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名古屋市が同人誌出版に助成? 名古屋市に聞く

dragonerWebライター(石動竜仁)
世界最大の同人誌即売会コミックマーケットの様子(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

名古屋市の同人誌出版助成

 名古屋市が同人誌の出版にかかる費用を助成すると話題になっています。きっかけは、Twitterに投稿された次のツイートでした。

 ツイートでは、名古屋市の広報紙にある助成事業の募集が驚きとともに紹介されています。「同人誌」と言うと、マンガ同人誌の方をイメージされる方が今は多いかもしれません。しかし、この助成事業は名古屋市公式サイト上で公開されている次の要件(PDF)を見る限り、昔からある文藝同人誌や地域文化研究を対象にした助成のようです。

名古屋市内を基盤として概ね3年以上組織的・継続的に活動し、次の1または2に当てはまる団体で、対象となる出版物の年間の平均発行部数が200部以上の団体です。

1 小説、評論、詩、短歌、俳句または川柳等の文芸創造団体

2 名古屋の文化(郷土史、芸術文化、文化財、生活文化等)に関する文化研究団体

出典:平成30年度 文化関係自費出版助成 補助金のご案内

名古屋市の自費出版助成の案内
名古屋市の自費出版助成の案内

 この条件ですと、一般的にイメージされるマンガ同人誌は対象にはならないようです。また、個人で出版しているものは対象外で、サークルや研究会などの団体活動も必須なようです。しかし、最も著名な同人誌即売会である「コミックマーケット」では、マンガ以外にも文藝や地域紹介を行う団体・グループも数多く出展しています。これらコミックマーケットに出展されるような同人誌でも助成の対象になるのでしょうか? 名古屋市に問い合わせてみました。

質問:名古屋の文化に関する研究団体の発行物も対象になるとのことですが、例えば名古屋のB級グルメなどの食文化を研究しているサークルの同人誌なども対象となると考えていいのでしょうか?

回答:審査にあたっては、外部の有識者からなる意見聴取会でどんな団体かを確認し、それに基いて決定しています。個別の要件をすぐにお答えするのは難しいです。

 個別の申請についてその場で助成対象になるかは判断が難しいため、助成対象となるかは申請して審査を経なければ確実ではないようです。

 また、要件には次のような除外項目もありました。

不定期刊行物及び個人で発行している自費出版物は対象外です

出典:平成30年度 文化関係自費出版助成 補助金のご案内

 不定期の刊行物で個人発行誌は対象外とのことです。コミックマーケットは例年8月、12月開催ですが、これは不定期とみなされるのでしょうか? この点について伺うと、

質問:年1回以上定期的に発行している同人誌を含む出版物が助成の条件となっていますが、例えば夏冬といった季刊でも条件は満たしていますでしょうか?

回答:年1回以上で、200部以上刊行されていれば対象になります。

 少なくとも、年1回以上の刊行実績があれば問題はないようで、この点はクリアーしているようです。

 また、条件には「名古屋市内を基盤とした活動」という条件はありますが、これは活動や研究対象が名古屋市であることを条件としたもので、事務所や代表の住所が名古屋市内にある必要はなく、市外に居住している方でも助成例はあるとのことでした。

 結論から言えば、主宰団体の実績や活動内容にもよるので、申請して審査を経ない限り助成対象となるかは分からないようですが、名古屋市での活動や名古屋市を取り扱った団体による同人誌ならば、助成の可能性は無きにしもあらずのようです。

名古屋市以外の助成

 しかし、このような助成制度は名古屋市だけでしょうか? 調べてみると、市民の創作・文化活動に助成を出す自治体は他にもあるようです。

 例えば、豊橋市では「本市の出版活動を盛んにし、市民文化の振興を図るため、市民が自費出版する文学並びに豊橋市の文化、自然及び歴史を内容とする出版物で、優れたものに対し、出版経費の一部を助成」しています(豊橋市サイト)。

 また、名古屋で発行されている芸術批評誌『REAR』は、2017年12月8日付けの中日新聞によれば、元々は同人誌に近い形で創刊されたものが、現在は愛知県から一部助成を受けて全国の書店でも販売されているようです。同人誌から地域芸術を伝える芸術批評誌になった例と言えるかもしれません。

 もし、これをご覧の方で、文藝や地域文化に関わる自費出版本を出されている方がいらっしゃいましたら、都道府県や市町村の文化事業を確認してみてもいいかもしれません。文藝や地域文化については、商業出版が成り立ちにくい一面もあります。地方自治体がこのような形で助成を行う制度が今後も続けば良いのですが……。

Webライター(石動竜仁)

dragoner、あるいは石動竜仁と名乗る。新旧の防衛・軍事ネタを中心に、ネットやサブカルチャーといった分野でも記事を執筆中。最近は自然問題にも興味を持ち、見習い猟師中。

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