牧丈一郎投手19歳、試行錯誤する2年目の夏《阪神ファーム》
セ・パ交流戦を終えた1軍は、きょう28日にリーグ戦再開。阪神は1日遅れて、あす29日の中日2連戦(ナゴヤドーム)からです。それまでの間に、オールスターゲームの選手が続々と決定しましたね。ファン投票結果が24日に、選手間投票の結果が27日に発表されています。このあと7月1日に監督推薦で選ばれたメンバーが加わり、さらに“プラスワン投票”によって選出されたリーグ1選手ずつを追加して、7月9日に全陣容が出揃うという段取り。1日から始まるプラスワン投票、私も張り切って参加しますよ。皆さんもぜひ!
ファームの方も、26日にフレッシュオールスターゲームの出場選手が決定しました。阪神から選ばれた5選手のコメントなどは、こちらの記事でご覧ください。→<フレッシュ球宴でつかむ何かが、後半戦の飛躍につながる>
さて、阪神ファームはきょうから広島3連戦に臨んでいます。28日と29日はマツダスタジアム、30日は由宇での開催。マツダの2試合はできそうですね。日曜日の由宇は微妙でしょうか。首位・阪神と2位・広島のゲーム差が2で迎えた今回は、阪神の3連敗と広島の3連勝で首位が入れ替わる可能性もあった“首位攻防3連戦”でした。でも、きょう28日の初戦に阪神が6対3で勝ったため、残り2試合を落としたとしても首位は変わりません。きょうは熊谷選手が2安打3打点だったようですよ。
今週前半は公式戦がなく、鳴尾浜にソフトバンクの3軍を迎えて練習試合を行いました。この期間はソフトバンクも1軍の試合がなかったため1軍の若手選手が2軍公式戦に出て、2軍のメンバーがこの練習試合に回ったとのこと。よって、23日までタマスタと久留米で対戦していた顔ぶれが何人かいましたね。
2試合の結果は、25日が6対1でソフトバンクの勝ち、26日は4対4の引き分け。25日は試合後の取材もできたので、コメントをご紹介しますが、26日は試合結果のみです。ご了承ください。ではまず25日から。7回に登板したジョンソン投手が圧巻!1度もバットに当てさせず、すべて三振で三者凡退でした。いいものを見られたとお客様も大喜びです。いや~本当にすごい。
【25日】エラーと四死球からの4失点
《練習試合》6月25日
阪神-ソフトバンク3軍 (鳴尾浜)
ソフ 004 200 000 = 6
阪神 000 100 000 = 1
※特別ルール
◆バッテリー
【阪神】牧-ジョンソン‐斎藤 / 長坂-坂本(7回~)-長坂(9回表)
【ソフ】笠原(7回)-岡本直(1回)-小澤(1回) / 堀内
◆本塁打 ソ:中村宜2ラン(牧)
◆二塁打 神:熊谷、伊藤隼、坂本
◆盗塁 神:片山 ソ:砂川、水谷
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]遊:小幡 (5-0-0 / 0-0 / 0 / 1)
2]二:熊谷 (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
3]右中:伊藤隼 (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0)
4]中右:板山 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
5]左:森越 (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
6]一:片山 (4-3-0 / 1-0 / 1 / 0)
7]指捕指:坂本 (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)
8]捕指捕:長坂 (3-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
9]三:藤谷 (4-0-0 / 2-0 / 0 / 0)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ※
牧 6回100球 (6-3-4 / 6-6) 148
ジョン 1回 11球 (0-3-0 / 0-0) 152
斎藤 2回 31球 (0-1-1 / 0-0) 148
※ジョン=ジョンソン
※トラックマンによる数値
<試合経過>※敬称略
先発の牧は三者凡退の立ち上がりで、2回も先頭の4番・砂川に中前打されるも二塁でタッチアウト、あとは打ち取って3人で片付けます。しかし3回は1死から死球を与え、遊ゴロエラーと暴投、四球で満塁として押し出し四球。続く3番・野村には中前タイムリーを許し、2人を還し、さらに2死後一、三塁となってボークでもう1点。この回4点を先取されました。
4回には2死から8番・水谷の右前打と二盗、そして9番・中村宜の2ランを浴びています。5回と6回は1安打ずつで追加点は与えず。6回でちょうど100球を投げ、6失点で交代です。
7回はジョンソンと坂本のバッテリーで、1番・谷川原をまず空振り三振、古沢は見逃し三振、野村は3球で見逃し三振。なんと1球もバットに当たっていません!8回は斎藤が登板し、先頭に四球を与えて二盗されるも後続を断って無失点。9回はキャッチャーが長坂に戻って、8番の代打・張本から真っすぐで空振り三振を奪うなど三者凡退で締めています。
