【河内長野市】奥河内のゴールデントライアングル、市境にある穴地蔵の穴とは?御利益の高い地蔵様の魅力
河内長野市の範囲を地図で見ると三角形をしています。その北側先端近く、ちょうど大阪狭山市と堺市とで、三つの市の境界線が重なった場所、いわばゴールデントライアングルのようなところに、一体のお地蔵さまが祀られています。
その名前は、穴地蔵と言います。堺から通じている西高野街道から分岐し、天野山金剛寺に向かう天野街道沿いにあります。
地図で表すとこんな感じです。大阪狭山市の最南端で、天野街道がそのまま河内長野市入る境目のところにある穴地蔵。さらに西(左側)は堺市南区なので、ちょうど三つの市の境が重なったところに鎮座しています。
その穴地蔵に行ってみました。これは大阪狭山市側から写したものです。開けた場所にある小さな祠が穴地蔵。堺市側とはこの辺りでフェンスに仕切られているので、ホンモノの国境のように見えないこともないですね。
こうして穴地蔵の前に来ました。さて、いちばん気になるのは穴地蔵の穴、それはどういう意味かということ。
端的に説明すると、このお地蔵さんが、体中にあるすべての穴に霊験があるからなのだそうです。目、鼻、耳などの穴にかかわる病を癒してくれるのだとか。この撮影している間にも、自転車に乗ってきて熱心にお祈りする参拝者の姿がありました。
子どもが生まれ出る穴にもご利益があることから、穴地蔵は子宝にも恵まれるともいわれており、近所はもちろん、遠方からも参拝者が来るそうです。
また、穴地蔵は狭山方向、つまり北に向いています。これは全国に500万はあるという地蔵菩薩のなかでも、400体ほどしかないとされる北向きの地蔵。さらにご利益が高いとの言い伝えがあるんだそうです。
祠の屋根の部分を見ると、赤ちゃんがつける涎(よだれ)掛けがたくさん奉納されていますね。これは子宝への願いが込められたもの、あるいは無事に子宝に恵まれたお礼参りで名前の書いたものを奉納しているためです。
画像の真ん中に三回唱えると書いてありまますが、これは地蔵菩薩の拝み方の方法。「オン カカカ ビサンマエイ ソワカ」という言葉を3回唱えるのです。その意味は、次の通り。
オン=お願いします
カカカ=お地蔵さまの笑い声
ビサンマエイ=稀有な
ソワカ=成就あれ
祠(ほこら)の横に、穴地蔵についての説明版がありました。
説明文を読むと、穴地蔵には道標の役目も果たしていて、光背(こうはい:仏様の後光を表した背後の部分)の右側に「右ハあまの道(天野道)、左ハよつくのき道(四鉤樟道)」と書いてあります。さらに下の部分には「北ハさかい(堺)」と刻んでいるとか。
ちなみに四鉤樟道(よつくのきみち)とは、現在の河内長野市楠町で「四通のお大師さん」との異名を持つ盛松寺を表しています。
これは盛松寺の寺伝によると、空海が盛松寺の近くを通ったときに、疫病で苦しんだ村民がいたので、それを助けるために祈祷をすると、邪気を取り除く霊木の樟(クス:楠)が生えました。
その楠木が4つの枝に分かれ、やがて釣瓶(つるべ:井戸の水をくみ上げる桶)を吊り下げたように繁ったために、四鉤樟と呼ばれ、それが地名になったとか。
盛松寺は冬至に柚子味噌を作っていることでも知られてますが、目の前には西高野街道が通じているので、穴地蔵から盛松寺方面にむかい、さらに西高野街道を通じて高野山方面に行くこともできたわけですね。
地蔵菩薩の中を見ると、赤い涎掛けで見えなくなってはいますが、その上に「右」「左」の文字が見えます。その隣にも石碑のようなものが見えることから、昔は祠もなく、野ざらしの状態で地蔵菩薩が安置されていたと推測されます。
地蔵様は、穴に対するご利益に加えて、旅人が迷わないように、道先案内人の役目も果たしていたんですね。
ちなみに同じ名前の「穴地蔵(外部リンク)」が高知県土佐市にもあるようで、こちらも人の穴を癒す霊験があるそうです。
穴地蔵は天野街道沿いにあるので、ハイキングやウォーキングでも立ち寄りやすい場所。ただし、この周辺にはトイレがないので、行くときには十分注意しましょう。
穴地蔵
住所:大阪府河内長野市小山田境界線(大阪狭山市大野西689)
アクセス:南海千代田駅から徒歩40分
大阪狭山市循環バス大野中バス停より徒歩10分