルへの乗り換えを検討している人は、こうしたエリア整備が落ち着くまでの間、サブ回線として様子を見るのもひとつの手です。すでにメイン回線として使っている人は、ローミング停止の展開地域を把握しつつ、自分の行動範囲のどこかで問題が起きるかもしれないという心構えが必要です。