Yahoo!ニュース

この投手が加わり「クローザー・トリオ」が誕生!? 今シーズンは3人で計72セーブ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケンドール・グレイブマン Jul 23, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シカゴ・ホワイトソックスが、ケンドール・グレイブマンを手に入れたようだ。MLBネットワークのジョン・ヘイマンによると、契約は3年2400万ドル前後だという。

 今シーズン、グレイブマンはシアトル・マリナーズとヒューストン・アストロズで投げた。マリナーズではクローザーを務め、10セーブを挙げた。

 昨オフ、ホワイトソックスは、3年5400万ドルでリーアム・ヘンドリクスを迎え入れた。今年の夏は、シカゴ・カブスからクレイグ・キンブレルを獲得。今月初旬には、キンブレルの契約についていた1600万ドルの球団オプションを行使した。

 今シーズン、ヘンドリクスはア・リーグ最多の38セーブを挙げ、キンブレルはカブスで23セーブとホワイトソックスで1セーブを記録した。

 ヘンドリクスとキンブレルにグレイブマン、3人合わせると72セーブだ。キンブレルとグレイブマンは計17ホールド(6ホールド/11ホールド)も記録している。それぞれの防御率は、2.54、2.26、1.77だった。

 ただ、この3人が来シーズンのブルペンに揃うかどうかは、わからない。ホワイトソックスの思い描くシナリオどおりにいけば、キンブレルはトレードで他球団へ移るはずだ。もともとその可能性はあり、USAトゥディのボブ・ナイテンゲールは、10月半ばに「オプション行使→トレード」とツイートしていた。グレイブマンが加わったことにより、その可能性はさらに高まったはずだ。

 オプションを行使して残留させたにもかかわらず、その直後に放出するというのは、奇妙な気がするかもしれない。だが、オプションを破棄した場合、キンブレルはFAになり、ホワイトソックスは何の代償も得られない。解約金の100万ドルを支払うだけだ。FAにクオリファイング・オファーを申し出て、その選手が他球団と契約すれば、翌年のドラフト指名権をもらえるが、キンブレルに対してはそれもできない。過去に申し出られたことがあるので、クオリファイング・オファーの対象外だ。

 一方、オプションを行使した場合は、そこからキンブレルをトレードで放出し、他の選手を獲得することができる。トレードが成立しなくても、キンブレルを登板させればいい。他2人の契約、ヘンドリクスの年平均1800万ドルとグレイブマンの年平均800万ドルからわかるとおり、セットアッパーあるいは中継ぎに年俸1600万ドルはかなり高額だが、まったくの無駄にはならない。

 キンブレルとしても、トレードに不満はないだろう。史上7人目の400セーブまで、あと28セーブ。ホワイトソックスにいたままでは、セーブ機会はなかなか巡ってこない。

 実績は十分だ。トレードのネックになるのは、年俸の高さとホワイトソックス移籍後の成績だろう。移籍前の39登板で防御率0.49に対し、ホワイトソックスでは24登板で防御率5.09に終わった。ただ、ホワイトソックスで結果を残せなかったのは、セットアッパーという不慣れな役割のせいかもしれない。2010年にメジャーデビューしたキンブレルは、その翌年からクローザーとして投げてきた。

 クローザーの需要はある。ホワイトソックスが、交換に獲得する選手にそれだけの価値があると考え、キンブレルの年俸の一部を負担すれば、トレードは成立しそうな気がする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事