復活を期す男たちの逆襲。セビージャがモンテッラ政権で再出発。
今季のチャンピオンズリーグ(CL)で、アトレティコ・マドリーがグループステージで敗退したのは驚きだった。だが、それでもスペイン勢は3チームが欧州の16強に名を連ねている。
バルセロナ、レアル・マドリー、セビージャ。「2強」と共に堂々とベスト16入りしたのが、セビージャだ。しかし、セビージャのここまでの道程は決して平坦なものではなかった。
■モンチの退任と監督交代
セビージャは昨夏、スポーツディレクターのモンチがクラブを去った。ダニ・アウベス(現パリ・サンジェルマン)をはじめ、数多の原石を世界中から発掘してきて、セビージャで輝かせた敏腕のスポーツディレクターである。
モンチ以前・モンチ以後。そんな声が聞こえてくるほどに、大きな変化がセビージャを襲った。後任にはオスカル・アリアスが据えられた。めまぐるしいまでの日々に、彼とホセ・カストロ会長は忙殺されることになる。
昨季終了時にホルヘ・サンパオリ監督がアルゼンチン代表に引き抜かれ、エドゥアルド・ベリッソ監督を招聘したのも束の間、ほどなくビトロがアトレティコ・マドリー移籍を決断する。2013年から4年にわたり主力として活躍してきたビトロの退団は、クラブにとっても、セビジスタにとっても心を痛める出来事だった。
この件で責任を感じたホセ・マリア・デル・ニド・カラスコ副会長は辞任の意を表明した。カストロ会長は法的措置を講じると息巻き、一連の移籍騒動は混沌の夏を象徴していた。
■ベリッソ解任の決断
開幕後も、セビージャに「平静」がもたらされることはなかった。首脳陣は昨年12月22日にベリッソ監督を解任している。
昨年11月に前立腺がんを患っていることが判明したベリッソ監督だが、その際にクラブは指揮官へのサポートを約束していた。解任の理由は成績不振だ。
しかし、この決定に首を傾げる者は少なくなかった。セビージャはベリッソ監督解任時、リーガエスパニョーラで5位につけ、コパ・デル・レイで準々決勝進出を果たし、CLでベスト16に進んでいたのである。
パリSGのウナイ・エメリ監督は「セビージャの成績は悪くなかった。我々、監督業に従事する者は、現在を生きるしかないということだ」とベリッソ監督の解任を語っている。2013年1月から3年半にわたりセビージャを率いたスペイン人指揮官には、古巣の対応が現代フットボールの流れに沿ったものだと映った。
ベティスのキケ・セティエン監督は「ベリッソの解任には驚いた。病気の影響があったなら分かるが、各大会での成績を見ると、驚かざるを得ない。彼は素晴らしい監督で、非常にうまくやっていたと思う」と疑問符を投げかけている。
■モンテッラ就任とエンゾンジの処遇
だが、クラブは一度下した決断を翻すような真似はしない。新たに指揮を託されたのは、昨年11月にミランを追われたヴィンチェンツォ・モンテッラ監督だった。
モンテッラ就任で、注目を集めたのが、スティーヴン・エンゾンジの処遇だ。エンゾンジはベリッソ監督との確執が噂されていた。
エンゾンジは昨年11月21日のCLグループE第5節リヴァプール戦、3点ビハインドで迎えたハーフタイム、ベリッソ監督から叱責を喰らった。交代を命じられたエンゾンジは母国語であるフランス語で悪態をつき、両者の関係は修復不可能となったようだ。
しかし、モンテッラ監督は就任してすぐにエンゾンジと話し合いの場を設け、セビージャのために勝利を目指すということで意見を一致させた。エンゾンジは指揮官の初陣となったコパ5回戦第1戦カディス戦で先発に復帰し、セビージャはその試合で2-0と快勝した。
■クラブ史上最高額で加入したムリエル
モンテッラ政権で「復活」したのはエンゾンジだけではない。昨夏、クラブ史上最高額の移籍金2000万ユーロ(約27億円)でサンプドリアから加入ルイス・ムリエルも、その一人だ。
ムリエルは昨年11月18日リーガ第12節セルタ戦以降、ゴールから遠ざかっていた。だが第20節エスパニョール戦で、63日ぶりの得点を記録。ムリエルは先日、「モンテッラは中盤の選手に厳しくプレスに行くように要求している。そして、ボールを奪ったらすぐにスペースを狙うようにね。それで僕の特徴が生きてくるようになった」と手応えを口にした。
モンテッラ就任後、セビージャは公式戦6試合で4勝2敗と立て直している。リーガ、コパ、CLの3大会で生き残っている数少ないチームが、どこまで行けるのか。セビジスタの興味は尽きない。