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【大河ドラマ光る君へ】三浦翔平さん演じる貴族・藤原伊周が人々から嫌われた理由

濱田浩一郎歴史家・作家

大河ドラマ「光る君へ」において、平安時代中期の公卿・藤原伊周(974〜1010)を演じるのは、俳優の三浦翔平さんです。伊周は、藤原道長の兄・道隆の子であり、道長の甥に当たります。「光る君へ」では、次々とキャラが濃い人物が登場していますが、伊周は眉目秀麗(容貌が端正)でありながらも、性格は相当な腹黒。一条天皇の中宮となった妹の定子に「皇子を産め」としつこく迫ったりしていました。そんな伊周ですが、父・道隆の生前には、父の引き立てもあって、20代の若さで内大臣にまで昇進しています。年上で、叔父の道長を追い抜いていたのです。父の死後は、関白となることを望みますが、それは叶いませんでした(関白は、道隆の弟・藤原道兼が就任)。

ところがそれまでの間、伊周は内覧(天皇に奉る文書などを先に見る。摂関に準じる扱いを受けた)として、全てのことを処理していたようです。『栄花物語』(平安時代の歴史物語)によると「着物の長短まで改められた」ということで、一部の人々の顰蹙を買ったようです。「(道隆の)喪中の間は、そうしたことはされぬ方が良いのに」との非難があったとのこと。関白が他人の手に渡りそうとなった時などには、伊周は外祖父の高階成忠に「祈祷を怠るな」と命じたと『栄花物語』にはあります。

同書の記述から察するに、これは(我が手に関白を)と願う祈祷ではなく、おそらく、関白になりそうな道兼を呪詛するものだったでしょう。祈祷を命じた記述の後には、道兼の夢見が悪く、心落ち着かぬ様が記されています。そして、道兼は関白に就任した直後に疫病でこの世を去るのです。「人を呪わば穴二つ」(人に害を加えようとして墓穴を掘る者は、その報いが自分にも及び、自分の墓穴も掘らなければならなくなる)との言葉がありますが、長徳の変(996年)で失脚した伊周はその報いを受けたということになるでしょう。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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