一方、打線は1回が熊谷の四球のみ。2回は片山の左前打と盗塁、長坂の死球などがあったものの得点なし。3回は2死から伊藤隼が二塁打しただけでした。6点リードされた4回に、ようやく反撃。1死から片山が中前打して続く坂本は二塁打!ライトの守備がもたつくのを見て三塁の中村コーチが手を回し、片山は一気にホームイン(ヒットランプしかつかなかったのでタイムリー二塁打にすべきところですが、もし公式記録があれば二塁打とエラーだったでしょう。よって坂本の打点は0にしました)。
1点を返したものの5回は三者凡退、6回は森越の四球と片山の右前打などで2死二、三塁とするも無得点、7回は2死から熊谷が左越え二塁打を放ちますが、やはり無得点。8回は1死から森越が左前打、しかし片山の三振と二盗失敗の併殺。9回は長坂の左前打だけで反撃できず、試合終了です。
「僕なりには成長できたかなと思う」
2日くらい前に投球フォームを変えたという牧投手。試合で投げたのは、この日が初めてです。「フォームを変えて、しっくりした感じはあったけどセット(ポジション)になった時に、まだまとまっていない。セットでちゃんとピッチングできなかったというのが…。ワインドアップの時は打たれていないのに、セットに入ったら打たれました。自分のボールを投げられなかったわけではないんですけど」
フォーム変更は「甲子園で打たれてから試行錯誤した結果」だと言います。6月14日の中日戦で、初めて甲子園のマウンドに立った牧投手ですが、1回に2本のホームランを浴びるなど5安打5失点。2回で降板しました。その際に「せっかく先発のチャンスをもらったのに、それを生かせず悔しいピッチングになってしまった」と猛省。そのあと「監督やコーチからフォームのことを言ってもらって」試行錯誤した10日間だったのでしょう。
そういえば3月に“2段モーション”を取り入れた時も「最近やり始めたとこ」と言っていたような。今回はその2段モーションを緩やかにした感じですかね。具体的に変えたのは「ノーワインドアップにしたこと。足の振り幅を狭めたこと。できるだけナチュラルというか自然な形で、オーソドックスな投げ方にしたこと」だそうです。それでも「2段の時と同じく、無駄な力を入れずにスピードは出てくれましたね」と収穫あり。「あの甲子園に比べたら、僕なりには成長できたかなと思います」
奪三振はフォークで2つ、スライダーで1つ奪いましたが、ホームランも死球もフォークだったとか。「2回までよかったのに、3回から腕が振れなくなって。真っすぐも変化球も、とにかくセットでの精度を上げていかないと」。また、6イニングも100球も多分初めてだと言っていたけど、昨年10月18日のフェニックス・リーグ(ロッテ戦)で先発して6回まで投げていますね。球数はわかりませんが。
7回はジョンソン投手のピッチングを見ていた牧投手。「僕のあとに投げたらアカンって~」と苦笑しながら「すごいですね。何もかも。真似しないといけないことがいっぱいありました。タイミングを変えたりすることは僕にもできるので、やっていければ」と話しています。最後に牧投手が締めくくった言葉を書いておきましょう。これが次へとつながるはずです。
「自分自身にメッチャ腹立つけど、何もできなかったわけじゃないので」
危険球退場から1週間ぶりのマウンド
斎藤投手は18日に中村奨選手への死球で危険球退場となった広島戦以来、ちょうど1週間ぶりの登板でした。2イニングを投げ無安打無失点で終えています。「(死球のことは)やっぱり気になりますね。まだ、きょうが初めてなので…。でもこれから少しずつ」。打者に向かって投げていけば、乗り越えられるでしょう。
この日のピッチングについて「きょうは自分が思っているのと全然違う真っすぐでした。シーズンを通して、こういう(真っすぐが)“いかない時期”ってのは絶対あるので。練習するなりして、生きのいい真っすぐを投げられるようにしっかり上げていきたいと思います」
9回の三振はよかったでしょう?「うーん。投げた感覚と、投げてからキャッチャーのところへ行く感覚が、まだ(理想とは)ほど遠い。そのギャップを埋められるようにしたいです。自分が投げているイメージと違うので。でも自分の調子が悪くても結果は出さないといけないから、悪いなりの投球を求めていきたいと思う。真っすぐも変化球も、自分の納得するボールを投げてバッターと対戦できるように上げていきたい」
支配下を勝ち取るには自分を変えないと
片山選手は練習試合とはいえ、1打席目から3連続安打。「公式戦で打てば、それはもっといいアピールになるし嬉しいけど、こういうところで使ってもらってチャンスをいただいているなら、そのチャンスをモノにしないと第一歩が始まらないということでもある。こういった日々の積み重ね、僕にとって無駄な日ってのは一日もないから。結果として打てたことで、また1つチャンスにつながるかなと。意味のある日になったかなと思います」
ここで、“日付”は気になるかと聞かれ、一瞬考えて「え?」と返した片山選手ですが、すぐに「ああー、まあ周りでね。チラホラとね」と答えて苦笑い。支配下選手登録の期限が7月末ということを踏まえての質問でした。「でもどうですかねえ。そこがすべてではないと言うと語弊があるかもしれないけど。それが1つの目標の期限ではありますし。これから大事な1か月になると思いますが、やることは変わらない」
