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日本サッカーの進歩のスピードが世界より遅い理由

杉山茂樹スポーツライター

日本のサッカーは巧くなっていない。進歩のスピードが世界より遅い。日本が4−0で勝利した先日のタイ戦からも、この傾向はしっかり見て取れた。進歩の度合いで日本はタイに遅れている。このことが白日の下に晒された格好だ。短期的には喜べても、長期的には喜べない。その最たる例だと言いたくなる。

こうなってしまった理由を考えるとき、引き合いに出したくなるのが、世界の流れだ。プレッシングというサッカーゲームの進め方が、競技のレベルの向上に大きな役割を果たしたことは、歴史を振り返れば一目瞭然になる。

アリゴサッキの提唱によりプレッシングサッカーが始まったのは80年代後半。しかし、もともと守備的サッカーを好むイタリアには、それに対し懐疑的な眼差しを送る人もいた。

「中盤でプレッシャーがきつくなると、選手が思うようにボールを操作できない。つぶし合いが激しく、直ぐにボールを奪われてしまうので、見ていて面白くない」

その結果、90年代後半にさしかかると、イタリアではプレッシングが後退。後ろで構える守備的サッカーが幅を利かせるようになった。一方、プレッシングは発祥の地イタリアで衰退するのを尻目に欧州全域に伝播。全土で興隆することになった。

当初、直ぐに奪われてしまうことが多かったのは事実。中位チームのプレス合戦は、目に優しくない攻防だった。しかし、それからおよそ20年の歳月が経過したいま改めて振り返れば、このプレッシングが、選手のボール操作術の上昇を後押したことは疑いのない事実に見える。

狭いスペース、厳しいプレッシャー。この環境の中で、ボール保持者のボール操作術は飛躍的に上昇。プレッシングの興隆は、かつてイタリアで、サッカーをつまらないものにすると論じられた声を無力化するに至った。

残念ながら、日本サッカーはこの流れと関わっていない。プレッシングが興隆したことがないのだ。イタリアの90年代以降の状態と同様の時を過ごしている。そんな感じだ。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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