「ノルウェーでは豚肉と酒」発言の移民大臣 右翼ポピュリスト政党は外国人をどこまで同化させたいのか
「ノルウェーでは豚肉を食べ、酒を飲み、顔を見せるのよ」。シルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣(進歩党)のフェイスブックでの投稿が大きな議論となった。現地メディアやネット上では、大臣への批判が殺到し、大臣は「誤解だ」と反論。「何を食べるかを強制しているわけではなく、労働市場で働くならば、豚肉や酒を提供しなければいけない」とする大臣だが、反応は様々だ。
大臣は政府公式HPで、下記のように語る。
しかし、大臣自身が移民政策における正直な成功例を議論できているかには疑問が残る。右翼ポピュリスト政党である進歩党は、移民政策におけるリスクや移民・難民受け入れのデメリットを強調することを得意分野としているが、メリットを持ち出すことは少ない。
大臣は移民の低い失業率をよく指摘するが、実は、国民全体の就業率は、移民を抜かした国民は67,2%、移民は60,3%(ノルウェー統計局調べ)。実際は、両者で大きな差がないことは、彼女自身の口から語られることはない。
プラス・マイナスのバランスが欠けているようにみえるのは、左寄りだとされる現地報道のせいかもしれない?ノルウェーのメディアが、移民・難民・難民申請者と距離を縮めようとする大臣を、無意識に、あえて報道していないのかもしれない? 国会や会議の裏で、ヒジャブを被った女性や、移民とみられる人々から、積極的に話しかけられる大臣を、筆者はよくみかける(冒頭写真)。このような光景は、あまり報道されない。
25日付けのアフテンポステン紙の寄稿で、労働党青年部のロバート・ビョーンさん(16)は、自分の知っているノルウェーと、大臣の描写するノルウェーが全く違うと反論する。「移民に懐疑的な人々=人種差別者」とレッテルを貼ろうとするノルウェーの風潮を進歩党は批判する。だが、一方的なレッテルを押し付けようとしているのは、むしろ進歩党のほうだと。
国民を感動させた王様のスピーチ。「私の祖父母は移民だった」。ノルウェー人って、誰?
移民である筆者の立場からいうと、移民や外国人なのだから、ある程度の言語、宗教、文化的な壁や家族問題と、常に葛藤しているのは当たり前なのではないかと思う。進歩党は、どれほど「生粋のノルウェー人」に同化させたいのだろうか。
進歩党は、他国のメディアでは、「極右」、「(右翼)ポピュリスト」、「反移民政党」と例えられることが多い。政党を頻繁に取材に訪れる筆者には、たびたび「自分たちはリベラリスト政党だよ」と主張してくる。
「個人の自由を尊重」するはずのリベラリストが、なぜ移民・難民の価値観やライフスタイルを制限しようとするのか?それは、「外の国の者たちが原因で、自分たちの自由が制限される」からだ。
紛争国から逃れてくる人々を、「未来の納税者」としてよりも、「社会のリスク」として警報を鳴らす進歩党。その政策が国民に支持され続けるかどうかは、来年の国政選挙で決まる。
Phoot&Text: Asaki Abum