U-20女子ワールドカップ第2戦はスペインに惜敗。ヤングなでしこはなぜ封じられたのか?(1)
【敗戦】
0-1。スコア通り、完封負けだった。
U-20女子ワールドカップグループリーグ、スペインとの第2戦。拮抗した試合は、試合終盤の81分にペナルティエリア内でのハンドにより取られた、たった一本のPKで決まってしまった。
だが、PKを献上するまでの流れを考えれば、「力負け」とも言える。日本のやりたいサッカーを封じられ、スペインに流れを支配された中で献上したPKだったからだ。
スペインは日本と同じようにパスをつなぐサッカーを身上としているが、2年前のU-17女子ワールドカップではグループリーグと決勝戦で対戦し、どちらも日本が2-0と勝利した。だが、あれから2年が経ち、スペインは個も組織も成熟したチームになっていた。特に、フィジカル面と戦術面では、明らかな成長を遂げていた。
「気持ちも入っていましたし、油断していたわけではありません。ただ、相手は2年前のU-17(ワールドカップ)で対戦した選手も多く、球際などで気持ちの差が出てしまったのかもしれません。」(長谷川)
試合終了の瞬間、歓喜に沸くスペインベンチは、まるで決勝進出を決めたかのような雰囲気だった。
90分間、自分たちのサッカーを貫けず、この試合で、日本の良さは消された。これまでは最初から主導権を握って試合を進めることが多かっただけに、一度ゲームのコントロールを失うと、立て直すのに時間がかかった。主導権を握れず、勝てなかった要因は、相手というよりは自分たちの中にある。
「スペインの圧力が強く、自分たちの良さを消してしまったという印象です。攻守ともに、全体的に出足が遅かったです。後半は少し落ち着いてボールを持てる時間帯も出てきましたけれど、全体的にゲームをコントロールされてしまいました。」(高倉監督)
【掴めなかった守備のリズム】
日本のスターティングメンバーは、GK平尾知佳、DFラインは左から北川ひかる、市瀬菜々、乗松瑠華、羽座妃粋。MFは左から長谷川唯、杉田妃和、隅田凜、三浦成美。FWは籾木結花と西田明華が2トップを形成した。
前線からプレッシャーをかけ、守備からリズムを作る狙いを見せた日本だったが、的確な距離でパスをつなぐスペインは、日本のプレッシャーをうまく外してきた。中盤の司令塔であるPatricia GUIJARROは170cmの長身で懐が深くテクニックもあり、寄せても奪いきれない。逆に、ボランチがつり出されたところでスペインは2列目の選手が飛び出す形で、空いたスペースをうまく使われた。
日本のプレッシャーを外したスペインは、シンプルに左サイド(日本の右サイド)の裏のスペースを狙ってきた。スピードとテクニックのある10番のAndrea Falconがタイミング良く飛び出し、カウンターを有効に機能させた。彼女は2年前のU-17ワールドカップではフォワードとして出場していた選手で、得点能力も高い。この10番の対策として、日本の右サイドバックに抜擢されたのが羽座だった。身体能力の高さを生かし、慣れないサイドバックで奮闘を見せたが、スペインはボールを奪ってからの切り替えが速く、10番の選手に対しては1対1でも後手を踏む場面が目立った。だが、その前の守備で奪いきれていないことにも問題があった。センターバックの乗松は言う。
「ボールの奪いどころがチームとして曖昧でした。攻撃ではスペインが全体的に良いバランスでプレッシャーをかけてきたので、うまく相手を外せませんでした。相手のプレッシャーを感じすぎて、シンプルに裏を狙うことが多くなり、自分たちの良さであるパス回しがうまく発揮できなかったです。」(乗松)
守備では主導権を持って、前線から相手にプレッシャーをかける。そして、ボールを奪うと選手同士が良い距離感で攻撃に移り変わる。守備から攻撃へのスムーズな切り替えは、日本のサッカーをする上で重要なポイントである。
だが、この試合では奪うポイントが定まらないために、勇気を持って最終ラインを上げることができず、奪った瞬間も選手同士の距離感が合わず、出し手と受け手がイメージを共有できなかった。それこそが、日本が主導権を握れなかった一番の要因だろう。
また、1対1の場面で日本の前に立ちはだかったのが、フィジカルの差だ。FWの籾木は言う。
「相手がフィジカルで戦ってきた時、それを上回るボールを動かす技術を自分たちは持っているはずなのに、相手の圧力におされ、技術が発揮できませんでした」(籾木)
大会に向け、国内合宿では男子高校生との練習試合を組むなどして、体格差のある相手に対応するためのシミュレーションを行ってきた。だが、男子選手とも微妙に違う間合いを、日本の選手たちは感じていた。
「球際の強さは男子の選手と同じように強かったのですが、足の伸び方は男子とも違うと感じました。」(長谷川)
20歳前後での身体能力の著しい成長は、欧米特有のものと言える。そして、この「差」に90分間の中で対応できなかったことは、今後に向けた課題である。