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【年度内五冠ロード】藤井聡太三冠(19)鮮やかに豊島将之竜王(31)を破り王将リーグ3連勝トップ!

松本博文将棋ライター

 11月5日10時。大阪・関西将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲藤井聡太三冠(19歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時48分に終局。結果は101手で藤井三冠の勝ちとなりました。

 藤井三冠はこれで3勝0敗。リーグでたた一人無敗をキープし、成績でトップに立ちました。11月9日、挑戦権を争う羽生善治九段(3勝1敗)との対戦は、令和将棋史における名勝負となるかもしれません。

 豊島竜王は2勝3敗で挑戦の可能性はなくなりました。11月24日の最終戦では残留を目指して近藤誠也七段と対戦します。

 豊島竜王と藤井三冠の対戦成績は豊島9勝、藤井12勝。豊島竜王6連勝で始まった両者の対戦ですが、現在は藤井三冠が6連勝中です。

 両者はこのあとも、11月12日・13日に竜王戦七番勝負第4局、11月21日に日本シリーズ決勝と対局の予定が組まれています。

 藤井三冠の今年度成績は38勝7敗(勝率0.844)です。

 また直近一年間の先手番成績は30勝1敗(勝率0.968)となりました。

 藤井三冠は竜王戦七番勝負であと1勝すれば、豊島竜王から竜王位を奪取して史上最年少四冠となります。さらに王将戦で挑戦権を獲得し、渡辺明王将から王将位を奪取すると、年度内五冠の可能性まであります。

底しれぬ強さの藤井三冠

 藤井三冠先手で、戦型は相掛かり。藤井三冠が歩得をしたのに対して、豊島竜王は中段に銀2枚を進め、端1筋に角を出て攻めの姿勢を見せます。「序盤は方針がわからなくて」という藤井三冠。現棋界最高峰による難解な進行となりました。

 豊島竜王の角と銀のコンビネーションによる攻撃がかなりの迫力に見えたところの49手目、藤井三冠は中央を受けずに、二段目の玉をじっと一段目に引きました。リアルタイムでご覧になっていた方は、解説陣とともに大きな声をあげられたかもしれません。受けの達人、大山康晴15世名人を思わせるような絶妙のかわしでした。

 思わず長考に沈んだ豊島竜王。ここでは「ちょっと失敗したかな」と思っていたそうです。考えること50分、端9筋を突き捨てて攻めを続けました。藤井三冠は端1筋を突いて応戦。戦いは盤面全体に広がり、ほぼ互角のまま推移していきます。

 それほど形勢に自信を持っていなかった藤井三冠。67手目、端9筋に飛車を回ったところで「難しくなった」と感じたそうです。

 見る者をうならせる応酬のあと、藤井三冠は次第に攻勢を強めていきます。気がついてみると、優位に立っていたのは藤井三冠でした。2枚の角を基点に的確なパンチを続け、2枚の角を相手に渡す間に左右はさみうちの寄せ形を作ります。驚いたことに、豊島玉は一気に受けなしに追い込まれました。

 最後、豊島竜王は藤井玉に迫って形を作ります。藤井三冠はきれいに豊島玉を即詰みに討ち取り、熱戦に終止符を打ちました。

「前半、いい形で終えることができたので、挑戦を目指していきたい」と語る藤井三冠。昨年のリーグでは開幕から3連敗でしたが、今年は逆に開幕から3連勝です。

 さて次戦はいよいよ、永世王将・羽生九段との対戦。今年度屈指・・・。いや、将棋史上屈指の名勝負となるかもしれません。

 なお本日おこなわれた広瀬章人八段-糸谷哲郎八段は広瀬八段の勝ち。敗れた糸谷八段は4連敗で陥落が決まりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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