さらに続けて「それ以上に大事なことが、もっとたくさんある。周りから認めてもらえるように、僕が変わらなきゃいけない、成長しなきゃいけないことがたくさんあると思うので。仮に、そのへん(自身の成長)がないまま支配下選手になれたとしても、自分の中で納得できないですね。もっともっと成長していかないと、と僕も周りも、監督やコーチも思っています」と真剣な口調で語る片山選手。
「どうしても育成の立場だと支配下へ、と追い立てられるし、もちろん追いかけなきゃいけないことだけど、それ以上に“手前の”基本的な部分で大事なものがたくさん落ちていると思うんです。それを今、多くの人に言っていただけている。自分で気づいて変わっていかないと」。7月のフレッシュオールスターゲームも、その成長を促す時間になるでしょうね。
【26日 終盤に追いついて引き分け】
翌26日は呂投手と古谷投手の先発です。阪神は1軍から上本選手が参戦し、しかもファーストで出場!少し前から1軍の守備練習でも一塁を守っていたそうですが、ビックリしましたね。それも鳴尾浜だから不思議というか、何だか新鮮な感じで。上本選手は最後まで1番ファーストで臨み、3打数3安打2打点に2四球と5打席すべて出塁。盗塁も決めています。
《練習試合》6月26日
阪神-ソフトバンク3軍 (鳴尾浜)
ソフ 000 003 100 = 4
阪神 001 100 300 = 4
※9回引き分け
◆バッテリー
【阪神】呂-尾仲‐高橋聡-岡本 / 長坂-岡崎(7回~)
【ソフ】古谷(5回)-奥村(1回)-中村晨(2/3回)-重田(1回1/3)-小澤(1回) / 谷川原-堀内(9回裏)
◆本塁打 ソ:砂川2ラン(呂)、砂川ソロ(尾仲)
◆二塁打 神:熊谷、板山
◆盗塁 神:上本 ソ:田城、谷川原、中村宜
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]一:上本 (3-3-2 / 0-2 / 1 / 0)
2]遊:小幡 (3-2-0 / 0-2 / 0 / 2)
3]中左:荒木 (5-2-1 / 1-0 / 0 / 0)
4]右中:中谷 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
5]左:俊介 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃右:伊藤隼 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
6]指:ナバー (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
〃打指:板山 (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0)
7]三:藤谷 (2-0-0 / 1-2 / 0 / 1)
8]捕:長坂 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)
〃捕:岡崎 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)
9]二:熊谷 (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0)
※ナバー=ナバーロ
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ※
呂 5.2回107球(7-9-1 / 3-2) 146
尾仲 1.1回 32球 (4-3-0 / 1-1) 149
高橋聡 1回 14球 (0-2-0 / 0-0) 139
尾仲 1回 14球 (0-2-0 / 0-0) 145
※トラックマンによる数値
<試合経過>※敬称略
先制は阪神でした。3回に先頭の熊谷がライトへの二塁打を放ち、上本の中前タイムリーで生還!他の回も四死球やヒットなどでチャンスを作りながら追加点を奪えません。一方、4安打と味方のエラー2つで毎回走者を出した呂ですが、5回までに8三振を奪って無失点と粘りのピッチングを見せます。
しかし6回、先頭の3番・野村に左前打され、続く砂川の2ランで逆転。1死後にショートのエラーなどで2死二塁として8番・日暮の中前タイムリー。計9奪三振ながら7安打3失点(自責は2)で呂は降板です。代わった尾仲は連打で2死満塁としますが古沢を空振り三振に切って取り打者9人で攻撃終了。ところが7回、1死から砂川にソロを浴びて4対1となりました。
打線はその裏、先頭の藤谷が四球を選び暴投で二塁へ進むと、2死後に上本の左前打で生還!小幡は四球で2死一、二塁となって続く荒木が中前タイムリー!さらにセンター・田城のミスも重なって小幡も還り、この回3点を取って追いつきます。これも前日と同様、ヒットランプしか点灯していませんが、公式記録なら走者の生還はタイムリーとエラーでしょう。
4対4となり、8回は高橋聡が先頭から連続三振の三者凡退!9回は岡本がやはり先頭から連続三振を奪って三者凡退と、完ぺきなピッチングです。打線は8回に板山の二塁打があったものの無得点。9回は上本の四球と二盗、小幡の右前打で1死一、三塁としますが、荒木の左飛で上本は本塁タッチアウト。併殺で試合終了です。
<掲載写真は筆者撮影>