新党代表戦に誰も立候補しない立憲民主党・若手中堅の物足りなさ
9月7日、立憲民主党と国民民主党などの合流新党の代表選挙が告示され、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の泉健太政務調査会長の2人が立候補した。今週10日に投開票される。
さすがに無投票は避けられたものの、実質的には立憲民主党と国民民主党の構図に分かれており、枝野代表の当選が確実視される。
そもそも急に総裁選が決まった自民党と異なり、前から新党合流が決まっていたにもかかわらず、「選挙期間」はたったの4日間しかなく、本気で議論を行おうとしているのかすらよくわからない。
そうした「思惑」が透けて見えるのか、合流新党への期待がないからか、いずれにしてもほとんど注目されておらず、「身内」の議論にとどまっている。
枝野幸男立憲民主党代表の推薦人名簿(25人)(敬称略)
【衆院】石川香織、江田憲司、大河原雅子、逢坂誠二、小川淳也、小沢一郎、亀井亜紀子、川内博史、菅直人、近藤昭一、佐々木隆博、佐藤公治、武内則男、辻元清美、西村智奈美、野田佳彦、堀越啓仁、牧義夫、矢上雅義
【参院】江崎孝、小沢雅仁、長浜博行、水岡俊一、森屋隆、蓮舫
泉健太国民民主党政調会長の推薦人名簿(25人)(敬称略)
【衆院】青山大人、大島敦、大西健介、小熊慎司、城井崇、源馬謙太郎、後藤祐一、近藤和也、重徳和彦、階猛、篠原孝、津村啓介、寺田学、下条みつ、白石洋一、平野博文、緑川貴士、森田俊和、渡辺周
【参院】郡司彰、古賀之士、田名部匡代、徳永エリ、羽田雄一郎、森本真治
だがはたしてそれで良いのか、党勢を考えれば大いに疑問が湧くところである。
支持拡大に失敗した立憲民主党
2017年10月に結成された立憲民主党だが、最初こそ少数での立ち上げながら野党第一党に躍進するなど、勢いが感じられたが、徐々に支持率は低迷し、最近ではピーク時の半分以下にまで落ち込んでいる。
直近の国政選挙だった2019年参議院選挙では、改選9議席に対し、約2倍となる17議席を獲得したが、民進党が2016年参議院選挙で獲得した32議席を下回り、比例の得票数も2017年の衆院選で獲得した1108万票を大きく下回る792万票にとどまるなど、「事実上の敗北」(立憲民主党・山内康一政調会長代理)であった。(「参院選の敗北をふり返る:反省と次への教訓」)
コロナ禍では、国民民主党が「10万円一律給付」などの政策提言を積極的に行い、政策議論をリードする一方、立憲民主党は野党第一党ながら存在感に欠け、支持率が低迷した自民党への不満層の支持獲得には至っていない(その不満層も安倍首相の辞任に伴い一気に戻ってしまったが)。
さらに、最近では枝野代表が受動喫煙対策として喫煙が禁止されている衆議院議員会館の自室内で喫煙するという、党の代表としてあるまじき行為まで明らかになっている。
盛り上がりに欠ける代表選
これらの一連の流れを踏まえれば、現状の延長線上で(民進党以上に)国民からの支持獲得、政権交代が見えないのは明らかであり、実際、合流新党に「期待」は集まっていない。
特に、若者からの「期待」は低く、野党に支持が集まる様子は見られない。
むしろ、次期首相が有力視される菅義偉官房長官が8日の立会演説会で「出産を希望する世帯を広く支援するため不妊治療への保険適用を実現する」と述べるなど、子育て世代からの支持獲得がさらに伸びる気配さえ漂っている。
(不妊治療の保険適用の制度設計は非常に難しい部分はあるが、他にもデジタル改革や最低賃金の引き上げなど現役世代にとって最適な手段が打ち出されている)
また、安倍首相が辞任を表明し、内閣・自民党の支持率は急上昇しており、秋の衆議院解散の現実味も帯びつつある。
今後の情勢次第でいかようにも変わるであろうが、選挙プランナーの松田馨氏の現時点での議席予測では、合流新党の議席数は現状の「106議席」から「94議席」に減らすと予測されている。
(新首相で電撃解散あるぞ! どこよりも早い議席予測! 自民党は271議席「絶対安定多数」クリア 選挙プランナー・松田馨氏が分析)
さすがに、こうした状況に危機感を高めつつあるのか、9月1日には、立憲民主党・国民民主党・無所属の若手有志議員21名が「新党への緊急提言」を発表(その後1名追加され22名が連ねている)。
消費税減税やベーシックインカム、党内改革を訴えた。
ただ、この「緊急提言」もほとんど報じられておらず、この21名が推薦人となり、「第三の候補」として若手・中堅が代表選に出馬すれば、もう少し注目度も高まったかもしれない。
しかし、今後のことを考えての保身なのか、既存体制の中で変えていこうという意思なのか、理由はよくわからないが、若手有志議員に連ねていた議員が枝野代表の推薦人に回っており、結果的には擁立に失敗している。
「若手枠」という意味でも、自民党青年局長の小林史明衆議院議員らが9月入学や73歳定年制、総裁選の選定プロセス(党員投票の実施)で存在感を高める一方、立憲民主党の若手はなかなか存在感を発揮できていない。
今回せっかくの「チャンス」であったのに、実にもったいない。
いまだに根強い「民主党政権時代」のイメージ、体制を変えるためにも、若手・中堅の活躍に期待したい。