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「“気が強い”と“気持ちが強い”は違う」倉田茉美の新境地

中西正男芸能記者
舞台「くちづけ」に出演するイラストレーターの倉田茉美

 Amazonプライム・ビデオ「バチェラー・ジャパン シーズン2」に出演し注目を集めたイラストレーター・倉田茉美さん(30)。今月、来月と全国で上演される舞台「くちづけ」(作・演出、宅間孝行)に主要キャストの宇都宮智子役で出演します。経験のない領域での葛藤、そして、そこでつかみ取ったもの。今の思いを吐露しました。

「気が強い」と「気持ちが強い」は違う

 今回「くちづけ」でイラストレーターとして、ポスターやチラシのイラストを担当させていただくことは決まっていたんです。ただ、その時点で(主要キャストの)宇都宮智子ちゃんの役が決まってなくて。結果、その役を私がやらせていただくということになりまして。

 もともと「くちづけ」の大ファンで10年前の初演から見てたんです。だからこそ、その作品のイラストを担当させてもらえる。その時点で本当に嬉しかったんですけど、さらにキャストとしても参加できる。まさに奇跡そのものでした。

 ただ、けいこが始まるとその喜びも一変しました。イラストレーターとして仕事をしている時は、自分を出すというか「倉田茉美として誇りを持っていること」がベストだったんですけど、けいこでは受動的というか「いかに倉田茉美を捨てられるか」が求められる。

 けいこだとか、舞台だとか、そういう領域だけでなく、一人の人間として考えさせられる日々でした。けいこは約1カ月だったんですけど、無駄なプライドと無駄な気の強さ。そこを演出の宅間孝行さんからビシビシ指摘される毎日でした。

 その中で痛感したのは「気が強い」と「気持ちが強い」は違うということ。

 今までは「気が強いこと」が良いことだと思っていたんです。「私はこう!」と主張することが大切と言うか。でも、それは「気持ちが強い」わけではない。ずっと、主張することで生きてきた自分が、よくなるために自分を捨てる。その感覚を持つことはすごく難しいことでしたし、今でも、それがどこまでできているのか分からないところもあります。でも、最初から比べれば、そこの意識は大きく変わった部分だと考えています。

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我が強い人間

 あと、宅間さんから言われたのが「自分のことでしか泣けないんだね」ということでした。自分を通して共感できる部分でしか表現できない。舞台に入り込めない。実際、ズバッと本当のことを言われましたし、かなりグサッともきました(笑)。でも、内側から根本的に変わらないとどうしようもない。そんな舞台の厳しさを教えていただきました。

 それと、私は本当に我が強い人間なんです。それは自分でも分かっているし、人としゃべっている時も、自分で話しながら、うなづくんです。自分がしゃべっていることを、自分で認めながら前に進んでいくというか。人と話しているのに、全部自分で完結させているというか、実は、それでは会話になっていない。

 ちゃんと人と話すならば、顔は動かさず、しっかりと相手の話を聞く。お芝居云々の前に、恥ずかしいくらいコミュニケーションの基本なんだと思うんですけど、ド素人だから、それも言われないと分からない。自分ではない誰かを演じる中で、逆に、この上なく自分を知る時間にもなりました。

 思うに任せないこともたくさんありましたし、けいこでも「こんなに泣く人間はいない」というくらい泣きました(笑)。その度に(共演の)金田明夫さんがいつも励ましてくださるんです。「涙の分だけ必ず幸せになれるから。実際に幕が開いて、お客さまの拍手をもらったら、それが一気に喜びになるよ」と。

 その言葉は本当にありがたかったです。そして、一方、経験がない私が舞台に立つためには厳しく言われないとできないことがあったのも間違いないです。どちらの面からも、本当に特別な時間をいただきました。

 これから全国各地での公演が始まっていくんですけど、全ての公演が終わったら…、そうですね、たらふくお酒を飲みたいです(笑)。今はお酒を飲んだとしても常に舞台のことが頭を巡りますから。終わったら、ま、ワインかな、まずは好きなだけ飲んでみたいです(笑)。

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(撮影・中西正男)

■倉田茉美(くらた・まみ)

1990年6月14日生まれ。京都府出身。アーティスト、イラストレーター、コラムニスト。Amazonプライム・ビデオ「バチェラー・ジャパン シーズン2」に出演し、注目される。舞台「くちづけ」に宇都宮智子役で出演する。公演日程は愛知公演(10月23日~25日、刈谷市総合文化センターアイリス大ホール)、東京公演(10月29日~11月8日、サンシャイン劇場)、北海道公演(11月20日~21日、道新ホール)、大阪公演(11月25日~29日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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