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「片づけられない女」から考える、片づけの役割分担

藤原友子小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

私は、片づけを通じ誰かのマネをするのではなく「自分らしい暮らしを選べる人」を増やす活動を始めて9年になります。

この9年の間に「私は片づけられない女です」という方に何度もお会いしました。そして、そんな私自身も実は「元片づけられない女」です。しかしこれまで「片づけられない男」という言葉をあまり聞いたことがないのです。

これは、一般的に女性は片づけが苦手な人が多く、男性は片づけができる人が多い、ということでしょうか?

いえ、そうではなく、どうやら片づけ=女性のすること、女性なら片づけはできるだろう、(女性ならできてほしい)というイメージが根強くあるようです。

ライフスタイルの変化で変わってきた家庭での男女の役割

確かに、私も子どもの頃、家の片づけは母の仕事だと思っていました。昔のドラマでも、夫が脱いだジャケットや脱ぎっぱなしの靴下などを妻が片づけるというシーンを観た記憶があります。

しかし時代は変わり、様々な働き方が存在するようになり、それに伴いライフスタイルも昔では考えられないくらい多種多様になっています。

ひと昔前であれば、男性は外で働き、女性が家事をこなすという時代がありましたが、今では男女関係なく外に働きに出るし、今は男性だって在宅で働く人もいます。

男性は外、女性は家という考え方がスタンダードではなくなり、家の片づけだけでなく、家のことは女性がするべきという考え方が変わってきているのです。

秘密にしたい妻と、できない妻を責める夫

私が仕事の始めた9年前は、女性が片づけのサービスを利用する際には「夫には秘密でお願いしたい」と言われたことが何度かありました。

夫に秘密にして欲しい理由は、本人が片づけを人に頼むことが恥ずかしいと思っている、夫が片づけを人に頼むなんて恥ずかしいと思っているなどです。

私は家族の了承を得ることができないお客様には、片づけは主婦の仕事ではないこと、家事の一部として考えられるけど、家族みんなで協力するものだとその都度お伝えしてきました。

また、これまでのお客様の中には、散らかった部屋に帰宅した夫から「俺は仕事で疲れているのに、なんだこの家は、豚小屋以下か」と強く言われたことのある女性もいました。

家の片づけができていないことは、妻である女の責任であると思っているのでしょう。

しかし、私も女なのに片づけはできませんでしたし、結婚をしたからと言って急にできるようになったわけでもありません。

昔に比べと難しくなった片づけ

私が片づけに取り組み始めたのは15年前のことです。片づけができるようになり気づいたのは、私は「片づけができない」ではなく「片づけ方を知らなかった」ということでした。

今でこそ、様々な片づける、収納する、整える方法とアイデアがあり簡単に知ることができますが、

私が子どもの頃は、そういったものを知りませんでしたし、かと言って学校で習うものでもなく、家庭でなんとなく覚えていくもの、身についていくものと考えられていました。

また、今のようにSNSで他人の暮らしの様子を知る機会のないので、だれかと比べることもなく、なんとなく不便に感じることはあっても、何とかやり過ごしてきました。

しかし、今は昔に比べ、モノが安く、簡単に手に入る時代です。スマホがあればすきま時間でも、簡単に他のモノと比較し買い物をすることができます。

簡単に安く手に入るのはよいことですが、よく考えずに買ってしまうことも多くなり、家から出ていくモノの量より、入ってくるモノの量が圧倒的に多い家庭が多いのです。

家の中がモノであふれていて、どこに何があるかわからないけれど、探す時間もないから結局購入し、さらにモノが増え、モノの管理が困難になる家庭もあります。

そしてSNSの影響で、今まで見えなかった人の暮らしがよく見えるがゆえに、キレイに整った家がまるで、お手本のように認められることもあり、片づけが苦手な人がまるで悪いようなイメージになっています。

だから、片づけができないことを気にし、自信を無くす人が増えるため、そのような人のための片づけの資格も多くあるし、私のような仕事も存在するのです。

約6000個のモノを一人で管理できるだろうか?

床にモノが置かれていてなく、割とスッキリ暮らしている4人暮らしの家庭でも、約6000個ものモノを所有していると言われています。

家族の人数がこれより多かったり、引き出しの中がモノでパンパンであったり、床にモノを置きっぱなしの家は、10000個以上のモノが家にあるかもしれません。

片づけを主婦が行うということは、約6000個のモノを一人で管理するということです。

女性の社会進出が進み、女性が家のことを全部請け負える時代ではなくなっています。いくらお掃除ロボット、食器洗い乾燥機、など高機能な家電が登場しても、約6000個のモノの管理は人間が行うしかありません。

自分の暮らしに必要なモノは自分で選び、自分で管理する時代に

ここ数年、私に片づけのお手伝いをお願いするのに、家族(主に夫)に秘密にして欲しいというお客様はいなくなり、むしろ難しいと感じることは得意な人に頼めばいいと考える人が多くなってきました。私を歓迎してくれ、一緒に片づけをしてくれる男性も増えてきました。

これから時代が変わっても、片づけられない、片づけが苦手な人はいるでしょう。親が忙しく働くので家庭でじっくり習う機会もあまりないでしょうし、簡単にモノが手に入り、増えやすいので、モノの管理や片づけがが難しい時代です。

男性は外で働き、女性は家のことをするという考え方がスタンダードではなくなった現代では、家の中のモノの管理は、女性の仕事ではなく、それぞれが行うのが理想です。

子どもの頃、家のことを母親がすべてすることが当たり前の家庭で育った男性には理解するようになるには、少し時間がかかるかもしれません。

しかし、「片づけ」ではなく、「自分のモノの管理」と考えるとおのずと自分も協力しなくてはいけないことと思い、少しずつ意識が変わるかもしれません。

小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

片づけのプロとして活動を始めたのに、自分の家は「片づけても、また散らかってしまう」という矛盾に悩む。家が散らかってしまうことを隠そうとしていたが、「いつもキレイじゃなくてもいい。何かあったときにすぐに片づく家にしておけばいい」と開き直り新たなメソッドを確立。 いつもキレイにしなくちゃいけない、もっと頑張らなくちゃいけない、そんなプレッシャーから解放され、もっと自由に、その人らしく生きるお手伝いを「片づけ」を通して行っている。著書『片づけられない主婦と片づけ嫌いの子どもを180度変える本』(マガジンランド)

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